米英仏中のパビリオンに注目、「峡谷」や「積み木」など各地の個性で競演

坂本 曜平

 

日経クロステック

  

菅原 由依子

 

日経クロステック、AI・データラボ

 

米英仏中のパビリオンに注目、「峡谷」や「積み木」など各地の個性で競演 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

開幕が間近に迫った大阪・関西万博。"万博の華”と呼ばれる海外パビリオンも全貌が見えてきた。「峡谷」「積み木」「竹簡(ちくかん)」などをモチーフに、各国の文化を表現した印象的なデザインのパビリオンが万博会場を彩る。今回の記事では米国、英国、フランス、中国などの施設に注目する。

 

 

 

巨大スクリーンが派手な米国館の外観(写真:日経クロステック)

巨大スクリーンが派手な米国館の外観(写真:日経クロステック)

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 万博会場に東ゲートから入り、木造の「大屋根リング」を抜けた先には広場がある。その広場を囲むのが、米国館やフランス館、マレーシア館、フィリピン館などのパビリオンだ。中でも目を引くのが、巨大な2つのスクリーンと宙に浮かぶようなキューブが目立つ米国館。内覧会開始と同時に、多くの報道関係者が列をなした。

 

 

 

 

日本国際博覧会協会は2025年4月9日、報道機関などを対象に大阪・関西万博の会場や参加国のパビリオンを公開した(写真:日経クロステック)

日本国際博覧会協会は2025年4月9日、報道機関などを対象に大阪・関西万博の会場や参加国のパビリオンを公開した(写真:日経クロステック)

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 設計したのは、米国の建築設計事務所Trahan Architects。平面が三角形の建物を2棟、くの字に配置して峡谷のような空間をつくり出した。巨大スクリーンには米国の国旗や、米国を象徴する風景などの映像を映し出す。

 

 

 

 展示は、米国の文化や宇宙開発の歴史、技術などを体験できるプログラムで構成した。2棟をつなぐ役割を担うキューブ内の演出は圧巻だ。壁面と天井に設けたスクリーンには、ロケットを打ち上げて宇宙空間に飛び出す映像などが映し出される。まるで宇宙飛行士になったような気分を体験できる。1970年の大阪万博でも人気を集めた「月の石」の展示にも注目だ。

 

 

 

米国の宇宙開発の歴史や技術などを、映像や模型と共に紹介する(写真:日経クロステック)

米国の宇宙開発の歴史や技術などを、映像や模型と共に紹介する(写真:日経クロステック)

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キューブ内の壁面と天井に設けたスクリーンには、ロケットの打ち上げ映像などを投映する(写真:日経クロステック)

キューブ内の壁面と天井に設けたスクリーンには、ロケットの打ち上げ映像などを投映する(写真:日経クロステック)

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展示の最後にあるのは、1970年の大阪万博でも人気を集めた「月の石」だ。写真下部の光る部分に月の石がある(写真:日経クロステック)

展示の最後にあるのは、1970年の大阪万博でも人気を集めた「月の石」だ。写真下部の光る部分に月の石がある(写真:日経クロステック)

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アイデアの集積をイメージした「積み木」の英国館

 ベールを脱いだ海外パビリオンのうち、驚かされたのが英国館だ。英国の設計事務所Woo architectsが建設会社ES GLOBALと共に、パビリオンの設計、建設、維持管理、撤去まで関わる。Woo architectsは、2012年のロンドン五輪や24年のパリ五輪など世界的なイベントで活躍してきた実績を持つ。

 

 

万博会場、大屋根リング内の南西側に立つ英国館。通り沿いには英国ロンドンのアイコンともいわれる赤い電話ボックスがある(写真:日経クロステック)

万博会場、大屋根リング内の南西側に立つ英国館。通り沿いには英国ロンドンのアイコンともいわれる赤い電話ボックスがある(写真:日経クロステック)

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 25年4月9日の披露に合わせて来館していたES GLOBAL共同最高経営責任者(Joint CEO)のOlly Watts氏を取材すると、「日本の法規制に合わせるためデザインを調整することに最も苦心した。だが結果的に素晴らしいパビリオンを完成できた」と誇らしげに答えてくれた。

