安藤忠雄氏設計の「直島新美術館」開館、施設の3分の2は地下で地上部は森の中へ
川又 英紀
日経クロステック/日経アーキテクチュア
安藤忠雄氏設計の「直島新美術館」開館、施設の3分の2は地下で地上部は森の中へ | 日経クロステック(xTECH)
香川県の直島で2025年5月31日、公益財団法人福武財団が建設した新しいアート施設「直島新美術館」が開館した。同財団が運営している「ベネッセアートサイト直島」における、建築家の安藤忠雄氏が設計を手掛けた10件目のアート施設だ。
香川県の直島で開館した「直島新美術館」(写真中央の建物)。ベネッセアートサイト直島で安藤忠雄氏が設計した10件目のアート施設(写真:GION)
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直島新美術館の敷地入り口にあるサイン(写真:GION)
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急な階段を上ると見えてくるコンクリート打ち放しの美術館(写真:日経クロステック)
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美術館の入り口まで続くスロープ。道沿いの塀は、美術館が位置する直島の「本村エリア」にある民家から着想を得たという小石を積んだような仕上げ(写真:GION)
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直島新美術館は直島の「本村エリア」にある集落の中に位置する。初めて施設名に「直島」の地名を含めた。同館は、日本を含めたアジアのアーティストによる現代アートを展示・収集する。
開館と同時にスタートした「開館記念展示―原点から未来へ」では、日本や中国、韓国、インドネシア、タイ、インド、フィリピン、マレーシアなど、アジア出身の12組のアーティストが直島に合わせて構想した新作や代表作などを公開した。大きな展示室を使った大規模なアート作品が並ぶ。
ベネッセアートサイト直島にある施設の作品は、恒久展示されているものがほとんどだ。しかし直島新美術館は時々展示替えをすることで、新美術館として常に「新しさ」を打ち出していくという。
高台にある建物は地下2階・地上1階の3層構成で、地上1階の北側には大きなテラスがあるカフェを併設する。3層のうち、約3分の2を地下に配置したのが最大の特徴といえる。建物を地中に埋めることで、自然が豊かな島の景観に配慮した。
美術館の入り口。左右に大きなガラス扉がある。右が展示室に続くエントランス、左がカフェ。屋根に鋭角の切れ込みがある(写真:日経クロステック)
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美術館の北側にある多目的カフェスペース「&CAFE」に続くガラス扉(写真:日経クロステック、直島新美術館「開館記念展示─原点から未来へ」展示風景、2025年)
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カフェの内観。目の前に瀬戸内海が広がる。ここでオープニングプレス内覧会が開かれた(写真:GION)
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カフェを海側から見た様子。テラスは海に向かって開放された大空間になっている。カフェにもアートを展示(写真:GION)
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カフェから本村エリアの森や集落、港がよく見える。その先には瀬戸内海が広がり、島々や行き交う船を眺められる(写真:日経クロステック)
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美術館の大きな屋根は、丘の稜線(りょうせん)をつなぐように緩やかな勾配になっている。建物の高さも抑え、「数年後には美術館の周囲に植えた草木が育ち、建物は森の中に隠れていく」と安藤氏は説明する。
敷地面積は6018m2、延べ面積は3176m2。4つのギャラリーがあり、面積はギャラリー1が373m2、同2が300m2、同3が320m2、同4が494m2。カフェは144m2ある。設計は安藤忠雄建築研究所(大阪市)、施工は鹿島が手掛けた。構造種別は鉄筋コンクリート造だ。
建物内外の壁は、安藤氏らしいコンクリート打ち放しが目に付く。ただし、直島の本村エリアにできた美術館なので、周辺の集落に見られる建築要素を取り入れている。
例えば、外壁の一部は黒しっくいで仕上げた。これは集落の外壁に使われている黒い焼き杉をイメージしたものだ。美術館のアプローチ沿いに立てた塀の一部は、集落の民家に着想を得たという丸い小石を積み上げたような仕上げにしている。
展示室に続くガラス扉。黒しっくいで仕上げた外壁は集落の外壁に使われている焼き杉をイメージしたもの(写真:日経クロステック)
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美術館の1階エントランスや3層をつなぐ直線的な階段室は、コンクリート打ち放しだ。三角形のトップライトから館内に自然光が差し込み、コンクリートの壁に三角形の光の模様をつくる。
地上1階の美術館エントランス。左手のコンクリートの壁には写真作品を展示。作品は、下道基行+ジェフリー・リム《瀬戸内「漂泊 家族」写真館(「瀬戸内「 」資料館」プロジェクトより)》2024(写真:日経クロステック、直島新美術館「開館記念展示─原点から未来へ」展示風景、2025年)
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エントランスを左に曲がったところに長い階段室を配置。三角形のトップライトから自然光が差し込む。地上1階から地下1~2階へと階段が続く(写真:日経クロステック)
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地下2階にあるギャラリーの手前から階段室のトップライトを見上げた様子(写真:日経クロステック)
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階段室のイメージ。地上1階から地下2階までを直線状につなげた。階段の両側にギャラリーがある(出所:Tadao Ando Architect & Associates、福武財団)
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開館時間は午前10時から午後4時半まで。休館は月曜日。鑑賞料金は日にち指定のオンラインチケットが1500円、窓口での購入は1700円。15歳以下は無料だ。
25年は「瀬戸内国際芸術祭2025」を開催しており、25年8月1日から1カ月間の夏会期と、同年10月3日からの秋会期には直島新美術館が新たに芸術祭の作品鑑賞パスポートの対象施設に加わる。大阪・関西万博が開催中であり、海外からの観光客も大勢、直島新美術館を訪れることになりそうだ。
安藤忠雄氏設計の「直島新美術館」開館、施設の3分の2は地下で地上部は森の中へ | 日経クロステック(xTECH)
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安藤忠雄氏が設計の「直島新美術館」25年5月31日開館、ベネッセアートサイト10件目
福武財団は、香川県の直島で建設している「直島新美術館」を2025年5月31日に開館すると発表した。同財団が運営する「ベネッセアートサイト直島」で、建築家・安藤忠雄氏が設計する10件目の施設になる。
2025/02/06