ラオスで広がる日本人“児童買春ツアー”の闇 授業の合間に呼び出され…性的搾取される少女たち


日本人の逮捕者まで出たラオスの“児童買春”問題。
現地の少女を無断で撮影した動画がインターネットで不正に売買され、
日本人買春者の増加に拍車をかけているという。
このような悪質な行為を助長しているとみられるのが、現地に住む日本人による“児童買春ツアー”の存在だ。
現地では「買春の案内やあっせんをする人物を取り締まらなければ問題解決にはつながらない」との声も聞かれる。JNNは首都ビエンチャンで実態を取材した。
【写真で見る】SNSで飛び交う児童買春の“体験談” ラオスで広がる日本人“児童買春ツアー”の闇
■「児童買春は違法です」
機内で注意喚起 私たちがビエンチャンに向かったのは8月28日。前日には、ラオスなどで児童買春を繰り返していたとみられる日本人の男2人が愛知県警に逮捕されていた。
搭乗していたエア・アジアの機内では着陸前、乗務員が次のように注意を呼びかけた。 「お客様への特別なお知らせです。
ラオスでは人身売買や児童買春は違法です。十分お気をつけください」 わざわざ機内でアナウンスされるほど、問題は深刻なのか―そう感じざるを得なかった。
現地で取材班に協力したラオス人ガイドは声を潜める。 「中国企業がさまざまなビジネスを進めていますが、近年は中国系マフィアによる人身売買や違法賭博、麻薬取引、そして売春まであらゆる犯罪が広がっています」 社会主義体制下のラオスでは言論統制が厳しく、こうした問題が国内メディアで報じられることはめったにない。
「国のイメージ悪化を懸念し、警察もメディアを厳しく監視しています」と忠告され、私たちは緊張感を抱えて取材に向かった。
■13歳の少女も…人身売買で“性労働”を強制か
ラオスでは児童買春が法律で禁じられているため、売春施設はホテルやゲストハウス、飲食店を装ってひそかに営業している。 売春が行われているという市街地のホテルを訪ねると、従業員らしき人物が「レディ!セクシー!」と声をかけてきた。売春の客引きだ。
客のふりをして話を聞いてみると、こう説明された。 「宿泊なら1泊120万キープ(約8000円)。短時間の利用なら60万キープ(約4000円)。女の子たちは部屋に待機しているから自由に選べる
連れて行かれた待機部屋には青白い照明が灯り、10人〜15人の女性が座っていた。ドレスやカジュアルな服を着ているが、あどけなさが残る顔立ちも多い。スマホを片手に退屈そうな表情をしている人もいる。客引きの人物は得意げに言った。 「年齢は13歳、14歳からだよ」 違法であることを意に介する様子はまったくなかった。 こうした少女たちはどこから来ているのか。 国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」によると、ラオスでは5〜17歳の子どもの約3割が労働に従事している。「子どもたちが性産業に搾取され、児童売春や人身売買が常習的に行われている」という。中でも貧困層の多い農村部の子どもたちがブローカーに利用され、売春施設へ送り込まれているというのだ。
■ホテルにいた日本人男性を直撃「やめてください!」
取材した売春施設の客引きに客層を尋ねてみると、「中国人や韓国人、欧米からの客も多いが、日本人が特に多い」と答えた。どうやらこの施設は日本人買春者が集まる有名スポットのようだ。
「先日も6人〜7人ぐらいの日本人客が来ていた。日本人客は人気のない女の子でも選んでくれるからありがたいよ」 しかし、警備の男性らが我々を警戒している様子だったので、身の危険を避けてその場を離れることにした。 その後、ホテルのロビーで中年の日本人男性を見かけた。
記者が直撃するとこう答えた。 記者:「日本人ですか?」 日本人男性:「ええ、そうですけど」 記者:「ここで何をしているんですか?」 日本人男性:「いや別に宿泊してる」 記者:「日本のテレビ局の記者だがここで女の子を買春とかしていない?」
日本人男性:「あー。ちょっとやめてくれる?そういうの。やめてください!」 男性は買春行為を否定した。
■「ロリの聖地」SNS影響で日本人増加か…
対策強化も ラオスでは近年、児童買春に手を染める日本人が増加していると指摘されている。 東南アジアの周辺国で取り締まりが厳しくなっている影響もあるとみられるが、主な要因はSNSだ
SNS上ではラオスを「ロリの聖地」「最後の楽園」といった書き込みが散見されるだけでなく、「〇〇で〇〇歳を指名した」といった“体験談”まで。
さらに、日本人が現地の少女を無断で撮影したとみられるわいせつな動画や施設情報をまとめた“有料マニュアル”がネットで不正に売買される悪質なケースもある。
どんな映像が撮れたか、どんな少女と関係を持ったのか競い合うかのように情報が飛び交い、それが日本人の買春を助長しているとみられる。
事態を重くみた日本の外務省は今年6月、児童買春がラオスと日本の双方で「処罰の対象になる」と警告する異例の“注意喚起”を出した。
8月には、愛知県警がラオスなどで少女を盗撮した疑いで日本人2人を国外犯として逮捕したことで問題が再び注目されている。
一方、現地で暮らす日本人からは「児童買春のあっせんや案内など観光客を手引きする日本人在住者を取り締まらなければ根本的な解決につながらない」との声も上がっている。
■授業の合間に売春も?日本人が仕切る “児童買春ツアー”
取材を進めると、日本人観光客らを売春施設へ案内する“児童買春ツアー”を行う日本人在住者の存在が浮上した。 現地の事情に詳しい男性がある施設に案内してくれた。敷地に入るとまず目に入るのはモダンな内装がオシャレなカフェ。若い男女や家族連れがコーヒーなどをたしなんでいる。
「このカフェを経営しているオーナーが敷地の奥で売春を行うゲストハウスを運営しています。オーナーのことを知っている人にアテンドしてもらわければ、普通の観光客は入れない」 ゲストハウスの関係者らによれば、ここで働くのは多くが15歳前後の少女たちだ。
驚くことに、すぐそばの小中高一貫校に通う生徒たちもいて、昼休みなど授業の合間に呼び出され、客の相手をしているというのだ。前出の男性が話を続ける。 「ビエンチャンに住んでいる日本人Kがここに日本人観光客を団体で連れてきていると聞いています。彼は“児童買春ツアー”で観光客から金を集め、その金で毎日のように売春施設に通っているそうです。ただ、最近は日本大使館なども児童買春を警戒していますから、郊外へ引っ越して目立たないように生活しているみたいです」
私たちは日本人Kに接触すべく、ゲストハウスをはじめ“児童買春ツアー”で使われているという複数の売春施設で数日間、張り込みを続けたが、その人物を確認することはできなかった。
このほかにも日本人在住者で日本人観光客らを売春施設に手引きしている人物がいるとの情報が複数、寄せられた。
人身売買によって“性労働”を強いられるラオスの少女たち。 その犠牲の裏で、日本人が関与する児童買春は今なお続いている。 取材:JNNバンコク支局 村橋佑一郎 撮影:JNNバンコク支局 倉上僚太郎
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