 

 

 

左が英国総領事館副総領事のMatthew Ellis氏で、右がES GLOBALのJoint CEOであるOlly Watts氏。パビリオンは閉会後に部分的な移設や再活用ができる設計になっていると言う(写真:日経クロステック)

左が英国総領事館副総領事のMatthew Ellis氏で、右がES GLOBALのJoint CEOであるOlly Watts氏。パビリオンは閉会後に部分的な移設や再活用ができる設計になっていると言う(写真:日経クロステック)

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 パビリオンは全体的に積み木を重ねたような外観が特徴だ。小さなアイデアが集まり、偉大なアイデアが形成されるという概念を表現している。白いパネルの内側には、よく見ると国旗のユニオンジャックが描かれている。

 

 

 実はこの白いパネルは、19世紀に世界初のプログラマーと知られる英国の伯爵夫人エイダ・ラブレスをたたえて、彼女が使っていたパンチカードをモチーフにしている。そしてもう1つ、織物のような印象を与えることも意識されている。Woo architectsは、「19世紀にマンチェスターと大阪で起こった産業革命に重要な役割をもたらした繊維産業にも敬意を表した」とコメントを発表した。

 

 

 

外壁パネルを下から見上げる(写真:日経クロステック)

外壁パネルを下から見上げる(写真:日経クロステック)

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 館内の展示内容も飽きさせない工夫がたくさんあった。展示のメッセージは「#ComeBuildTheFuture(ともに未来をつくろう)」だ。英国総領事館副総領事のMatthew Ellis氏は、「世界に今様々な困難がある中で、アイデアを持ち合わせて乗り越えていこうという意味を込めた」と説明する。

 

 館内ではまず大きな部屋に入ると横長の大型スクリーンが待ち構えていた。スクリーンには、日本人と思われる親子とパビリオンマスコット「PIX(ピックス)」が共に英国の発明や発展の歴史を学ぶアニメーションが流れる。来場者は自然とストーリーに没入していき、次の部屋へと誘われる仕掛けだ。楽しみながらも、蒸気機関車など英国発祥の技術がこんなにあったのかと気づかされる。

 

 

部屋の中央に浮かぶキューブ型のスクリーンと、床のスクリーンがある。その周りに来館者が並んで立ち、映像を見ながらボタンを押して楽しく英国を学んでいく(写真:日経クロステック)

部屋の中央に浮かぶキューブ型のスクリーンと、床のスクリーンがある。その周りに来館者が並んで立ち、映像を見ながらボタンを押して楽しく英国を学んでいく(写真:日経クロステック)

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大スクリーンで語りかけてくるパビリオンマスコットの「PIX」(写真:日経クロステック)

大スクリーンで語りかけてくるパビリオンマスコットの「PIX」(写真:日経クロステック)

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 展示室を抜けた先で突如現れたのが、格子と鏡に囲まれた大人の空間。JOHNNIE WALKER(ジョニー・ウォーカー)のバーを備えた一室だ。ウイスキーを楽しめるバーカウンターがあり、低い椅子に置かれたクッションにリバティ・ロンドンの柄をあしらうなど、英国のモダンな感性に浸れる。また英国館は万博会場の「ウォータープラザ」に面した位置に立ち、格子越しにイベントを眺めることもできる特等席となっている。

 

 

 

JOHNNIE WALKERのバーがある部屋。JOHNNIE WALKERは、世界的に有名なスコッチウイスキーのブランドで、スコットランドの地で生まれた(写真:日経クロステック)

JOHNNIE WALKERのバーがある部屋。JOHNNIE WALKERは、世界的に有名なスコッチウイスキーのブランドで、スコットランドの地で生まれた(写真:日経クロステック)

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椅子に置かれたクッションの柄はリバティ・ロンドンによるもの(写真:日経クロステック)

椅子に置かれたクッションの柄はリバティ・ロンドンによるもの(写真:日経クロステック)

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格子越しに外を見ると、大屋根リングや「ウォータープラザ」のにぎわいが見える(写真:日経クロステック)

格子越しに外を見ると、大屋根リングや「ウォータープラザ」のにぎわいが見える(写真:日経クロステック

 

 

 

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