4、第三世代の超音波洗浄技術[基本的考え]

以下の技術は、1993年ワシントンのオゾン層保護に関する国際会議
(アメリカEPA主催)で 柴野 佳英 が 世界に公開した技術である。
彼は これを 第三世代の洗浄技術 キャビティーション強化システムと呼んだ。

1)キャビティーション強化システム
キャビティーションコントロールを的確に行う超音波槽を前提にして、
液体の中の空気の溶解量を 目的にあわせて、コントロールする
超音波洗浄装置をキャビティーション強化システム付き
超音波洗浄装置
(第三世代の超音波洗装置)と呼ぶ。
空気の溶解含有量(以下 測定技術の関係で、溶存酸素量で、代替する。)  
をコントロールして 超音波洗浄の能力を 最大限に引き上げる。
溶存酸素が、数ppm以上の場合、つまり、一般の水、水系超音波洗浄の場合、
ガス星雲型のキャビティーが発生する。
ガス星雲型のキャビティーは、キャビティーの生成、消滅時の液体の移動速
度が遅く、結果として、衝撃力が、きわめて弱い。  
また、キャビティー自身の移動距離が短い(数mm内)ため、
ひどい洗浄ムラを起こす。
目に見える泡を発生させる超音波洗浄装置よりは、よいが、
これからの精密化を競う超音波洗浄装置には、不適当である。
 
従って、これからの超音波洗浄には、球状星雲型のキャビティーを 利用する。
この球状星雲型のキャビティーを 液体の中の溶存酸素量をコントロールし 
安定的に、且つ効率的に 利用する超音波洗浄を
 第三世代の超音波洗浄、キャビティーション強化システムという。

2)球状星雲型のキャビティ
 20KHz~1MHzの範囲の超音波洗浄において、
精密洗浄を効率的に成し遂げようとする場合、溶存酸素を
低くコントロールして、球状キャビティーを利用することは、
非常に重要である。
球状キャビティーは、液体の単位時間当たりの吸排出量が大きく、
キャビティー自身の移動速度も速い。
従って、洗浄力は、 同一条件の最大値を示し、
且つ拡散効果(キャビティーによる汚れの搬送効果)も最も高い。
液面から進入する空気、液体自身の含有気体、洗浄物自身が表面などに
まとう空気を 超音波洗浄域から 除去し、
洗浄物周囲と 洗浄物と振動版の
間の液体が含む空気の含有量を 
酸素で2ppm以下に常に安定させたい。
これは、超音波の照射が、どのような媒体、どのような流路を経由しようが、
キャビティーを利用するなら、全く同じである。
どのくらいの酸素(空気)の含有量が適当かは、
超音波の周波数と液体の種類と温度、
そして何より 洗浄の目的の精度による。
この技術を安定的に利用し、超音波のエネルギーを
効率的に利用するには、脱気するだけでは、駄目で、
前述のキャビティーションコントロールを
厳密に守ることが必要である。
   
この球状キャビティーの利用で 
現在 大きく発展し利用されているのは 
強力精密洗浄の他、超音波バリ取り洗浄の分野であるが、
そのほかにも 超音波エッチング、超音波衣類クリーニング装置など
用途は 拡大していくと 思われる。

参考 ブルー・スターR&D HP
  
2、キャビティーションコントロールの重要性
  
超音波洗浄におけるキャビティーの重要性に対応し、
超音波洗浄槽内において、
キャビティーをコントロールしようとする超音波洗浄装置を
第二世代の超音波洗浄機と呼ぶ。
ここでは、簡単に第二世代超音波洗浄機
におけるキャビティーションコントロール
について述べる。
これは、超音波洗浄システム設計の全ての基本であり、
ここの理解と実践を飛ばして、
新しい時代の超音波洗浄設計は 出来ない。
 
