空間オーディオやサラウンドも開発中
Bluetoothのハイレゾ&ロスレス伝送規格、2026年10月ごろ策定へ
2025/10/16
編集部:長濱行太朗
Bluetoothのハイレゾ&ロスレス伝送規格、2026年10月ごろ策定へ - PHILE WEB
Bluetoothの規格策定や認証、普及活動などを行う標準化団体 Bluetooth SIG(Special Interest Group)は、Bluetoothテクノロジーの最新動向とロードマップについて紹介する「Bluetooth東京セミナー2025」を、本日10月16日に開催。Bluetoothデバイスの最新出荷予測をはじめ、Bluetooth技術のロードマップを発表した。

国際的にBluetooth技術を監督する役割を担っているBluetooth SIGは、技術革新の指針となるビジョンを更新し、新たに「つながりの力で、より良い世界へ」を掲げている。
Bluetooth SIGの最高マーケティング責任者であるKen Kolderup(ケン・コルドラップ)氏は、新たに “より良い世界” を築くという目的をビジョンに加えたと説明。そして、このビジョンを「健康的」「サステナブル」「生産的」「アクセシブル」「便利」という観点で整理し、各観点においてBluetooth技術が大きく貢献していくことを目指すと語る。
またBluetooth SIGのミッションであるBluetooth技術の進化/保護/普及を通じて、革新的な企業、技術者が集い、それにより「つながりの力で、より良い世界へ」を現実のものとしていくと述べた。

コルドラップ氏によると、現時点でのBluetoothデバイスの年間総出荷台数は、2025年に53億台を超え、2029年までに約77億台に達する見込み。加入メンバー企業数は40,000社以上、年間新規加入企業数は約1,000社以上にのぼるという。

特にスマートフォンやタブレットなどのプラットフォームデバイスにおいては、Bluetooth LEとClassicの両方をサポートするBluetoothデュアルモードが主流となっていると報告。しかし同時に、Bluetooth LEのみをサポートするデバイスも各業界での新たなアプリケーションの拡大により急成長を続けているといい、今後5年にわたりCAGR(年平均成長率) 22%で成長し、2028年にはBluetoothデュアルモードデバイスと出荷規模が並ぶと予測されている。
コミュニティの規模については、グローバルで147か国にメンバー企業がいるなか、日本は国別のメンバー企業数において第3位の位置におり、認証製品数も同じく世界第3位をマークしている。

Bluetooth技術を用いてワイヤレスオーディオを普及させてきたBluetooth SIGだが、その甲斐あってか2025年のBluetoothオーディオ周辺機器の年間出荷台数は約9億台に達するとのこと。近年急速に増えつつあるキーボードやマウス、ゲームコントローラーなどBluetoothヒューマンインターフェースデバイス(HID)も、約3億8600万台の年間出荷台数だと予測。また、Bluetooth紛失防止タグは約8000万台が2025年に出荷されるという。

世界的に高齢化が進んでいる昨今、糖尿病などの代謝性疾患の患者なども増加している中、スマートウォッチなどのユーザーの体調管理をフォローするBluetoothウェアラブルアイテムは約3億2300万台の出荷を記録。臨床領域において活用されているBluetooth患者モニタリング機器も、約3600万台が2025年に出荷見込みだと報告された。
ヘルスケアデバイスでのBluetooth技術の採用も目覚ましく、体重計や体温計、体内埋め込み型のデバイス、バイタル管理、ウェアラブル心電送信機といった危機に導入されることが着実に増えてきているそうだ。
Bluetooth技術は社会的な生産性の分野でも取り入れられることが増えてきており、製造施設やサプライチェーンマネジメントの領域では、物や作業員の位置の確認、作業場の安全状況確認に関連するデバイスへの採用も活発化。Bluetooth資産追跡タグは約2億4000万台の年間出荷台数、加えて2026年にはBluetooth接続搭載のワイヤレス状態監視センサーが全体の約45%を占めるとアピールした。
サステナブルなアイテムとして注目が高まっているのが、Bluetoothを活用した電子棚札(ESL)。従来までの紙を用いた棚札から置き換えが進んでいるそうで、2029年までにBluetooth電子棚札が約1億3800万台の年間出荷台数になる見通しだという。直近では、大手コンビニチェーンのセブンイレブンにて導入事例があることも明かされた。また、物流で利用されるBluetoothスマートラベルは2029年までに約1億4000万台が出荷見込みで、これは実現度の高い数字だとコルドラップ氏は解説した。

複数同時接続や測距技術が進化中。ハイレゾ&ロスレスオーディオ伝送の標準規格も策定が本格化か
常時50を超える仕様策定プロジェクトが進んでいるBluetooth SIGだが、その中でも、数千台のデバイス接続を構築できるため大規模な照明制御システムなどに投入されている「デバイスネットワーク」や、複数のオーディオ機器を繋げられる「Auracast」、紛失防止ネットワークやデジタルキー向けの距離認識技術である「高精度測距」といった機能が大幅に進化しているとのこと。

とりわけ「高精度測距」は、Bluetooth 6.0で「チャネルサウンディング」技術として定義され、安全性と信頼性の高いアクセス制御システムに組み込まれつつあると紹介。車両や住宅、商業オフィスなどの施錠/解錠や入退室を、セキュリティを強化しつつ簡素化できるとしている。
今後の機能強化としては、マウスやキーボード、ゲームコントローラーなどの接続で従来以上の低遅延を実現する「超低遅延HID」や、ワイヤレスオーディオにおける「ハイレゾ&ロスレスオーディオ」の標準化が進行中。オーディオプロジェクトでは空間オーディオやサラウンドなどの領域でも技術開発を図っているという。

加えて、従来以上に大容量のメディアストリーミングに対応するべく、最大約8Mbpsのデータレートのサポートを目指す「高データスループット(HDT)」、Bluetooth LEを5GHzや6GHz帯でも動作させるための「高周波数帯域対応」といった技術向上も進んでいることがアピールされた。
なお、「ハイレゾ&ロスレスオーディオ」や「高データスループット(HDT)」については、2026年10月頃の規格策定をイメージしていることが明かされた。
体験スペースでは、「高精度測距」と「高データスループット(HDT)」の機能を実演。「高精度測距」では、接続されているデバイスの距離を近づけたり遠ざけたりすると、デバイス間の距離を示す数値がリアルタイムで増減するさまが確認できた。



「高データスループット(HDT)」のデモでは、現在用いられている「2M PHY」という技術の伝送速度が最大1,402kbps程度なのに対し、開発中の高データスループット技術「HDT7.5 Format1」では伝送速度が5,706kbpsと約4倍になることが示された。



また展示会場では、Cear/コーンズ テクノロジー/シリコン・ラボラトリーズ/テュフ ラインランド ジャパン/UL Japan/Ellisys/Gailogic/ムセンコネクトといった各社がブースを展開。Auracast対応デバイスや最新のチャネルサウンディング対応モデル、Bluetoothロゴ認証サービスなどBluetooth関連技術を紹介していた。




