ネットで小さな小屋を約113万円で買った男性は、それで人生が一変するとは思っていなかった(海外)

BUSINESS INSIDER JAPAN

パトリック・ハッチソン氏はクレイグリストで約11平方メートルの小屋を見つけ、数日後に実際に買った。その結果、キャリアが一変した。

 

 

 

 

空き巣被害に遭ったパトリック・ハッチソン氏は盗まれた物品の一部だけでも見つかるかもしれないと思い、クレイグリスト(Craigslist)を確認した。盗まれたものはなかったが、代わりに7500ドル(約112万5000円)で売りに出されている小さな小屋を見つけ、6年をかけてその小屋を改修した。それがきっかけとなって、ハッチソン氏はフルタイムのコピーライターから大工に転身した。 多くの人はマイホームの所有を人生のゴールとみなす。

 

 

  【全画像をみる】ネットで小さな小屋を約113万円で買った男性は、それで人生が一変するとは思っていなかった 

 

 

 

パトリック・ハッチソン氏もそうだった。ただし彼の場合は、自分の居場所がほしかったというよりも、むしろある何かに対して責任を負うことのほうが重要だと感じていて、この思いの自然な延長線上に家の所有という項目も含まれていた。 「だが、家を買うような余裕はまったくなかった」と、かつてシアトルでコピーライターとして働いていたハッチソン氏は、Business Insiderに語る。 自分にも実現できる選択肢を探す過程で、レッドフィン(Redfin)という不動産サイトでさまざまな条件の下で検索してみたが、見つかるものといえば森のなかの小屋ぐらいだった。 「結局、何か責任あることをするという考えはいったん忘れて、小屋を買うというアイデアにのめり込んでいった」そうだ。 しかし、小さな小屋といえども、値札の数字も小さいとは限らない。結局はいつもお金がネックとなった。

 

 そこでハッチソン氏は小屋というアイデアも忘れることにした──ところがある日、自宅に空き巣が入った。盗まれた所持品が売りに出されていないか、地域情報を扱う掲示板サイトのクレイグリスト(Craigslist)を確認していたところ、気がつけば出品されている小屋を眺めていた。 

 

 

「この場所が表示されて、

説明は『インデックスにある小さなキャビン』とあるだけで、価格は7500ドル(約112万5000円、1ドル=150円:以下同)だった」と

ハッチソン氏は言う。

 

 

見られたのは「半分がた放棄された建物の外観だけ」だったが、

ハッチソン氏は興味をそそられた。

 

 数日後にはすでに、彼はワシントン州の壮麗なカスケード山脈を背景に建つ、およそ3メートルかける3.7メートルの小屋のオーナーになっていた。

 

 

 そこからは予想外の展開となった。

小屋を修復したハッチソン氏は

コピーライターの仕事を捨てて、

フルタイムの大工となり、

 

去年には著書

『Cabin: Off the Grid Adventures with a Clueless Craftsman

(キャビン:無知な職人とのオフ・ザ・グリッドの冒険)』

を出したのだ。 

 

 

ひどいミスをしたり、

隣人の土地に間違えて納屋を建ててしまったりしたこともある。

 

以下、

最大の失敗から

最大の教訓にいたるまで、

 

ハッチソン氏の生活を一変することになった

人里離れた場所での冒険の一部を紹介しよう。

 

 

 

 

 

2013年、パトリック・ハッチソン氏はインターネットで小屋を見つけ、わずか6日後に7500ドルでそれ買った。

その小屋をクレイグリストで見つけたとき、ハッチソン氏は不動産に関しては初心者だった。 「以前に物件を買ったことがなかったので、内見、第三者預託、所有権調査などに関する知識がなかった。本来どのようなプロセスをへるべきなのかを知らないまま手を出してしまった」と彼は言う。 だが、経験のなさが役に立ったそうだ。おかげで迅速な決断が下せ、ためらうことなく小屋の修復に取りかかれた。 最初は値引き交渉をしようとしたが、ほかにも3人がその小屋に興味を示していることがわかった。この小屋は自分のものだ、と思い込んでいたハッチソン氏は焦り始め、値引きなしの値段で買うことに同意した。

