ピッツァからチーズ、洋菓子、紳士服まで

英紙記者が考える「日本人の職人が世界のコンクールでなんでも優勝する理由

 

 

 

 

英国グラスゴーの「大酒飲み」たちは日本のウイスキーを絶賛した Photo by Jamie McCarthy/Getty Images for House of Suntory

 

 

 

スペクテイター(英国

 

 

 

Philip Patrick

 

日本の名産でも、日本に昔から伝わる技術を使ったものでもないのに、なぜ日本人は世界で開催される飲食系のコンクールで1位に輝くのか。さらに、紳士服でも日本人の職人技は高く評価されているという。その不思議を、英「スペクテイター」誌の記者が深掘りした。


多くの人が食べもの目当てで日本を訪れるが、洋菓子を念頭においている人は、きっとごく少数だろう。実際日本には、この方面の確かな伝統があるというわけではない。しかしそんなことはお構いなく、

 

2年に一度の洋菓子のワールド・カップで、

 

ホスト国であり本命とみなされていたフランスを2位に抑え、

 

日本のパティシエ3人組が優勝した。

前回も1位に輝いた日本は、2回連続優勝国となったので、東京ではさぞかしビッグニュースになっているだろうと思われるかもしれない。

 

 

ところが日本のメディアはそれをほとんど取り上げなかった。

 

 

おそらくそのわけは、この手の国のステレオタイプを打ち破る勝利が、日本ではかなり普通のことになっているからだろう。たとえば、信じるか信じないかは別にして、日本はいまピッツァ業界、とりわけナポリピッツァでは世界有数の国なのだ。

そんな流れが始まったのは2010年。この年、名古屋の牧島昭成がナポリピッツァ職人世界選手権で、イタリア、スペイン、米国からの出場者150人を破ってチャンピオンになった

 

 

 

 

 

 

 


ナポリピッツァ職人世界選手権で優勝した牧島昭成

日本人の洋菓子職人たちは、いまや世界有数で、

 

京都の複数のチョコレート専門店が国際的な名声を得ている。

 

また、日本は乳製品では知名度がないにもかかわらず、チーズでさえも数々の賞をとっている。カマンベールに似た北海道の「さくら」は、「山のチーズオリンピック」のスイス大会で一度、金賞に輝いた。

酒類に関しては、

 

英国のウイスキー専門誌「ワールド・ウイスキー・バイブル2015」で

 

「山崎シングルモルト・シェリーカスク2013」が世界最高のウイスキー

 

として選定され、「ほとんどえもいわれぬほどの非凡さがある」と、1人の審査員に言わしめた。しかもそれはまぐれではなかった。

 



さらに2024年8月、いわゆる「グラスゴーの審査会」と呼ばれる、大酒飲みのグラスゴー住民によるウイスキー専門家委員会が、

 

5部門中3部門で日本のウイスキーに勝利を与えた。そうそう、

 

それに世界最高のバーテンダーで

 

カクテルシェイカーのチャンピオンはというと……日本人だ。

飲食系に限ったことではない。紳士服でも日本は国際的な名匠を生み出している。オーダーメイドの靴が欲しいと思ったら、世界一のものはロンドンのサヴィル・ロウやメイフェアでは見つけられないかもしれないが、

 

 

福田洋平のアトリエ

 

がある東京の港区なら見つかるだろう。

 


 

同様に、おそらく世界一のメンズ用鞄はパリで見つけられるだろうが、

 

それは日本人デザイナーの細井聡が手がけたものだ。

 

 

スーツとコートに関しては、フィレンツェの「サルトリア コルコス」の宮平康太郎に熱烈なひいき客がついていて、順番待ちが年単位の長さになっている

 

 

 

 

 

 

漢字の勉強が基礎になっている


なぜ日本人は、こうした高度に専門的なスキルを習得するのに長けているのだろうか。一部には、深く染み込んだストイックな職業倫理がある。日本人はこつこつと何年にもわたって働き、しかも報酬がわずかな場合も多い

 

 

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