歴史家ティモシー・スナイダー「トランプは狼の皮をかぶった羊にすぎない
 
 
プーチンも習近平もその正体を見抜いている
 

​​​​​​​

プロジェクト・シンジゲート

 

Text by Timothy Snyder

 

歴史学者のティモシー・スナイダーは、トランプ大統領を「張りぼての強権者」と分析する。国内では強権的指導者として振る舞うが、その強さは支持者の従順さによってのみ成り立っているのだ。

政府機関を破壊して有能な人材を排除した結果、米国は真の国際的影響力を失った。ロシアや中国などの敵対国はこの機会を最大限に利用しているとスナイダーは警告する。

 

米国外でトランプを恐れる者はいない


投資家たちはこの数ヵ月の間に、あるシンプルな法則に基づいた新たなトレード戦略を見つけ出した。その法則とは、「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビって引き下がる)」。略してTACOである。

米国のドナルド・トランプ大統領は友好国にも大型関税を課すと脅したり、連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任を示唆したりする。だが市場が厳しい現実を突きつけると、すぐに撤回する。そして再び関税を持ち出し、またしても撤回するのだ。

このパターンは経済分野にとどまらない。実際、これはトランプ政権の決定的な特徴である。
 

とはいえ、トランプはただの「チキン(ビビり)」ではない。彼は「弱い強権指導者」であり、米国の敵対国は米国人よりもそのことをよく理解しているのかもしれない。

多くの米国人はトランプを恐れており、それゆえ他国の人々も恐れていると思い込んでいる。だが米国の一歩外に出れば、トランプを強権指導者として恐れている者などいない。

米国の友好国が恐れているのは、他者がこれまで築き上げたものを破壊する「放火魔」としてのトランプだ。そして米国の敵対国は、トランプとイーロン・マスクの政府効率化省(DOGE)がもたらしたその破壊を歓迎している。

マスクが同省のトップを退任した際、ロシア政府に影響力を持つ極右思想家のアレクサンドル・ドゥーギンはこう言って惜しんだ。

「DOGEはUSAID(米国際開発局)、保健省、教育省を一掃することで、全世界に大きな恩恵をもたらした」
 

それは従順な支持者の前でしか通用しない


トランプは相対的な意味では強い。彼が政府機関を破壊した後、残るのは彼の存在感だからだ。

しかし、トランプは弱い。なぜなら彼自身が、資金や兵器、諜報活動を監督する機関を破壊したため、米国は対外政策に必要な実質的手段を失ってしまったからだ。

トランプは「トランプ劇場」で強い指導者を演じており、彼は才能のある役者ではある。だが彼の強さは、支持者たちが従順であることによってのみ成り立っている。彼のパフォーマンス

​​​​​​​
================================================================================

トランプがプーチンと合意した「ウクライナへの安全保障の提供」とは?

 

 

ワシントン・ポスト(米国)

 

Text by David L. Stern, Mariana Alfaro, Anastacia Galouchka, Catherine Belton and Natalie Allison

 

 

 

 

 

ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチン露大統領はアラスカでの首脳会談で、ウクライナに「強固な安全保障」を与えることで合意した──米国のスティーブ・ウィトコフ特使が8月17日、「FOXニュース」のインタビューでそう明かした。

「米国は(NATO条約の)第5条の安全保障を提供できる準備がある。ただし、NATOとしての提供ではなく、米国や欧州諸国から直接提供するものだ」とウィトコフは述べた。

つまり、ウクライナのNATO加盟は認めないが、その第5条に類似した安全保障を提供してもいいという意味だ。しかも、そのように米国や欧州がウクライナを守ることをプーチンが認めたという

 
 
 

トランプ、ゼレンスキー、プーチンの三者会談?


NATO条約の第5条は、加盟国が1国でも攻撃を受けた場合、全加盟国への攻撃とみなして集団的自衛権の行使を定めている。ウクライナはNATO加盟国ではないが、2022年にロシアによる全面侵攻が始まって以降、米国など同盟国に安全保障の支援や確約を求めてきた。

ウィトコフによると、安全保障の提供については、ワシントンで米国時間18日午後に開かれるトランプとウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談のなかで、そして欧州首脳らも交えた場でさらに話し合われる予定だ