マンション修繕工事談合、公取委約30社を検査 設計コンサルにも資料提供要請
荒川 尚美
日経クロステック/日経アーキテクチュア
マンション修繕工事談合、公取委約30社を検査 設計コンサルにも資料提供要請 | 日経クロステック(xTECH)
以前からささやかれてきた、マンション大規模修繕工事を巡る談合疑惑に、ついにメスが入った。公正取引委員会は2025年3月4日、関東地域の大規模修繕を巡る談合の疑いで、長谷工グループの長谷工リフォーム(東京・港)など20社超に立ち入り検査を実施。さらに同年4月23日、新たに大京穴吹建設(高松市)とSMCR(東京・中央)などにも検査に入り、対象は約30社に拡大した。日経クロステックが取材を進めると、検査を受けた企業名や、問題の構図が明らかになってきた。
公正取引委員会の立ち入り検査を受けた工事会社などが、自社のウェブサイトに掲載した文書の一部(写真:日経クロステック)
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公取委が調査しているのは、大規模修繕工事の入札や見積もり合わせに参加した工事会社が、本来よりも高い金額で受注を調整し、マンションの管理組合に不利益を与えていた疑惑について。独占禁止法違反(不当な取引制限)の恐れがある。
関係者への取材によると、公取委が25年3月4日に最初の立ち入り検査をしたのは、建設塗装工業(東京・千代田)、シンヨー(川崎市)、大和(横浜市)、中村塗装店(東京・品川)、日装・ツツミワークス(東京・豊島)、長谷工リフォーム、富士防(神奈川県横須賀市)、リノ・ハピア(東京・大田)、YKK APラクシー(千葉県松戸市)を含む20数社。25年3月6日には、ニットクメンテ(東京・北)も立ち入り検査を受けたことを自ら公表した。
さらに、日経クロステックがマンション大規模修繕工事を手掛ける複数の工事会社への取材を進めると、ティーエスケー(千葉市)とニーズワン(東京・渋谷)、三和建装(東京都西東京市)も「25年3月4日に立ち入り検査を受けた」と認めた。
その後、実態解明を進める中で新たに関与が浮上したとして、公取委が25年3月31日までに建装工業(東京・港)と清水建設の関連会社であるシミズ・ビルライフケア(東京・中央)、同年4月23日に大京グループの大京穴吹建設と三井住友建設グループのSMCRなど数社にも立ち入り検査したことが分かっている。
設計コンサルタント会社にも資料提供求める
関係者によると、談合が疑われる行為は、設計コンサルタント会社が工事の受発注に関与する「設計監理方式」を採用した大規模修繕工事で行われていたと見られる。
設計監理方式では、管理組合が設計コンサルタント会社に建物診断や工事会社選定、設計・監理などを委託し、設計コンサルタント会社が修繕工事の仕様を決めて、入札や見積もり合わせで工事会社を選定するのが一般的だ。
公取委は、談合がどのように行われていたか把握するため、大規模修繕工事に関係する設計コンサルタント会社と、設計コンサルタント会社の選定に関わる管理会社にも調査対象を広げていると見られる。
日経クロステックによる関係者への取材で、公取委が設計コンサルタント会社の翔設計(東京・渋谷)に資料提供を求め、同社が調査に協力していることが分かった。
翔設計は公取委が最初の立ち入り検査を実施した際、自社のウェブサイトで「本件(大規模修繕工事に関する一部報道)について各工事会社に確認を行っており、関係各所と連携のうえ、事実関係を確認し、適切に対応する」などと発表していた。同社は日経クロステックの取材に対し、「コメントを差し控えさせていただく」と回答している。
公取委が立ち入り検査や資料提供を求めたことが判明している主な建設会社と設計コンサルタント会社の一覧(出所:日経クロステック