廃止直後のKK線上でイベント、銀座囲む高速道路が歩行者空間へ

大上 祐史

 

ラジエイト代表

 

廃止直後のKK線上でイベント、銀座囲む高速道路が歩行者空間へ | 日経クロステック(xTECH

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真:大上 祐史)

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 1966年の全線供用から約60年、首都高速道路の日本橋区間地下化事業に伴い、銀座を囲むビル上部を通る東京高速道路(KK線)が2025年4月5日午後8時に廃止された。KK線は自動車専用道路から歩行者中心の公共的空間に転換する。

 KK線廃止直後の4月18~19日、同線の歴史を振り返り、車のための場所から人のための場所に生まれ変わることを披露するイベント「Roof Park Fes & Walk」(ルーフ・パーク・フェス・アンド・ウォーク)が、KK線本線上で以下のように催された。

  • 4月18日(金)
    午前10時40分~11時40分:KK線リボーンセレモニー
    午後6:30分~8時30分:Roof Park Talk & Live
  • 4月19日(土)
    午前6時45分~8時:Roof Park モーニングマラソン
    午前9時~午後6時:Roof Park Fes & Walk

 一般参加できるイベントはすべて有料の事前申込制。販売されたチケットは「Talk & Live」が1人2000円、KK線本線を歩くことができる「Walk」は1人1000円、様々なジャンルの専門家がツアーガイドになりKK線や周辺の歴史やまちを案内するツアー「Guide Walk」は1人3000円に設定された。

「KK線リボーンセレモニー」

 4月18日午前、関係者によるセレモニーがKK線本線上のイベントステージで行われた。「車のための空間から人のための空間への交代式」だ。

 主催者挨拶として、東京高速道路(東京・中央)の加藤浩社長は「KK線は自動車道として働いてきた60年あまり(編集注、1959年に部分開通)の歴史に幕を閉じた。今後は東京都の支援を受けながら、上部の空間を歩行者中心の公共的空間として再生する。古くなったものを壊すのではなく再生して使う。今まで例のない事業に取り組んでいく。世界から注目される観光拠点を目指す」と述べた。

関係者を招いてのセレモニー(写真:大上 祐史)

関係者を招いてのセレモニー(写真:大上 祐史)

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 パレードセレモニーが始まった。KK線の汐留側からイベント会場を目指すクラシックカーパレードが大型ビジョンに映し出される。司会のサッシャ氏とモータープレス代表の藤原よしお氏によるレース実況のような解説を交えて、これまでKK線を走ってきたであろう時代を代表するクラシックカー16台がイベントステージに向かう。

車の代表として、1966年式「スバル360」から1998年式「プリウス」までのクラシックカーがパレード(写真:大上 祐史)

車の代表として、1966年式「スバル360」から1998年式「プリウス」までのクラシックカーがパレード(写真:大上 祐史)

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 反対側の京橋側からは、日本大学吹奏楽研究会と地元小学生による歩行パレードがやってきた。

人の代表として、華やかな演奏と共にパレード(写真:大上 祐史)

人の代表として、華やかな演奏と共にパレード(写真:大上 祐史)

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 車と人がステージに集った。道路施設担当からKK線再生プロジェクト担当ヘフラッグを引き渡す、ハンドオーバーセレモニーへと進む。

「KK線 Reborn」と書かれたフラッグが大きく振られる(写真:大上 祐史)

「KK線 Reborn」と書かれたフラッグが大きく振られる(写真:大上 祐史)

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 フラッグを受け取った東京高速道路の花木万里子常務プロジェクト推進室長は、KK線を歩行者中心の公共的空間に再生する取り組み「Roof Park Project(ルーフ・パーク・プロジェクト)」を発表。「上部空間を限定されないものにしたい。そんな発想のもと、プロジェクト名称は下部に空間・営みがあることを示す『屋根=Roof』という言葉を使った。屋根に上ったときのワクワク感がある、楽しく愛される空間を目指す」と語った。

「公共的空間に再生するRoof Park Project」を発表(写真:大上 祐史)

「公共的空間に再生するRoof Park Project」を発表(写真:大上 祐史)

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 プロジェクトのコンセプトは「みんなでゆっくりつくる未来」として、4つの特徴を挙げた。

  • (1)都市スケールの既存インフラを再生し、新しい価値を提供すること
  • (2)民間と東京都の公民連携によって事業を推進すること
  • (3)計画・整備の段階から多様な人々と関わり、共創すること
  • (4)プロジェクトに関する発信や会話を常に行い「ゆっくりつくる」を実装する

 KK線を再生するに当たり、多くの人と関わり丁寧にプロジェクトを進めていくと共に、供用後も進化し続ける愛着ある街づくりを目指すと宣言した。

 最後に東京都の小池百合子知事が登壇して、次のように締めくくった。「1966年の開通以来、東京の成長と発展を支えてきたKK線は、車のための場所から人がワクワクする場所へと生まれ変わる。まさに、東京のウォーカブルなまちづくりの象徴となる。これからも都と東京高速道路が連携し、KK線の再生に取り組む。地域の皆様をはじめ、多くの方々と共に自由にアイデアを出し合いながら可能性を花開かせていきたい。世界から注目される観光の拠点として盛り上げたい

