禁忌の深窓に住む少女たちの秘録。
春琴・・・・・・・・・憑き物憑きの一族の跡とり娘。
一族の繁栄と引き換えに、右目に醜い痣の呪詛を受けた、宿命の娘。
秘匿の術の代償に生まれつき授かった赤紫の痣の為に、
嫁に行くことは愚か外界との一切の一切禁じられ、屋敷の中に閉じ込められている。
統治を行いながら軟禁されているという環境、
美貌の才媛、聡明だが、自身の生に空虚感を覚えており、
美しい少年少女たちを浚わせては、夜毎にいたぶることだけが、唯一の楽しみ。
サディストで傲慢。自分に傅くもの達はただの玩具であり、感情など一切省みない。
鬱屈としており、日々に倦んでいる。
下女たちに傅かれ愛情を知らずに育ったが、
自分と同じように自由に生きることのできなかったなつを見、初恋を覚える。
初めて愛するものと生きる日々に胸を震わせるが、
やがてそれが女中頭の逆鱗に触れ…。
モデルは谷崎潤一郎「春琴抄」の春琴。
なつ・・・・・・・・先天性の病で足の不自由な美少女。
松葉杖をついて歩き、外に出ることが殆ど叶わなかった。
可憐な美貌であるが、家業が農家であるため、働き手になれないとされ、
健康な妹と異なり、家人達に疎まれながら育つ。
そのために無気力で、外界の反応を一切期待しないため、
無表情が恒常的になり、人間らしい表情を持たずにいた。
女衒に売られても、春琴の新しい愛人としての調教を受けても、
どこか他人事のように自身の運命を見つめていたが、
春琴と出会い、激しい衝撃と恋情に、胸を打たれる。
何事にも受身だったが、春琴の傍にいる為に自ら玩具となることを選択する。
春琴を知り少しずつ感情のようなものが芽生え始めていたが、
やがて女中頭の各秋の嫉妬により、その運命は思わぬ方向に狂い始め・・・。
各秋(おのあき)・・・・・・・・・春琴の館に勤める女中頭。
未来の跡取りである春琴の為だけに育てられ、春琴だけを想って生きてきた。
貞淑で慎み深く美しい女だが、夜毎の責め苦には喜んで身を捧げている。
マゾヒスト。古風で普段は大人しいが、
その胸のうちには激しい情念の燠火が燃えている。
モデルはポーリーヌ・レアージュ「O嬢の物語」のOおよび安部定。