欧州連合で最も貧しい国のひとつ」だが…

米国が目指すのはハンガリー? 「理想的なモデル」とオルバンを絶賛

 
 

 

アトランティック(米国)ほか

 

 

 

 COURRiER Japon

米国の共和党議員らは、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相の統治を「理想的なモデル」だと賞賛する。

オルバン率いるハンガリーは、他国が羨むほどの重要な鉱物資源も軍隊も持っていない。にもかかわらず、米国の保守派はなぜ、彼に賞賛を送るのか?

ハンガリーは、かつて1970年代頃は東ヨーロッパで「最も幸福なバラック」と呼ばれ、工業で栄え、のちに中央ヨーロッパのなかで外国投資家が最も好む国にもなった。
 

しかし、現在は欧州連合で最も貧しい国のひとつに成り下がった。

首都ブダペストは表面的には近代化が進んでいる。街の中心部には豪華で派手なホテルや高級レストランもある。

だが、産業生産は低下しており、生産性は東ヨーロッパのなかでも最低水準に近い。失業率もじわじわと上昇している。人口減少も進んでおり、若くて優秀な人材が国外へ流出している。

人材流出の背景には、成長の鈍化、高インフレなどにより、専門職の給与が西ヨーロッパ諸国と比べて大幅に低いことや、公共サービスの質の低下、教育・医療の低下、また、政治腐敗と実力主義の欠如などがあると米誌「アトランティック」は報じている。

ハンガリーでは仕事の機会やビジネスの成功はスキルや実力ではなく、政府とのコネクションによることが多い。そのため、医師や学者など専門知識や技術を持つ人々は、より高い賃金、良好な労働環境、安定したキャリアパスを求めてドイツやオーストリア、オランダなどに移住しているという。
 

まずは自身に忠誠を誓う人物で政権を固める


オルバンは2010年の就任以来、独裁的な手法で権力を掌握し、民主的機関を弱体化させてきた。

彼は徐々に公務員を忠誠派に置き換え、忠誠心のある実業家を優遇することで国家主導の経済構造を作り上げてきた。

そして、経済的圧力と規制を利用して報道の自由を破壊し、大学の独立性を奪い、裁判制度を政治化し、選挙で有利になるように憲法を繰り返し改正した。事実、3年連続でEU最悪の汚職国と評価されている。

この汚職と縁故主義の結果、ハンガリーの経済は市場原理ではなく政治的忠誠に基づいて運営されるようになり、それが国の発展を妨げていると同誌は指摘する。

同誌によれば、ハンガリー経済の約20%が「市場原理や実力主義ではなく、忠誠心に基づくシステム」で運営されている可能性があるという。
 

また、ロシアや中国との関係を深めており、EU会議では公然とロシアの外交政策の代弁者を務め、中国からの不透明な投資も続いている。

ハンガリー政府は楽観的な経済予測を発信しており、たとえば、オルバンは2023年初頭の年次国情演説で「年末までにインフレ率は1桁台になるでしょう」と発言したが、同年の平均インフレ率は17%を超えた。2024年には4%の経済成長を予測したが、現実は0.6%だった。

だが、こうしたオルバン政権のレトリックと現実との矛盾については、報道は愚か、探究もほとんどされていないという。

この独裁的な「乗っ取り」こそが、米国の保守派が賞賛し、「まさにいま米国で実行しようとしていること」だと同誌は述べている。

実際、「米国第一主義」を掲げるドナルド・トランプ大統領は自身に忠誠を誓う人物で政権を固めた。FBIと司法省などの公務員も「汚職を起訴しない忠誠派」に置き換え、報道機関や大学への圧力もかけ始め、憲法改正の考えも浮上している。
 

多くの点で、ハンガリーは米国と大きく異なる。ハンガリーは「小さく、貧しく、(民族的に)均質的だ」と同誌は書く。

しかし、米国保守派がこのままオルバン政権の道をたどれば、権威主義だけでなく、ハンガリーと同じ腐敗と停滞、貧困も受け継ぐことになると専門家は警鐘を鳴らしている

 

 

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