― Valentine’s day message ―<土方歳三> | 虚構の部屋

虚構の部屋

この世のすべては虚構。でも、虚構のなかにも真実はある。

艶が~るのファンアートを描いています
2.5次元に生きる美和の自室。時に荒野にも繰り出しつつ
ここでは”艶が”関連の独り言、お話し、絵などを徒然に更新します



街路樹の枝を揺らせて、雪おこしの風が吹く。


(うう・・・冷たい風・・・。今日に限ってこんなに寒いなんて・・・)


コートの襟元を寄せながら、空を見上げると灰色の雲。

やっぱり今夜には、きっと雪になる。そう思った。




急がなきゃ。

待ち合わせまではまだ15分あるけど、きっと彼は先に来て待っている。


私が、彼を見つけた瞬間、嬉しそうな顔をして駆け寄ってくる。

その顔を見るのが好きだから、と、彼は必ず早めに来て、

私が来る方をじっと眺めて待っているのだ。


(私からすると、待ってる彼の顔も、十分可愛いんだけど。)


ふふ、と一人口元を緩めながら、待ち合わせ場所のお店にやっと到着する。


(どこかな・・・・。あ、いたいた、発見・・・。)


コーヒーショップの窓際の席に、姿勢よく座っている彼の後ろ姿。



きっとあれは、いつものアメリカン。

俺は珈琲より緑茶派だ、とか言いながら、私に付き合っていつも一緒に飲んでくれる。

カップを持ち上げて、若干眉間にしわを寄せながら、彼はまだ外にじっと視線を向けている。



私が走って来るのに気づかなかったのだろう、店の扉の方を振り向くことなく、

そのままカップを口に運ぶ彼に思わず見惚れていると、店員さんに声をかけられてしまった。


『おひとりですか?』


『あ・・いえ、待ち合わせで・・・大丈夫です。』


そういって、案内しようとする店員さんをやり過ごし、彼の座る席へ向かう。


さて、何て声をかけようかな。





『・・・おひとりですか?』


さっきの店員さんのように、彼の後ろから静かに言ってみた。



『・・いや、連れが・・・』


急いで、カップをソーサーに置き、振り向く彼。



『・・・○○・・・いつの間に・・・・。』


『ふふっ、今日は私の勝ちですね!』


『勝ちって・・・・いつから勝ち負けかかった勝負になってんだ。』



口では、そんな風に言いながら、やっぱり悔しいのか、

勢いよくカップに残った珈琲を飲み干し、瞬間、眉根を寄せる。

きっと苦かっただろうのに、そんなそぶりは全く見せない、負けず嫌いの彼。



『だって、今日は女の子にとって特別な日なんですよ。

今日くらいは、私が土方さんをドキドキさせたいから。』



コートを脱いで、彼の正面の席に腰を下ろしながら、照れながらも満面の笑みを向けてみた。



『・・・ふっ・・・言うようになったな、お前も。・・・その顔だけで、もう十分だ。』



額にかかった、艶やかな藍色にもみえる髪をかき上げながら、それと同じように濃い色の瞳を細め、口角をあげて笑う彼。




虚構の部屋




With all my love on Valentine's Day and every day.

―――― バレンタインデーに、そして毎日、私のすべての愛をこめて。