スペイン紙が注目した日本人の初アーベル賞
「数学界のノーベル賞を受賞した柏原正樹は、鶴と亀の足で計算を学んだ
エル・パイス(スペイン)
Text by Manuel Ansede
3月にノルウェーの科学文学アカデミーから「アーベル賞」を贈られた、数学者の柏原正樹。その功績の“秘訣”として、スペイン「エル・パイス」紙は日本の鶴亀算に注目した。
「数匹の鶴と亀が箱に入れられています。見えているのは頭が6つと足が20本。鶴と亀はそれぞれ何匹いるでしょう」
これは「鶴亀算」と呼ばれる問題で、「和算」の伝統的な問題の1つだ。和算とは、鎖国した日本で17世紀以降、西洋世界とは無縁な状態で独自に発展した数学である。
78年前、茨城県結城市に生まれた柏原正樹は、広島と長崎への原爆投下で荒廃した国で、学校で鶴と亀の足の数を計算するうちに代数の虜になったという。そんな柏原に、ノルウェーの科学文学アカデミーは、数学のノーベル賞として知られる「アーベル賞」を2025年3月に授与した。賞金は750万ノルウェークローネ(約1億円)だ。
鶴亀算の考え方はシンプルである。
仮に6つの頭すべてが鶴の頭だとすると、足は12本になる (6×2=12)。
だが実際には、足は20本あり、鶴だけでは8本足りない(20−12=8)。
ということは、鶴より足が多い亀が何匹かいることを意味する。
鶴1羽を亀1匹に変えると足は2本増える。
足を8本増やすには、鶴を亀に変える作業を4回するといい(8÷2=4)。
従って、亀は4匹となり、鶴は2羽になる(6−4=2)。
「代数学」とは、足し算や掛け算のような通常の算術演算を一般化した抽象的な構造を研究する数学の一分野である。代数の方程式を使うと、上の問いはより簡単に解ける。
鶴の数をx、亀の数をyとすると、
頭の数は、x+y=6
足の数は、2x+4y=20と表せる。
すると、x=2、y=4、つまり鶴は2羽、亀は4匹になる。
ノルウェーの科学文学アカデミーの発表によると、柏原は、解析学や代数学といった異なる数学の分野のあいだに「橋をかけた」功績で賞を授与された
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ウィキペディア(Wikipedia)』
柏原 正樹 | |
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![]() ICM 2018にて |
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生誕 | 1947年1月30日(78歳)![]() |
研究分野 | 数学 |
研究機関 | 名古屋大学 京都大学数理解析研究所 京都大学高等研究院 |
出身校 | 東京大学理学部 東京大学大学院理学系研究科数学専門課程修士課程修了 |
指導教員 | 佐藤幹夫 |
主な受賞歴 | 彌永賞(1981年) 朝日賞(1987年) 日本学士院賞(1988年) 藤原賞(2008年) 京都賞基礎科学部門(2018年) チャーン賞(2018年) 京都府文化賞特別功労賞(2024年) アーベル賞(2025年) |
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柏原 正樹(かしわら まさき、1947年〈昭和22年〉1月30日 - )は、日本の数学者。京都大学名誉教授。京都大学高等研究院特定教授。理学博士(京都大学・1974年)。専門は代数解析学、表現論等。学位論文は「On the maximally overdetermined system of linear differential equations―線型偏微分方程式の極大過剰決定系について」[1]。
茨城県結城市生まれ[2]。1歳ごろ水戸市に転居。大阪府池田市出身。京都大学数理解析研究所所長、国際数学連合 (International Mathematical Union, IMU) 副総裁を歴任