 

夜はトークとライブ、翌日はマラソンとウォーク

「Roof Park Talk & Live」

 4月18日夕刻からは、KK線本線のステージ周辺でトークセッションとライブパフォーマンスが行われた。「車の時代から人の時代へ」をテーマとした約40分のトークセッションに、多くの人が耳を傾けていた。

齋藤精一氏、入川ひでと氏、藤原よしお氏、田中元子氏によるトークセッション(写真:大上 祐史)

齋藤精一氏、入川ひでと氏、藤原よしお氏、田中元子氏によるトークセッション(写真:大上 祐史)

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 ライブパフォーマンス「高速電磁盆踊り in Roof Park」が披露され、KK線の夜は更けていった。

盛り上がるELECTRONICOS FANTASTICOS!による演奏(写真:大上 祐史)

盛り上がるELECTRONICOS FANTASTICOS!による演奏(写真:大上 祐史)

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「Roof Park Walk」

 翌4月19日は早朝にKK線本線約2kmを使ってのマラソンが行われた後、ウォークイベントが催された。ウォークイベントは23年、24年に続き3回目となり、今回は有料になった。入り口から出口まで、一方通行で自由な速度で歩くことができる。

ウォークイベントの地図(出所:東京都/東京高速道路)

ウォークイベントの地図(出所:東京都/東京高速道路)

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 KK線の新橋入口からスタートする。

ウォークイベント入り口となるKK線の新橋入口(写真:大上 祐史)

ウォークイベント入り口となるKK線の新橋入口(写真:大上 祐史)

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 KK線の本線を進むと、チケット確認と手荷物検査が行われているイベントの入場口ゲートが見えてきた。

直進する本線に設置された入場口ゲート(写真:大上 祐史)

直進する本線に設置された入場口ゲート(写真:大上 祐史)

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 土橋入口付近の右へ大きく曲がるコーナーでは、走行する新幹線を間近で見ることができるため、人気の撮影スポットになっている。歩行者空間が整備された後も撮影スポットとして残されるかもしれない。

新幹線が数分間隔で目の前を横切っていく(写真:大上 祐史)

新幹線が数分間隔で目の前を横切っていく(写真:大上 祐史)

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 クラシックカーのほか、東京高速道路のパトロールカーも展示されていた。

東京高速道路のパトロールカー(写真:大上 祐史)

東京高速道路のパトロールカー(写真:大上 祐史)

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 晴海通りと外堀通りが交差する数寄屋橋交差点付近の上空を歩く。

眼下に広がる数寄屋橋交差点(写真:大上 祐史)

眼下に広がる数寄屋橋交差点(写真:大上 祐史)

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 首都高速道路日本橋区間の地下化に伴う新たな都心環状ルート「新京橋連結路(地下)」の整備により、KK線の通過交通は「新京橋連結路」に転換する。首都高速道路による日本橋区間地下化事業についてのブースでは、多くの人が興味深く説明を受けていた。

首都高速道路の日本橋区間地下化事業ブース(写真:大上 祐史)

首都高速道路の日本橋区間地下化事業ブース(写真:大上 祐史)

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 キッズゾーンとして、現実と仮想空間を融合したクロスリアリティー(XR)体験、かけっこ教室、お絵描きエリアなどが用意され、ステージでは管弦楽団の演奏などが行われていた。

本線上で自由に落書きをする親子(写真:大上 祐史)

本線上で自由に落書きをする親子(写真:大上 祐史)

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 西銀座料金所も閉鎖。先は、首都高速八重洲線に接続している。

閉鎖された西銀座料金所(写真:大上 祐史)

閉鎖された西銀座料金所(写真:大上 祐史)

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 カーブで振り返り、歩いてきた汐留側を見てみた。西銀座乗継所があり、KK線がビルの上部を通っていたことが分かる。KK線では20tを超える大型車が通行できなかった。

KK線はビルの上部を通っていたことが分かる(写真:大上 祐史)

KK線はビルの上部を通っていたことが分かる(写真:大上 祐史)

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 ウォークイベントは西銀座入口でゴールになる。

右に大きく曲がった先に西銀座入口がある(写真:大上 祐史)

右に大きく曲がった先に西銀座入口がある(写真:大上 祐史)

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 先は首都高速都心環状線と接続する京橋ジャンクション(JCT)につながっている。

遠方に見える京橋JCTの料金所(写真:大上 祐史)

遠方に見える京橋JCTの料金所(写真:大上 祐史)

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 KK線の廃止、首都高速都心環状線における日本橋区間の地下化や新たな地下ルートとなる新京橋連結路の設置など、日本橋・銀座エリアを中心とした都市高速道路網の再整備が進む。KK線が通っていた既存施設の上部空間は、東京の新たな価値や魅力を創出し、世界に注目される観光拠点を目指す。整備完了の目標時期は30年代から40年代としている。

KK線再生後のイメージ(出所:東京都)

KK線再生後のイメージ(出所:東京都)

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筆者の大上祐史さんは、インフラ建設現場の見学会などに積極的に参加してリポートするWebサイト「ラジエイト」を運営しています。

 

 

 

 

 

 

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