給湯室と女子ロッカーは、噂の巣窟だ。

嫌な事が自然と耳に入り、事実がねじ曲がり、冒涜となる。

今日も嫌な気分になった。
彼女の訃報が、ダムが決壊したかのようにロッカールームで広まっていた。

悼む人が多い中、彼女の夢を勝手に捻じ曲げ、「だいたいさ、うまく行くはずないと思ってたのよ…なんか弟子みたいな男の子引き連れてたじゃない…なんかさ…」
と、話す声が聞こえてきた。

聞きたくない、足早に去った。

神対応なんてできない。

本当は、ニッコリ笑いながら、こう言いたかった。

弟子引き連れて来てたっておっしゃってましたけど、彼は弟子ではありませんよ。
うまく行くはずないと思ったなら、直接本人に助言してあげれば良かったじゃないですか。
なんも知らんと、ご自身が故人に対してなに話してるか分かります?
あ、分からないですよね。だからダサい事言ってるんだ。
うふふ。それでは〜。

ダメだ言えるわけない。

たまらず、友人に悔しいよとLINEを入れた。
個人の意見だからね。しょうがないよ。と彼はいう。

私はこういう時、いつも取り乱す。
事実を分かってもらおうとムキになる。
ちっとも大人な対応が出来ない。

しょうがないか…。そうかもね…。
言いたいことを言った所で、伝わらないだろう。
なにあの子と、ギスギスするだけだ。
話はした事ないけれど、あの人は毎週見かける。

世の中には色々な考えを持っている人がいる。
優しくて強い人間になりたい。
逝ってしまった彼女のように。