Park-PFIの潮流、都立明治公園など先進自治体が都市戦略で期待する「緑の力」

山本 恵久

 

 

 

一定の規模を持つ都市公園は戦略的な都市づくりの拠点となり得る。「公園の緑」はそこにどのように位置付けられるのか。Park-PFI(公募設置管理制度)をはじめ、同様の趣旨で設けられた緑に関する制度の成果を追った。

 都心における緑の在り方に目を向けた2つのPark-PFI事業が東京都内に出そろった。都立公園初のPark-PFIとして同時期に事業者の公募が行われた、「都立明治公園」と「都立代々木公園」の整備・運営プロジェクトだ。

 都立明治公園の整備・運営を担うのはTokyo Legacy Parks。その代表企業である東京建物は2025年2月、初年度の延べ来園者数が240万人を突破したと発表した。同社は「大手町の森」(14年竣工、千代田区)、「ののあおやま」(20年竣工、港区)といった、地域の植生や生態系に配慮した森を創出する開発事業を都心で展開。その経験を基に都営住宅跡地などを対象とする21年の公募に名乗りを上げ、24年1月に全体開園にこぎつけた。

 都立明治公園は新宿区と渋谷区にまたがる場所に位置する。全体面積は約1万6200m2。天然芝を用いた約1000m2の広場の他、公募要件の2倍以上の面積となる約7500m2の植林地、スパ施設を含む5つの店舗棟などを有する。

都立明治公園

東京都の新宿区と渋谷区にまたがる都立明治公園。天然芝の広場、インクルーシブ広場などを擁する。東京建物を代表とする6社が整備・運営を担い、緑化には西武造園が参画。AIカメラとAI Beacon内蔵のスマートポールで来園者数や属性を測定中だ(写真:山本 恵久)

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緑とのタッチポイントを各所に。「誇りの杜」に設けた、フォレストコアを活用したパークヨガの様子」(写真:東京建物)

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公募要件に従って渋谷川水系のある風景を外苑西通り沿いに復活させた「みち広場」(写真:東京建物)

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100年の森を未来に継承する、都立明治公園の整備思想。国立競技場に面する傾斜のある地形を生かし、雨水浸透の仕組みや地下貯水槽などを整備。都心のグリーンインフラとして機能させる(出所:東京建物)

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 新設の植林地「誇りの杜(もり)」では、Park-PFIの事業期間20年を超える100年という時間軸で緑化を提案。未完成の森と位置付け、落葉樹を中心に植えて土づくりから始めた。「間伐によって森を循環的に整備するためにフォレストコアと呼ぶ余白を確保し、これを活動空間に用いる。半年ごとに個々の樹木と土の状態を確認しながら育てる」と東京建物新規事業開発部インフラ・PPP推進グループの前田大グループリーダーは語る。

 一方、25年2月から順次供用を開始した「代々木公園Park-PFI計画」(渋谷区)は、東急グループが魅力向上に注力する広域渋谷圏(渋谷駅から半径2.5km圏内)における緑の価値を意識した事業だ。岸記念体育会館跡地を生かし、代々木公園を約4200m2拡張した。

都立代々木公園

スポーツ系のテナントを主体とした都立代々木公園。東急不動産を代表とする4社が整備・運営を担い、緑化には石勝エクステリア(東京・世田谷)が参画(写真:山本 恵久)

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ランニングステーションなどが入る「代々木公園 BE STAGE」や屋外アーバンスポーツパークを設けた(写真:山本 恵久)

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 整備・運営を担う代々木公園STAGESの代表企業である東急不動産によると「広域渋谷圏に相次いで完成したフォレストゲート代官山、渋谷サクラステージ、東急プラザ原宿(ハラカド)では、いずれも緑化に注力している。渋谷と表参道の中間にある代々木公園は、その面的な広がりを表現する重要な結節点となる」(同社都市事業ユニット渋谷事業本部渋谷運営事業部運営企画グループの横山大輔課長)

 公募対象公園施設である「代々木公園 BE STAGE」には25年内に、緑化した屋上に滞留空間を設けたハラカドなどと同様、緑と接するバーベキュースペースを開設する予定だ

 

 

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