少し前の出来事です。
いつもより早い時間の通勤電車内で中高年のおじさんと乗り合わせた。
そのおじさんは吊革を握りしめ、ひたらすら細かく上下動を繰り返している。
その謎の動きに、当然周囲からは好奇の視線が集まるが、おじさんは意に介さず、左手に握りしめた何かをみつめている。
固く握りしめたそれが「万歩計」であったと知る事ができたのは、恐らく私の角度からだけだっただろう。
細かい上下の動きで、電車移動時にも休む事なく万歩計のカウントを刻む中高年。
そのストイックさには、戸惑いを超え感動すら覚えた。
それから二駅ほど進んだだろうか、先に下車したおじさんは、反対側のホームに向かったかと思うとこちら側へもどり、また反対へ向かう、、、
そう、歩数を稼ぐために大きく蛇行しながら改札へ向かっていたのだった。
まだ1日は始まったばかり、
彼が帰宅した時の歩数がいくつになったのか。
それは彼と彼の万歩計だけが知っている。