首都の機能停止を回避

東京都東部地域の「地震×水害」対策、強靱化やBCPで複合災害を加味

安藤 剛

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

東京都東部地域の「地震×水害」対策、強靱化やBCPで複合災害を加味 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

日本の中でも複合災害対策で先行している自治体の一つが東京都だ。特に東部地域では地震と豪雨などによる水害の組み合わせに備えて、同地域の特別区と共にハードとソフトの対策を加速している。

 隅田川や荒川、江戸川といった主要な河川が集中し海にも近い都の東部地域。地盤は概して低く軟弱だ。しかも地震や火災に弱い木造住宅密集地域が広く分布するため、都と各特別区は自然災害への対策を重視してきた。特に地震と豪雨などによる水害が連発する複合災害に対して近年、警戒を強めている。

 同地域に立地する江戸川区は2024年2月、地震などの被害想定を更新した区地域防災計画を発行した。複合災害の項目に8ページを割き、「江戸川区で考慮すべき最大最悪の災害」と位置づけている(資料1)。

資料1■ 江戸川区は地域防災計画で複合災害を「最大最悪の災害」と位置付ける(出所:江戸川区)

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 同区にとっての複合災害は主に、激しい地震で堤防や水門が被災して機能が低下した後、大型台風で大規模な洪水や高潮が発生する事態を意味する。地域防災計画に初めて複合災害の項目を設けたのは12年度と比較的早かった。

 区は地震の後に訪れる水害への対策として、早い段階での住民の広域避難を目指す。「何もできない!ただ逃げるのみ!」と、区外への避難を率直な表現で訴えている。住民の避難を助けるハードの対策としては都市計画道路の整備に力を注ぐ。区土木部計画調整課によると、区道での整備率は24年度末時点で81%と、特別区で6番目に高い。「50年時点で95%にまで引き上げるのが目標」と同課の本多吉成統括課長は話す