 

 

 

 

初めのうちは小屋の内装と外装の数カ所を改修するだけでいいと考えていた。

 

この11平方メートルの小屋は、シアトルから北西に約80キロメートル離れたインデックスという名の小さな村に建っている。簡素な部屋がひとつあるだけで、電気も水道も通じていない。 ハッチソン氏はきちんとした設計図や詳細なスプレッドシートを準備してから修復作業を始めたわけではない。納屋、屋根付きのデッキ、私道など、手入れが明らかに必要な項目の大ざっぱなリストをつくっただけだ。 「計画はなかった」と彼は言う。実際の仕事は厳格な計画に沿って実行したのではなく、学びながら作業を続け、空間ができあがるにつれて上達していった。

 

 

 

 

しかし、作業を始めるやいなや、どれだけの修繕が必要か明らかになり始めた。

「建物のあるべき姿や防水の仕組みなどといった事柄について充分な知識がなかったので、この小屋の状態がどれほどひどいのか、正しく理解していなかった」とハッチソン氏は言う。 そのため、知識が増えるにつれて新たな問題が増えていった。作業は進んでいるのに、その都度一からやり直さなければならないかのような気がしたそうだ。 「迷路に入り込んでしまって。薪ストーブを設置する、などといったことをすると、それで解決できるのと同じぐらいの数の問題が新たに生じた」 ハッチソン氏はこの小屋でずっと暮らしていたわけではない。シアトルから週末にやってきて作業をした。多くの場合で、ヘルパーとして友人も連れてきた。旅行するために作業をストップさせたこともあったし、インデックスで起きた地滑りの影響でしばらくのあいだ小屋にたどり着けなくなったこともあった。 最終的には、改修するのに6年が費やされた。そこまで長くかかるとは、予想していなかった。 「ちょっと片付けたら終わりだろうと思っていた。小屋を頻繁に使うかどうかも、定かではなかった」とハッチソン氏は述べ、こう付け加えた。「私の前のオーナーと同じで、小屋を買ったものの、持て余してしまう可能性もあった」 だが、その逆のことが起こった

 

 

 

建築のさまざまな側面を学ぶために、YouTubeに頼った。

ハッチソン氏の建築に関する知識の多くは、幼いころに観ていたPBSのテレビ番組『This Old House』、そして最近ではYouTube動画からきているそうだ。 「熟練の職人が伝統的な家を修復するのを眺めるのは、ずっと前から大好きだった」と言い、小屋を改修するときにわからないことがあったら、そうした動画を大いに参考にしたと付け加えた。 しかし、小屋の建つ場所は携帯電話もWiFiも通じていなかったため、一筋縄ではいかなかった。 「動画を見て、ステップを覚えて、現地へ行って、覚えていることをやった。だが、インターネットがなかったので、すべての詳細を思い出すのは難しかった」

動画で使われている資材は、彼の小屋には適していないことも多かった。

しかし、それよりも厄介だったのは、その小屋の普通ではないつくりだった。 何時間も調査したにもかかわらず、チュートリアル動画で説明されている標準的なやり方が自分の小屋には合わないと結論するしかないことも多かった。 「床の根太(床を支える構造)を直す方法を覚えたのに、実際に目の前に建つ小屋は、そこで見たものとまったく異なっていた」とハッチソン氏は言う。「だから、創造力を働かせる必要があった」

期限はなかったため、自分のペースで作業を進めることができた。

家の建て方を学ぶことで、ハッチソン氏は完璧さが求められるこの世界で、自分らしくいられる自由を手に入れた。しかしそれよりも重要なのは、ミスをし、そこから学ぶ余裕を得たことだ。 「建築はシャワーを浴びながら歌うのと似ている」とハッチソン氏は言う。 制限がないため、どんな困難に遭遇しても、ストレスではなく好奇心をもって取り組むことができた。

