建設費高騰に列島震撼

サンプラザ再開発は事業費倍増、異次元の建設費高騰に悲鳴続出

小山 航

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

プロジェクトの見直しや延期、中止、工事入札の不調・不落──。異次元の建設費高騰が建築界を直撃している。東京都中野区の「中野サンプラザ」再開発では事業費が当初の2倍近くに膨れ上がった。

 高層階がオフィスの超高層ビルを、住宅主体のツインタワー案へ変更する──。中野サンプラザ跡地の再開発が、前代未聞の迷走劇を続けている。建設費高騰で事業費が当初の約2倍に膨張。計画の大幅変更を余儀なくされているのだ〔写真1〕。

〔写真1〕閉館した中野区のシンボル

〔写真1〕閉館した中野区のシンボル

当初計画では2024年度中に解体工事が始まる予定だった中野サンプラザ。中野区は、解体が遅れることで発生する建物の維持管理費の負担を施行予定者に求める考えだ。遅延を3年と仮定した場合の負担額は4億6000万円強に上る(写真:日経アーキテクチュア)

[画像のクリックで拡大表示]

 「妥協することなく、再開発をやって良かったと言われる内容にしたい」。東京都中野区の酒井直人区長は2025年2月6日の定例記者会見で事業への思いを語ったが、区の目玉事業の先行きは極めて不透明だ。

 この再開発は、中野サンプラザと旧中野区役所を解体し、オフィスやマンション、商業施設、多目的ホールなどを内包する複合施設を整備する大型プロジェクト。区は21年、野村不動産を代表とするグループを施行予定者に選定。同年には事業費1810億円を投じて28年度中の完成を目指す計画を発表していた。

 ところが、資材費や労務費などの高騰を受け、24年1月時点で事業費は2639億円に。同年9月には設計や施工を担う清水建設の見積もりで、さらに900億円増になると判明し、29年度中の竣工も難しくなった。このため、施行予定者が東京都への施行認可申請を24年10月に取り下げるという、異例の事態に陥った。

大幅変更で「ほぼ振り出し」

 苦境に立たされた施行予定者は事業を前に進めるべく、高層棟を1棟から2棟に変更する「ツインタワー案」を区に提案中だ〔図1〕。

〔図1〕事業費が当初の約2倍に上昇

〔図1〕事業費が当初の約2倍に上昇

野村不動産は高層棟を2つにする大幅な見直し案を示した。中野区議会建設委員会では、区が20年に施行予定者を公募した際の次点候補の案に「似ている」との指摘も相次いだ(出所:中野区の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 25年1月の区議会建設委員会で明らかになった変更案では、事業の採算性を見直すため、用途の床面積割合も変更した。住宅の比率を全体の4割から6割に拡大し、オフィスは4割から2割に縮小する。「価格転嫁や早期の資金回収がしにくいオフィスを減らし、住宅に変更したということだろう」(大手ゼネコン関係者)

 当初よりも高さを抑えたツインタワーにすることで、工事費を抑制し、工事の難度を下げる狙いもある。加えて、施工者の変更も検討する。

 ただし、一連の変更によって事業費をどの程度抑えられるかは不明だ。区まちづくり推進部中野駅周辺まちづくり課の小幡一隆課長は、「施設規模や費用削減の程度は今後の協議で詰める」とする。区は25年3月までに事業方針を示す予定だが、精査はとても間に合いそうにない。区は、「おそらくプロポーザルレベルの内容で判断することになる」とする

 

 

サンプラザ再開発は事業費倍増、異次元の建設費高騰に悲鳴続出 | 日経クロステック(xTECH)