高校生に人気なのは、クレンズとデトックス
10代「ウェルネス・インフルエンサー」に踊らされる若者が危険に晒されている
ニューヨーク・タイムズ(米国)ほか
Text by COURRiER Japon
「もし『無知は幸福』だと思うなら、この動画を見ないで」
こうした警告から始まる動画で、1人のインフルエンサーが果物をカットしながら、ピーナッツバターやバニラフレーバー、さらには雨のなかに実際に何が入っているのかについて語り続ける。
これは、オンラインのウェルネス界ではよくある投稿の一種だ。だが彼女はわずか17歳で、高校2年生なのだ。
ボストン近郊に住む自称「クランチー・ティーン(自然派の若者)」のアバ・ノエは、インスタグラムで2万5000人以上のフォロワーを持つ。彼女の投稿ではヨウ素添加塩を「毒性がある」とし、フッ化物を「毒」と表現する。そんなノエは、フッ化物不使用の歯磨き粉メーカーとの有償パートナー契約を結び、「無毒」スキンケア製品などを販売するブランドとも提携している。
米「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、ノエのように同世代の健康志向の若者にアピールするインフルエンサーが増えているという。そして同紙は、彼らの反体制的な視点は、ロバート・F・ケネディ・ジュニアや「米国を再び健康に(MAHA)」運動の思想と一致する部分が多くあるとも指摘する。
こうしたティーンの健康に対する執着は、医療専門家や栄養士、教育者の一部を不安にさせている。
昔からティーンエイジャーは、ボディイメージや摂食障がいに悩んできた。だが、ジョンズ・ホプキンズ小児病院のジャスミン・リース医師によれば、食事に執着するティーン患者が増加しているという。さらに情報源がウェルネス・インフルエンサーのため、彼らは誤った、あるいは単純化された見方をする傾向にあるのだ。
「ウェルネス」という名の落とし穴
またニューヨーク・タイムズは、アイオワ州に住むアニカ・ズーデ(16)を紹介している。彼女もこうしたウェルネス・インフルエンサーの1人で、アンドリュー・ヒューバーマンや(MAHA支持者の)キャリー&ケイシー・ミーンズ兄妹、保守系評論家キャンディス・オーウェンズのファンだという
「もちろん、R.F.K.(ロバート・F・ケネディ・ジュニア)の投稿はいつもチェックしています」
アニカは、超加工食品によって体調が悪くなった経験から、2023年に自身のウェルネスアカウントを立ち上げた。以来、彼女はスーパーマーケットのなかを歩きながら人気のスナックや日用品を批評する動画を投稿し、約4万人のフォロワーを獲得した。
オーストラリアの管理栄養士ダニエル・シャインは、最近あるティーンの患者がアニカ・ズーデの情報を参考にしていたことを知った