石破総裁の辞任で株価が上昇した背景

 

 

藤代宏一

 

 

株式会社第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

 

(写真:ロイター/アフロ)

 

 

日経平均株価は一時、初めて4万4000円を超え、約3週間ぶりの最高値を更新しました。新総裁の誕生によって政治の停滞が解消し、経済活動が活発化するとの見方があるようです。現時点において金融市場関係者の間で、有力視されているのは高市早苗前経済安全保障大臣と小泉進次郎農相です。高市氏は積極的な財政支出の拡大と金融緩和の継続を従来から主張しており、円安・株高を誘発するイメージがあります。一方、小泉氏は明確な方針は示していませんが、政策遂行能力に対する期待がありそうです。

 

 

 

ココがポイント

午前の日経平均株価は取引開始直後から上昇し、およそ3週間ぶりに取引時間中の最高値をつけました。
出典:TBS NEWS DIG Powered by JNN 2025/9/9(火)

市場関係者は小泉進次郎農相と高市早苗前経済安全保障相が優位とみている
出典:ロイター 2025/9/9(火)

エキスパートの補足・見解

株価は基本的に企業収益を反映するものです。上場企業の利益(一株当たり利益)は、トランプ関税の影響を受けつつも、企業による資本効率改善の努力、コスト増の価格転嫁等により、1桁%後半の増益が見込まれています。現在の株高は、企業収益の裏付けをある程度伴っていると言えます。企業収益は勢いづくのでしょうか。その点、米国の景気減速はやや気掛かりです。トランプ政権になって以降、移民の抑制策が厳しさを増しており、雇用者数の増加ペースは明確に鈍化しています。一方、企業収益の押し上げ要因として期待されるのは、賃上げの継続です。現時点で労働者は賃金上昇の持続性に懐疑的で、若い世帯を中心に賃上げ分を消費に回さず、貯蓄を積み上げています。年度後半に個人消費が底堅さを増せば、企業収益の足取りはしっかりとし、株価上昇を正当化すると期待されます

 

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