万博に世界初のCFRP構造ドーム建築、坂茂氏が設計した「BLUE OCEAN DOME」

川又 英紀

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

万博に世界初のCFRP構造ドーム建築、坂茂氏が設計した「BLUE OCEAN DOME」 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

日本を代表する建築家とデザイナーがタッグを組むと、これほどインパクトがある施設と展示ができ上がるのか。そう思わせるパビリオンが大阪・関西万博の会場で完成した。

 NPO法人のゼリ・ジャパン(以下、ZERI JAPAN、東京・品川)は2025年3月27日、万博に出展する民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)」を報道陣に初公開した。「海の蘇生」をテーマにした、大阪・夢洲(ゆめしま)らしい海のパビリオンだ。

ZERI JAPANが出展する民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」。ZERIは「Zero Emissions Research and Initiative」の略(写真:日経クロステック)

ZERI JAPANが出展する民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」。ZERIは「Zero Emissions Research and Initiative」の略(写真:日経クロステック)

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 内覧会にはパビリオンを設計した建築家の坂茂氏と、総合プロデュース・展示企画を担当したグラフィックデザイナーの原研哉氏がそろって出席。建築と展示について説明した。

パビリオンは3つのドームで構成し、太陽工業の白い不燃膜材で覆っている。ドームの前には水盤が広がる(写真:ZERI JAPAN)

パビリオンは3つのドームで構成し、太陽工業の白い不燃膜材で覆っている。ドームの前には水盤が広がる(写真:ZERI JAPAN)

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BLUE OCEAN DOMEは会場の西ゲート近くにある。すぐ後ろはバンダイナムコグループ ガンダムプロジェクトのパビリオン「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」。奥に吉本興業ホールディングスのパビリオン「よしもとwaraii myraii館」やパソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE」が見える(写真:日経クロステック)

BLUE OCEAN DOMEは会場の西ゲート近くにある。すぐ後ろはバンダイナムコグループ ガンダムプロジェクトのパビリオン「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」。奥に吉本興業ホールディングスのパビリオン「よしもとwaraii myraii館」やパソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE」が見える(写真:日経クロステック)

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 パビリオンの建築的な特徴は、竹集成材、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics、炭素繊維強化プラスチック)、紙管をドームの構造躯体(くたい)にそれぞれ採用していることだ。坂氏は「万博はイノベーションを推進する場であり、新しい建築材料に挑戦した。パビリオンは半年後に解体するので、リサイクルを前提に設計すべきでもある。重厚な基礎を必要としない『強くて軽い建築』を目指した。竹、CFRP、紙はいずれもこの条件を満たす優れた素材だ」と言い、3つを順に紹介した。

上空から見たBLUE OCEAN DOME。左から順に「DOME A(循環)」「DOME B(海洋)」「DOME C(叡智、えいち)」。Aは竹集成材、BはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)、Cは紙管を構造体に用いた(写真:Hiroyuki Hirai)

上空から見たBLUE OCEAN DOME。左から順に「DOME A(循環)」「DOME B(海洋)」「DOME C(叡智、えいち)」。Aは竹集成材、BはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)、Cは紙管を構造体に用いた(写真:Hiroyuki Hirai)

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 パビリオンの設計は坂茂建築設計(東京・世田谷)、施工は大和ハウス工業が手掛けた。構造設計と設備設計はアラップが担当している。パビリオンの敷地面積は約3500m2、延べ面積は約2200m2、高さは中央の「DOME B」が約15mある。

 坂氏は内覧会の冒頭で、竹、CFRP、紙の特徴と過去の利用実績を説明した。会場は順路の最後になる「DOME C」で、坂氏が被災地支援の仮設建築などに活用することでも知られる紙管を使っているのが見える。

竹、CFRP、紙の特徴を説明する坂茂氏。この会場は順路の最後になるDOME Cで、坂氏のシグネチャーにもなっている紙管を構造体に使っている(写真:日経クロステック)

竹、CFRP、紙の特徴を説明する坂茂氏。この会場は順路の最後になるDOME Cで、坂氏のシグネチャーにもなっている紙管を構造体に使っている(写真:日経クロステック)

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紙管を構造体に使用したDOME Cの内観。ここでは海や水にまつわる専門家らのインタビュー映像を流す。講演会などのイベント開催場所にもなる。後方のカフェスペースでは「海と山の超純水」を販売(写真:ZERI JAPAN)

紙管を構造体に使用したDOME Cの内観。ここでは海や水にまつわる専門家らのインタビュー映像を流す。講演会などのイベント開催場所にもなる。後方のカフェスペースでは「海と山の超純水」を販売(写真:ZERI JAPAN)

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竹、CFRP、紙について説明した展示物はDOME Aにある(写真:日経クロステック)

竹、CFRP、紙について説明した展示物はDOME Aにある(写真:日経クロステック)

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DOME Cに用いた紙管。原紙は段ボール大手のレンゴーが生産したものを使用(写真:日経クロステック)

DOME Cに用いた紙管。原紙は段ボール大手のレンゴーが生産したものを使用(写真:日経クロステック)

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段ボールの材料となる板紙は主に回収古紙を原料としている。木に由来する自然素材だ(写真:日経クロステック)

段ボールの材料となる板紙は主に回収古紙を原料としている。木に由来する自然素材だ(写真:日経クロステック)

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 次に、竹集成材を構造体に使った「DOME A」を見ていく。来場者が最初に訪れるドームで、展示物は「水」そのものだ。

竹集成材を構造体に使ったDOME Aでは、水のインスタレーションを展示する(写真:日経クロステック)

竹集成材を構造体に使ったDOME Aでは、水のインスタレーションを展示する(写真:日経クロステック)

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ししおどしを模した「山頂の水源」から水が流れ出し、「超はっ水塗料」を塗った白い盤面を形を変えながら下っていく。見慣れているはずの水が玉のように転がったり、蛇のようににょろにょろと動いたりする様子に驚かされる。エンジニア集団のnomenaが制作協力した(写真:日経クロステック)

ししおどしを模した「山頂の水源」から水が流れ出し、「超はっ水塗料」を塗った白い盤面を形を変えながら下っていく。見慣れているはずの水が玉のように転がったり、蛇のようににょろにょろと動いたりする様子に驚かされる。エンジニア集団のnomenaが制作協力した(写真:日経クロステック)

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 坂氏は竹の魅力をこう語る。「竹は建築構造材として軽く強靭(きょうじん)耐久性がある。柔軟で加工もしやすく、曲線や複雑な形をした建築物の設計にも向いている。成長が早く、二酸化炭素(CO2)の吸収と酸素の放出の観点からは、木材よりもCO2の循環が早い。竹林は多種多様な生き物の生息地として生態系を支え、人にとってタケノコは食品にもなる。持続可能性と再生可能性に優れた素材だ」

 ただし、竹には弱点がある。直径や厚さがばらばらで、素材がふぞろいなことだ。直射日光に当たると割れてしまう性質もある。そこで竹を生のまま使うのではなく、集成材にして強度を安定させる技術を用いた。竹集成材の製造では竹田木材工業所(奈良県桜井市)と協業した。

竹集成材を挟み込むようにして構造体を形成(写真:日経クロステック)

竹集成材を挟み込むようにして構造体を形成(写真:日経クロステック)

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坂茂氏が大阪万博で「海のパビリオン」設計、竹と炭素繊維プラ、紙管を構造材に

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