大英博物館の改修コンペ決着、勝者は万博「バーレーン館」の設計者リナ・ゴットメ氏

星野 拓美

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

大英博物館の改修コンペ決着、勝者は万博「バーレーン館」の設計者リナ・ゴットメ氏 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

 

英国ロンドンにある大英博物館の大規模改修計画で設計を担当するのは、どの建築設計事務所になるのか──。世界が注目するビッグプロジェクトのコンペを勝ち抜いたのは、フランス・パリのLina Ghotmeh — Architecture(リナ・ゴットメ・アーキテクチャー、LGA)を代表とするチームだ。

 最終審査では60を超える応募から選ばれた5チームが顔を合わせた。LGAは、英国のDavid Chipperfield Architects(デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツ)やオランダのOMAなど、そうそうたる顔ぶれを抑えて勝利した。コンペは2024年5~12月にかけて開催され、大英博物館が最終結果を公表したのは25年2月21日のことだ。

フランスのLina Ghotmeh — Architecture(LGA)が大英博物館の大規模改修計画におけるコンペで提出したパース画像。2025年2月21日、同博物館がコンペ結果の発表とともに公開した(出所:Lina Ghotmeh — Architecture)

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 改修計画の対象は、博物館西側の「ウエスタンレンジ」と呼ばれる区画だ。区画の面積は約1万5650m2で、博物館全体の展示室とバックヤードの3分の1に相当する広さがある。この区画に収蔵されているのは、古代ギリシャや古代エジプト、ローマ、アッシリア、中東の貴重な物品の数々である。

 今回の改修は約300年の歴史を誇る大英博物館において、過去最大級といわれる規模になる。展示室をつくり直し、来訪者の鑑賞体験の向上を狙う。収蔵庫や研究施設も一新する方針だ。

上空から見た大英博物館。建物中央にガラス屋根で覆われたグレートコートがある。その西側(写真左手)一帯が大規模改修計画の対象となっている「ウエスタンレンジ」(写真:The Trustees of the British Museum)

上空から見た大英博物館。建物中央にガラス屋根で覆われたグレートコートがある。その西側(写真左手)一帯が大規模改修計画の対象となっている「ウエスタンレンジ」(写真:The Trustees of the British Museum)

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「ウエスタンレンジ」の展示室。古代ギリシャや古代エジプト、ローマ、アッシリア、中東の物品を収蔵している(写真:The Trustees of the British Museum)

「ウエスタンレンジ」の展示室。古代ギリシャや古代エジプト、ローマ、アッシリア、中東の物品を収蔵している(写真:The Trustees of the British Museum)

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審査員は「考古学的なアプローチ」を評価

 LGAは改修計画を遺跡の発掘調査になぞらえた。提案したのは、建物が歩んできた歴史の探究を通じて、未来の在り方を再構築するというビジョンだ。

 これに対し、コンペの審査員を務めた大英博物館のニコラス・カリナン館長は、「LGAが掲げる『考古学的なアプローチ』は、今回のプロジェクトを建築的な改修であると同時に知的な変革にしたいという我々の思いに応えている」と評価。審査員は満場一致でLGAに決定した。

 LGAを率いるリナ・ゴットメ氏は、「設計することが決まり、非常にわくわくしている。改修する区画を並外れた空間に変えていく」と意気込みを述べた。大英博物館はコンペ結果の発表に際し、LGAがコンペに提出したパース画像や模型を公開した。

LGAがコンペで提出したパース画像(出所:Lina Ghotmeh — Architecture)

LGAがコンペで提出したパース画像(出所:Lina Ghotmeh — Architecture)

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大英博物館の建物に関する歴史を調査し、その知見を基に自然素材の使用や持続可能性に配慮しながら展示室を構成する方針だ(出所:Lina Ghotmeh — Architecture)

大英博物館の建物に関する歴史を調査し、その知見を基に自然素材の使用や持続可能性に配慮しながら展示室を構成する方針だ(出所:Lina Ghotmeh — Architecture)

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LGAが提出した模型(写真:The Trustees of the British Museum)

LGAが提出した模型(写真:The Trustees of the British Museum