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江藤前農水相より「ひどい失言」とは

英紙が見た「コメのために自動車産業を犠牲にする不可解な国・日本

 
 
 
 
 
 
 
備蓄米の放出が始まった後も、日本ではコメ不足が続いているPhoto: Buddhika Weerasinghe/Getty Images
 
 
 
 
 
 

 

フィナンシャル・タイムズ(英国)

 

Text by Leo Lewis

 

コメの値段高騰と品薄の問題が世間を賑わすなか、英紙「フィナンシャル・タイムズ」は石破茂首相の「自動車のために、農業を犠牲にすることはしない」という発言に注目。日本の政治指導者は、自国が直面している危機の本質を理解していないと警鐘を鳴らす。


あなたが日本の農林水産大臣で、生まれながらにしてコメを崇拝するように教え込まれた国民が、その記録的な高値と品薄に悩まされているとしよう。この状況に、どのように対応すべきだろうか。

「日本政府は国民の苦しみを充分認識しており、効果的な救済策がまもなく発動されるし、何十年にもわたる誤った政策を是正するための抜本的な改革も急ぎ進めている」と、国民に伝える方法がひとつ考えられるだろう。

なかには米ギャング映画『スカーフェイス』に登場するような豪邸でリラックスしながら、「支援者がコメを贈答してくれるおかげで、自宅には売るほどある」と自慢する人もいるかもしれない。
 

前農水相の江藤拓は、5月18日に開かれた政治資金パーティーに出席した際、後者を選択した。「私はコメは買ったことはありません、正直。支援者の方々がたくさんコメを下さる。売るほどあります、私の家の食品庫には」という発言が、江藤の運命を決定づけた。彼は自腹でコメを購入している人々から反感を買い、発言の3日後に辞任を発表した

 
 
 
 
この「ライスゲート事件」は一見、長年にわたり繰り返されてきた日本の政治家の無神経な失策のひとつに過ぎないように思える。だが江藤の共感力の乏しさや発言のタイミングの悪さによって、大問題に発展した
 
 
だがさらに驚くべきことに、この江藤の失態の少し前に、石破茂首相がこれよりひどい失言をしている。彼は米国との関税交渉について、「自動車のために、農業を犠牲にすることはしない」と5月11日に述べた。これに警鐘を鳴らす声は少なかったが、より危機感を持つべき発言だろう。
 
 
 
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