 

 

 

 

 

改修工事が友人との絆を深めてくれたし、週末に都会での暮らしから離れて穏やかに過ごす機会も提供してくれた。

「数日間を森で過ごすのはいつも楽しかった」とハッチソン氏は言う。「友人や私にとって、落ち着ける小さな親密空間に集まる機会となった」 笑い、遊び、深く話し合う。小屋が絆を強めてくれた。 「たくさんの本当にすばらしい友情が、この場所でさらに深まった」とハッチソン氏は言う。

 

 

 

 

 

振り返ってみると、土地所有権の調査だけはやっておくべきだった。

ハッチソン氏は誤って隣人の土地に納屋を建ててしまった。このミスで8000ドル(約120万円)の出費となった。 最終的に隣人からその土地を買い取ったので、小屋よりも多くの代金をその土地に支払ったことになる。 土地所有権の調査を前もってしておけば、このミスは防げただろう

 

 

 

小屋の修復は楽しかったが、それでも時間とお金がかかった。

最大の出費は土地で、手数料も含めておよそ1万6000ドル(約240万円)を費やすことになった。それ以外に、建築資材の調達、計画、作業などに何百時間もかけた。 大きな出費のほかの例として、煙突用パイプに1000ドル(約15万円)がかかったし、数回にわたる砂利の敷設や安全のための木の伐採にもお金がかかった。合計すると、およそ2万5000ドル(約375万円)から3万ドル(約450万円)の出費になったと、ハッチソン氏は見積もっている。ここに自身の労働は含まれていない。 最終的に、ハッチソン氏は2021年にこの小屋を5万2000ドル(約780万円)で売り払ったのだが、利益は思ったほど大きくなかった。 「みんな、『すごい、7500ドルで買った小屋を5万2000ドルで売った』と考えるが」と、ハッチソン氏は語る。「私はふたつの区画にすべてをつぎ込んで、その両方を売ったことになる」 結局のところ、小屋で大金を手に入れることはできなかったが、人生は一変した。

小屋の本当の価値は自分を新たなキャリアに転向させてくれたこと、とハッチソン氏は語る。

ハッチソン氏にとって、キャリアをゼロからやり直すことは突然の決断ではなく、ゆっくりとした変化だった。 6年以上、ハッチソン氏、そして友人として改修に携わったブライアン・シャッツ氏は、フルタイムで小屋づくりをするキャリアについて話し合った。しかし、ハッチソン氏は経済的なリスクを恐れることなくやっていけると感じるまで、コピーライター業を続けた。 「別れはとてもゆっくりとしていた」とハッチソン氏は言うが、最終的には古いキャリアを離れ、大工として新しい道に飛び込むことができた。 最初の小屋を改修してから数年がたった2018年、ハッチソン氏とシャッツ氏はさらに大きな課題に挑むことにした。4分の1エーカーの土地を買って、そこに一から小屋を建てる。クレイグリストで買ったものを修繕するのではなく、インスタグラムで目にするような雪に覆われて夢のように美しい小屋を建てるのである。 現在、ハッチソン氏はシアトルに拠点を置くワイルド・ツリー・ウッドワークスというツリーハウス(Wild Tree Woodworks)を建てる会社で、フルタイムの大工として働いている。同氏とシャッツ氏は最近、最新のプロジェクトとして手がけた「サイクロプス・キャビン(Cyclops Cabin)」を売却した。そしてすでに次のプロジェクトに目を光らせている。 「すでにある建物を改修することになるか、新たに建てることになるか、今はまだわからない」とハッチソン氏は言い、こう付け加えた。「だが、今は建築こそが生きがいだ」

Priyanka Rajput

 

ネットで小さな小屋を約113万円で買った男性は、それで人生が一変するとは思っていなかった(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)