安藤忠雄氏デザイン監修の阪大「感染症センター」竣工、楕円形平面建物は宇宙船地球号
川又 英紀
日経クロステック/日経アーキテクチュア
建物が完成したここからがスタートだ。感染症研究のため、世界中からこのセンターに人々が集まってくることを期待する。感染症対策といえば大阪だと言ってもらえるようになってほしい」
2025年3月24日、大阪大学の吹田キャンパスで同年2月末に完成した新しい研究棟「大阪大学・日本財団 感染症センター」の竣工式典が開かれた。建物の基本デザインとデザイン監修を担当した建築家の安藤忠雄氏は、感染症やパンデミックという人類共通の課題に対し、世界を巻き込んで立ち向かう研究施設として「宇宙船地球号」という建築デザインコンセプトを提案。それを平面が楕円形の施設形状で表現した。
2025年2月末に大阪大学の吹田キャンパスで竣工した研究棟「大阪大学・日本財団 感染症センター」の外観(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
建物の基本デザインとデザイン監修を担当した安藤忠雄建築研究所の安藤忠雄氏。感染症に立ち向かう研究施設として「宇宙船地球号」をイメージし、楕円形の平面をした建物を提案(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
安藤氏は式典のあいさつで冒頭の言葉を発し、参列した研究者や大学関係者らを激励した。同氏は21年12月に感染症センターの構想を発表した席上で、「国内外にアピールするにはインパクトがある建物にしなければならない」と発言していた。それが楕円形の平面をした宇宙船地球号であり、研究施設としてはかなり珍しい形を実現した。阪大は25年4月から施設の利用を開始した。
南側の建物正面から見た感染症センター。楕円形の平面をしたフロアを10層重ね、その上に大きな楕円形の屋根を架けた(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
竣工式典であいさつする安藤氏。1階にある大ホールを覆う外周のガラスカーテンウオールの足元まで植栽を巡らせ、内部のホールと外部の緑を連続して見せている(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
感染症センターは最先端の研究設備を導入した10階建ての施設だ。高さは約43.2m。延べ面積は約1万7700m2と、感染症の研究施設としては国内最大規模を誇る。
感染症センターのフロアマップ(出所:大阪大学、日本財団)
[画像のクリックで拡大表示]
構造は鉄筋コンクリート(RC)造。基礎免震構造を採用して地震による施設の揺れを抑え、研究者や研究設備の安全性を確保する。免震構造としたことで、10階建ての高層ビルでありながら内部の丸柱は細くできた。
1階のピロティと連続するように建物の周りに楕円形の平面をした植栽を整備(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
東側にあるエントランスの軒も外周に沿った楕円形の平面状だ(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
楕円形の平面をした建物とともに施設を特徴付けているのが、外壁全周を覆うアルミダイキャスト製の銀色をした水平ルーバーだ。合計100段ある。ルーバーを研究施設の目隠しとしながら、日射遮蔽にも役立てている。他にも省エネの仕組みを取り込み、感染症センターは基準1次エネルギー消費量から55%の削減を達成。延べ面積が1万m2以上の新築研究棟としては国立大学で初となる、ZEB Ready(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・レディー)認証を取得している。
東側から見た感染症センター。建物の外壁全周をアルミダイキャスト製の水平ルーバーで覆った(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
感染症センターは日本財団と全国モーターボート競走施行者協議会の助成の下、阪大が発注者となって建設した。基本計画は阪大と明豊ファシリティワークスが手掛け、設計は大成建設・日建設計特定建設工事JV(共同企業体)、施工は大成建設が担当した。感染症センターの構想発表から3年強で竣工にこぎ着けた。
式典ではエントランスホールでテープカットを実施した。中央が阪大の西尾章治郎総長、右隣が日本財団の笹川陽平会長、その隣が安藤氏だ。安藤氏らしいコンクリート打ち放しの内壁が目を引く(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
2層吹き抜けのエントランスホール。エントランスホールの周りに大ホールや会議室などを配置している。ガラスカーテンウオールで覆われたエントランスホールは内部が外から透けて見え、オープンな施設であることを印象付けている(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
21年は世界が新型コロナウイルス禍に見舞われ、感染症の恐ろしさを目の当たりにした直後だった。喫緊の課題である感染症対策を急ぐため、約18カ月の短工期で施設を完成させた。21年の発表時には建築費を約80億円としていたが、その後の資材高騰などでさらに膨らんだと見られる。それでも日本財団などの支援を受け、関係者は計画通りに完成させた。
安藤忠雄氏デザイン監修の阪大「感染症センター」竣工、楕円形平面建物は宇宙船地球号 | 日経クロステック(xTECH)
======================================================================================================================================
安藤忠雄氏が「宇宙船地球号」テーマの研究棟デザイン、日本財団・阪大感染症対策PJ
日本財団と大阪大学は2021年12月16日、「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」の一環として、阪大内に新築する感染症に関する研究棟のコンセプトデザインを発表した。デザイン監修は建築家の安藤忠...
2021/12/21