1)キャビティーション発生位置のコントロール
超音波洗浄槽(超音波スプレーも同じ)において、
どこに、どのようなキャビティーションを 
安定的に発生させるかは、きわめて重要な基礎技術である。
周波数、液体の種類、温度、液深、振動子の配置、
液の流れ方向、温度分布、等など、そして洗浄物の種類によって、
キャビティーションの発生位置と分布形状が決まる。
 キャビティーションの基本分布は、水平分布、垂直分布、
格子状分布、均等分布、円柱状分布など、目的にあわせて、設計する。
なお、超音波洗浄技術者と、ユーザーは、超音波槽毎の目的をはっきりさせ、
槽毎のキャビティーション分布と 確認方法を 共有しなければならない。
液深が 不安定だったり、理論的裏づけがない場合は、
洗浄設計の基本が出来ていないと考える。

2)キャビティーション発生密度のコントロール
超音波洗浄におけるキャビティーは 面で発生するのではない。
点で発生する。
キャビティー相互間には距離があり、複数がくっついて発生しない。
一般の脱脂洗浄は、ともかく、いわゆる精密洗浄は、
キャビィー間の空間が不良原因になる。
そのため、様々な方法で、キャビティー密度を上げる努力をする。
あるいは キャビティーの移動距離を 伸ばす工夫をする。
超音波の波形、発振効率、液入射効率、単位面積あたりの出力、
振動素子貼り付け方の工夫無駄液量の削減などなど、
細かい努力を積み重ねる。

3)キャビティーション衝撃力のコントロール
キャビティーの正負の衝撃力が 弱すぎても洗浄できないし、
強すぎれば、洗浄対象物にダメージを与えて不良品になる。
当然、キャビティーの衝撃力をコントロールできなければ、
超音波洗浄の設計ができないと言うことになる。
最近の超音波洗浄の対象物はますます精密、繊細になっており、
キャビティーの選択の巾も狭くなっている。
しかし、超音波洗浄におけるキャビティーについて、理解が深まれば、
衝撃力のコントロールについて、理解しやすい。
一般には、キャビティーの衝撃力は、液体の圧力に比例し、
周波数、液体の蒸気圧、溶解する空気の量に反比例する。
キャビティーの衝撃力は、キャビティーが 単位時間に
排除(吸引)する液体の質量に比例するわけだから、
原理がわかれば、何をコントロールすれば良いか、
明らかである。
  
超音波洗浄装置における、超音波洗浄設計の
キャビティーションコントロールは、重要な基本技術である。
これらをおろそかにして、つまりキャビティーの管理
をおろそかにして、超音波洗浄の新しい技術
導入することは、不可能である。


参考  ブルー・スターR&D HP
4)[超音波洗浄における最大の誤解]
 超音波洗浄技術上の最大の誤解は、
超音波を液体中に照射すると発生する、目に見える泡が、
上述の超音波によって発生するキャビティー(微小真空核群)
であると 錯覚したことにある。

 水以外の洗浄溶剤の多くは 多量の空気を含む。
アルコール類、塩素系溶
剤、炭化水素系溶剤、臭素系溶剤、その他、洗浄に利用できる、利用してい
る溶剤の全てにおいて、酸素溶解量は 20mg/ℓ以上である。
ここに 強力な超音波を照射すると、圧力変化によって 溶解していた空気が
脱泡し、泡となって、上昇し、液面ではじける!
液中で消滅、縮小することはない。
これを超音波ガスエアレーションと言う。
液体から抜け出た空気は、又液面から再溶解し 超音波による
泡の発生現象、超音波バブリング、
(あるいは、超音波ガスエアレーション)は、安定して継続する。
このとき発生する微小な空気の泡は、最初の10秒程度を除いて、
超音波の振動面から発生し、効果的な超音波の吸収と遮断に役立つ。
超音波によって発生するはずのキャビティーを 発生させない。
超音波洗浄においては この泡対策 すなわち 
溶解している空気の管理と対策は 極めて重要である。
      
 溶解空気の減少対策のない、水以外の超音波洗浄機においては、99%
以上の超音波エネルギーが、振動面表面で消えている!

超音波で発生するキャビティーは、1秒間に2万回以上の生成、消滅を繰り
返す高速現象であって、人間の目で 泡?等として見える現象ではない。

参考 ブルー・スターR&D  HP