詩集が映画になったという珍しい作品。
最果タヒ(さいはてたひ)さんの原作。
出てくる人間たちの言葉もどこか詩的というか叙情的な雰囲気があります。
「都会を好きになった瞬間、自殺したようなもんだよ」
「東京には1000万も人がいるのに、どうでもいい奇跡だね」
東京育ちの僕にとっては凄い突き刺さる映画でした。渋谷や新宿などが何度も出てきてとてもリアルです。東京に住むお金持ちではない全ての人たちに対しての強烈なメッセージなので見る人のターゲットは絞られてしまうと思うのだけれど、だからこそ僕にとってはとても良い映画でした。
日雇いの建設現場で働く池松壮亮演じる慎二と、昼間は看護婦で夜はガールズバーで働く美香の2人が都会の生きづらさを通して少しづつ向き合っていく作品です。
スマホばかりを見ている人達の中で2人だけが空を見上げます。
「誰もが誰かの元カレや元カノだった人でしょ」
「1200円のピンだから私に似合うと思った?」
美香の一言一言は響きます。
身近な人が死んでいく。
「それでも自分は生きている。恋もしている。ざまーみろだ!」
目の前の現実を打ち消すように自分に言い聞かせます。
フィリピンから来ていた優秀な留学生アンドレイがとてもまじめに働きながら、「ここで働いても無駄だから帰るよ」といって帰っていったのが結構印象的でした。あと夜中にガンガン鳴らしていたあの音楽とても気になった。
東京の夜空は街のネオンが明るすぎて星が見えない。
日本で東京だけ夜空が特殊なんです。
その空の下で悩みながら、苦しみながら孤独な人間たちが綱渡りのように生きていく姿がとても切なく映ります。
最後に一筋の希望が見えて終わります。現代の東京のアンダーグラウンドを現した作品ですが、明日への希望を見せてくれる優しい作品です。
