最後に、私からマテオさんへいろんな質問をしたのだが、そのまえに、
私は2年間ここの先生たちと働いて、気づいていたことがあった。
算数に関する教員テストで高得点をとったり、まともな会話のキャッチボールができる先生には、みんな共通点があった。
それは、
この村の外に出て、教育を受けた
ということ。
大体優秀な先生に共通するのが、小学校6年、中学校3年が終わった後、高校に値するレベルから、隣の県のシェラというグアテマラ第2の都市と呼ばれるところで、下宿しながら学校へ通っていたのだ。
相手が先生ではなくても、いろんな会話をしているときに、「この人、めっちゃ話が通じる!」とか「頭の回転が速い!」と感じる人に、「どこで勉強したの?」と聞くと、みんなたいていシェラだとか、首都だとか、この村の外に出て勉強をしてきた人たちなのだ。
そうして私は思うようになった。
「この村の現在の教育環境では、優秀な先生や医者を生み出すことは、不可能に近い。」
と。
だからこそ!
私は、この村からでも、将来は優秀な先生や医者が生まれるような教育環境が公立の学校でも提供できるようになってほしい!
とかすかな夢を抱くようになり、優秀かつ意欲のある子どもを見つけて、将来この村によりよい教育を提供できる先生になってほしいと願っているのだ。
でも、小学校の現状を知っている分、きっと公立の中学校や高校の教育レベルも期待はできないなぁと思っていた。
そうなると、本気で優秀な教師を目指して勉強に励んでほしいと願うのであれば、高校から大学は、他県で学ぶ方が確実によい選択となる。
そのことをマテオさんに話すと、首を大きく上下に動かし、
「まったくもって、その通り。」
と言っていた。
さらに言うならば、中学レベルからでも、よりよい教育を求めるのであれば、公立より私立だ。
私立は、教員もやる気がある上に、政府に対する教員組合のデモもないから、授業がつぶれず、確実に授業数が確保できる。また、先生がちゃんと時間を守るし、生徒のしつけもしやすいので授業の量も質も公立よりもよい。
・・・となるとだ、
私が今後支援をしようとしているペドロに対して、本気で優秀な先生になってもらいたいと願うのであれば、中学校から私立へ通わせ、高校レベルからは他県で学ぶチャンスを与えるべきだ。(もちろん本人が望む場合が前提。)
もし、私が彼の親だったら、そういうチャンスを与えたいと思うだろう。
そうなると、気になるのが、
「一体いくらかかるの??」
ってこと。
ただただ授業料のかからない公立の学校を卒業させるだけならば、生活で必要なものの購入や、宿題で必要な雑費を提供してあげるだけで、卒業はできるだろうから、おそらく月に2,3千円支援していればなんとかなるだろう。
でも、ただ卒業することをゴールとするのではなく、本気でこの村を引っぱっていくような優秀な人材を育てるということを目的とするならば、中途半端なことはしたくないと思う。
実際に、3人の子どもを小学校から私立に通わせ、長女を高校から他県へ送り出しているマテオさんに聞いてみた。
以下はすべてマテオさんのお子さんが通っている学校の情報。
【私立の小学校】6年間
授業料は、月額125ケツ(約1875円)。その他、教材費や制服などのお金がかかる。
【私立の中学校】3年間
授業料は、月額290ケツ(約4350円)。その他、教材費や制服などのお金がかかる。また、宿題のレポート提出のために、ネットカフェでレポートを書いたり、紙を印刷したりするお金が日々必要となる。
【他県の私立高校】2年間
他県の学校に通うことは、その街で下宿することになる。マテオさんが頑張って探した格安の下宿所は、食事込みで月額1100ケツ(約16,500円)。
娘さんが通っている私立の授業料は、月額600ケツ(約9000円)。これに、教科書代、制服代など、パソコン代、パソコンがなければ、ネットカフェや印刷代などいろいろとかかる。
ここからは、マテオさんのお子さんも進学していないレベルなので、想定でしか考えられないが、グアテマラで教師になるには、高校レベルで2年間勉強し、さらに大学で3年間勉強する必要がある。大学に関しては、国の唯一の国立大学サンカルロス大学へ進学できれば、授業料はただ。その分、入学するのは、至難の業。
仮に国立大学に入れたとして、授業料はなくとも、下宿代などは必要となるだろうから、月額1500ケツ(22,500円)は見込んでおこう。
そうなると、優秀な教師を一人育てようとしたら、合計どれだけの投資が必要なんだろう?
ひとまず、小学校はおいておき、中学校レベルから私立学校への就学を支援するとする。
【中学】
月額5000円×12か月×3年間=180,000円
【高校】
月額27000円×12か月×2年間=648,000円
【大学】
月額25000円×12か月×3年間=900,000円
8年間の支援で、合計1,728,000円なり!
こうみると、すごい額だ…。
マテオさんの情報により、リアルな支援の実態が見えてきた。
これ、本当に私やる覚悟あるのか?
年によって、かかる費用に差があるから、すべての合計を均等に8年間一定の金額を支援するとしたら、一か月に支援する金額は、一体どうなるんだろう?
8年間は、96ヶ月。
1,728,000円を96ヶ月で割ると…
月額18,000円だ。
ってことは、だいたい2万円。
月々、2万円を見ず知らずの人に支援する人なんて、日本に何人いるんだろう…。
せいぜい5千円から1万円が限界なのではないだろうか…。
う~ん、もうすこし策を練らねばならなそうだ。
私一人がやるならいいけれども、今後支援者を募るのであれば、もう少し現実的な方法を探していかなければいけないことがわかった。
マテオさん、とても勉強になりました。
ありがとうございました。
今日は、1週間ちょい前にパナハチェルで出会った女の子がサンティアゴに遊びに来てくれて、一緒にサンティアゴの魅力を味わいました。
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この工房とは運命的な出会いを感じています。
その話はまた今度。