NATO
ロシアのドローンの脅威が迫る
NATO、
迅速な対応に向け変革できるか
2025.09.22 Mon
ロシアのドローンの脅威が迫るNATO、迅速な対応に向け変革できるか - CNN.co.jp
CNN)
ポーランドの領空にロシアのドローン(無人機)が侵入してから数日が経った今、欧州における重要な問題は、ロシアが20機近くのドローンを北大西洋条約機構(NATO)加盟国の領空に意図的に送り込んだかどうかだけでなく、増大する脅威へのNATOの長期的な対処能力について今回の軍事的対応が何を明らかにしたのかということだ。
ポーランドが考えているように、もしこれがNATOの防衛力に対する意図的なテストであったとすれば、ロシアにとっては驚くほど安価な実験だった。
ポーランド当局は、「ガーベラ」とされる
ドローンの破片を
回収した。
ガーベラは合板と発泡スチロールで作られ、
おとりとして使われることが多い。
ウクライナの国防情報総局によれば、
同機の製造コストは1機あたり推定約1万ドル(約148万円)。
一方、
これらのドローンを阻止するために緊急発進したNATO軍機は、
数百万ドル規模の戦闘機「F―16」と
「F―35」だった。
武力を効果的に示したものの、発進するだけでも燃料と維持には数万ドルの費用がかかるだろう。
ポーランドとNATO加盟国で行われた軍事演習中に飛行する戦闘機「Fー35」=17日/Wojtek Radwanski/AFP/Getty Images
英国の王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員、
ロバート・トラスト氏は
CNNに、NATOが大規模なドローン攻撃に対抗できないわけではないと述べた。
昨年4月にイランがイスラエルに対しミサイルとドローンによる大規模な攻撃を行った際、
NATOの戦闘機はこれを阻止する上で非常に効果的だった。
しかし、イスラエルの試算によると、
このときの防衛費は10億ドルを超える。
このアプローチは持続不可能だとトラスト氏は主張する。
「根本的な問題は、ウクライナ侵攻以前の西側諸国の防衛技術の多くが、このようなドローンの非対称的な脅威を考慮していなかったことにある」(トラスト氏)
さらに、急成長を遂げている軍事技術分野では、NATO加盟国の多くの国防省は対応が遅すぎるという共通認識がある。
独自の迎撃ドローンを製造している英企業MARSSの
ヨハネス・ピンル最高経営責任者(CEO)は先週、
CNNの取材に応じ、
「技術は既にある」とし、
「ポーランド国境のかなりの部分は今ごろ、立派なドローンウォールで覆うことができていたはずだ」と述べた。
「ドローンウォール」とは、
多層的な検知・迎撃網の概念で、バルト諸国で広く推進され、
17日には欧州連合(EU)当局者も支持を表明した。
ピンル氏はCNNに対し、
NATOの調達システムが
「依然として1980年代の水準」にあると指摘する。
例えば、同社の中距離AI(人工知能)対応迎撃ドローンは、
NATO加盟国による評価を待っており、
数カ月以内に実施される見込みだという。
ピンル氏は、
国防省が新製品の詳細な技術仕様書を発行したうえで
企業が入札するという従来の調達慣行を指し、
「彼らは今、仕様書を作成している。私たちは今まさにこれを使用しており、何年も運用している。しかし欧州ではまだ仕様書がない」と説明した。
オランダに拠点を置く
ロビン・レーダー・システムズの
シエテ・ハミンガCEOは、
ウクライナ戦争によって欧州では事実上、
二極化した調達プロセスが生み出されたと述べている。
同社の技術はすでにウクライナで広く使用されており、
最近では12キロの範囲でドローン「シャヘド」を検知できるよう更新された。
「ある国がウクライナのために装備を購入したい場合、高速で購入できる」とハミンガ氏はCNNに語る。
「しかし、自国向けに同じものを購入したい場合は一連の手続きを踏まなければならない。これでは役に立たない」
しかし、ウクライナ戦争が新技術のリアルタイムの試験場となっていることで、変化の兆しが見えている。
ポルトガルで設立された防衛技術新興企業テックエバーを
例に挙げると、
英政府は2022年以降、
ウクライナに配備するため、
同社の偵察ドローン「AR3」を
3億5000万ドル相当以上購入している。
さらに英王立空軍(RAF)は今年、
新型電子戦システム「ストームシュラウド」に
AR3を採用すると発表した。
生産規模の拡大もただちに計画されているという。
同社の防衛部門責任者であるカール・ブリュー氏は
CNNに対し、
同社は、
新たな技術の開発におけるリスクを政府と産業界の間で分担するアプローチを取っていると語った。
「RAFがAR3を配備した時、
実はそれ以前から我々の研究開発プログラムでAR3は運用されていた。
彼らは『ウクライナでの経験をすべて蓄積し、
そこに電子戦に関する西側の技術という特別なソースを加える』と言い、
6カ月以内に導入した」(ブリュー氏)
英国防省のナイトン参謀総長は、
「必要なスピードを達成するには、産業界との関係を変革し、戦時中のペースで革新する必要がある」と述べ、新たなアプローチの必要性を強調した