whale song ~白い鯨のウタ~

whale song ~白い鯨のウタ~

kikuishi*tomo* 菊石朋

*詩はオリジナルで、練習、スケッチのように気軽に書いたものです。たずねてくれて、読んでくれて、ありがとうございます。

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/飛行(呑み込まれた殺意と朝に)




鋭利なつばさで
Bは空を広げ
冷えた水蒸気を肌に
震わせ
飛んでいるうちは
出逢うこともない



耳を裂くように

アラームが鳴り

開ききった瞳孔の

中に描かれていた

昨日の、

視線がぶつかる

間違いを笑い

正しくてのひらを

ひらいて

ほら、まだあたたかく

あなたを待っていると

闇は膨張し、光を追った

空想のざらつきと・・・・



 ×


無名の脚が散らばる
とくとくと高鳴るもの
体温はコンクリート
の中へと沈み発芽を黙る
命のいたみのような?
そう、ただ佇み
今日もあなたは奪えない
雨音が鳴る日は ・・・・



実に美しく歌い上げていた
Bはアッウ、ウラウド、
アウン、(Tu m’
色彩をとりもどしてゆく
街から街へ街から



「whale song」 





/晩夏




何かが

立ち去った後の町に

灼かれた人影を残して

わたしたちはまた何処かで

こっそり影を生む

縮れた太陽がまだ、

まだ手を差し伸べている

揺れない水を欲しがると

個々が抱えていた

窓がたくさん降ってくる

わたしたちはただ見上げる




朝顔が細い蔓をうねらせ

小さな手をひらく

誰かが手放した

そのことばでは

わからないという

朝顔は部屋の中で

無人の呼吸を

続けたいのだと

秘密のような窓に

触れてから青く震え、

震えながら青く、

青く咲く



「whale song」





/窓(喪失の目を染めあげ)



どこか遠い場所へ

向かうために窓を飾る

タオルを片手に

雨雫をふき取り

瞬間瞬間に移り変わる景色

窓には部屋がない



犬が走り去る

黄色いざらついた

砂を蹴り、足元に転がる

汚れたペットボトルを拾う

目を上げると知らない

街が、知る街へと変わる



雨に裂かれて

白くなった肌を

窓に吸わせ

空は青く染まってゆく

だれが見た空だろう

ぼんやり、そう思う






「whale song」