北海道新幹線の札幌延伸2038年度末に、大きく遅れる3つのトンネル工事
青野 昌行
日経クロステック/日経コンストラクション
北海道新幹線の札幌延伸2038年度末に、大きく遅れる3つのトンネル工事 | 日経クロステック(xTECH)
北海道新幹線の札幌延伸の開業時期が2038年度末になる見通しだと明らかになった。建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が24年5月、これまで目指してきた30年度末の開業は困難だと国土交通省に報告。同省が有識者会議で新たな開業時期の見通しを検討してきた。25年3月13日の会合で開業見通しを示した報告書案を示し、大筋で了承された。
羊蹄トンネル有島工区でシールド機による掘削の障害となっている岩塊を地上から撤去する作業の様子(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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整備を進めている新函館北斗から札幌までの延長212kmのうち約8割をトンネルが占める。トンネル区間では想定外の地質などで工事が難航。現在、羊蹄(ようてい)、渡島(おしま)、札樽(さっそん)の3トンネルでそれぞれ複数の工区に大きな遅れが生じており、鉄道・運輸機構が重点的に工程を管理している。
北海道新幹線延伸工事の進捗状況(出所:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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羊蹄トンネルでは度重なる岩塊の出現に悩まされている。同トンネルの比羅夫(ひらふ)工区(延長5569m)では、21年7月にシールド機が巨大な岩塊にぶつかり掘削を停止した。シールド機の後方から岩塊に至る迂回トンネルをNATMで掘削し、岩塊を砕いて撤去。2年以上の中断を経て23年11月、シールド機による掘削を再開した。
有島工区(延長4166m)では24年4月、直径2m程度の岩塊が見つかりシールド機による掘削を停止した。地上から直径2mの鋼製の筒を地盤に圧入する「オールケーシング工法」によって、筒の中から岩塊を撤去。同年11月18日に掘削を再開したものの、翌日に別の岩塊に遭遇した。
同様に岩塊を撤去して24年12月18日に掘削を始めたが、5日後にまた岩塊が見つかり掘削停止を余儀なくされた。さらに岩塊を撤去して掘削再開後、新たな岩塊で25年3月3日に4度目の停止。度重なる掘削中断で24年4月から約11mしか進んでいない。現在、新たな岩塊の撤去を進めている。
羊蹄トンネルの状況。2022年度に実施した弾性波探査でシールド機の掘進に影響を与える可能性のある岩塊を有島工区で5区間(A①~A⑤)、比羅夫工区で4区間(H①~H④)確認した。シールド機が4度停止したのはA①区間。その他、3区間の岩塊はシールド機が停止する恐れのある大きさなので、地上やたて坑などから事前に撤去する(出所:国土交通省)
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有島工区ではオールケーシング工法で調査した結果、シールド機の前方にある第2カシュンベツ川付近でも直径1.3m程度の岩塊を確認。川の真下にも岩塊が存在する可能性が高いと分かった。川の真下の岩塊は地上から撤去できないので、今後、川を切り回す。
羊蹄トンネルの工程見通し(出所:国土交通省)
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北海道新幹線の延伸工事で削孔不能、開業見通し一層不透明に
北海道新幹線の札幌延伸に向けたトンネル工事で、前方の地質を調査する長尺ボーリングにトラブルがあり、削孔が止まったことが分かった。今後掘削する箇所の地質情報を十分に得られず、工程の見通しを立てにくくな...
2024/09/26
渡島トンネルではNATMによる掘削が地質不良で難航している。前方の地質を把握するため、台場山工区(延長3500m)と南鶉工区(同3900m)でそれぞれ長尺ボーリングを24年6~7月に開始。しかし同年9月、いずれも軟弱な地盤による締め付けで、予定していた約500mに到達する前に削孔不能となった
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