三笘薫がまたもスーパープレーで3戦連続ゴール 未踏の領域、ストライカーへ変身か
杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
三笘薫がまたもスーパープレーで3戦連続ゴール 未踏の領域、ストライカーへ変身か
【後半は三笘vs菅原に】
三笘はイングランド代表歴があるカイル・ウォーカーピータースと対峙することになったが、やはり1対1の勝負を積極的に挑もうとしなかった。ソツのない動きでブライトンの好守に貢献したが、見せ場は作れずにいた。極めて静かにプレーした。
だが、相手はプレミアの最下位チーム。三笘のプレーの傾向は、何も問題にならなかった。ブライトンは前半23分にジョアン・ペドロが先制点を決めると、後半11分にはジョルジニオ・ルターが追加点を奪った。決定機は得点シーンの倍以上あったので、試合はまさにブライトンの一方的ペースとなった。
菅原がピッチに登場したのは後半の頭から。前半ベンチに座っていた選手のなかでは、スタメンに近い選手であることは、前戦に続いてこの早いタイミングでの出場に表われていた。そこまで悲観することはない感じだ
ポジションは通常どおり右のウイングバック。ベンチに下がったのはブラジル人の左ウイングバック、ウェリントンで、前半右ウイングバックを務めたカイル・ウォーカーピータースが左に回った。
三笘対菅原は後半開始から始まっていた。だが三笘は相変わらずだった。菅原に正面きって勝負を挑む機会はなかった。サイドアタッカーとしての魅力をアピールしたのはむしろ菅原のほうだった。
後半10分にはCBアーメル・ベリャ・コチャップ(ドイツ代表)の縦パスを高い位置で受けると、推進力を活かし前進。鋭い折り返しを入れる。後半16分にはイングランド期待の若手、タイラー・ディブリング(U-19イングランド代表)とのワンツーで右サイドを抜け出すと、トップスピードに乗り、大外から最深部めがけて猛然と斜めにきれ込んだ。わずかにドリブルが大きくCKに逃れられたが、むしろ最近の三笘にはないウイング然としたプレーだった。
しかしその10分後、三笘はやはり役者としての格の違い見せつけた。それまでなりを潜めていた三笘が、真打ち登場と言わんばかりの、恐るべきスーパープレーを前節に続いて見せつけたのだ。
左CBアダム・ウェブスター(元U-19イングランド代表)からグラウンダーの縦パスが1トップのジョアン・ペドロに収まる2、3秒前、三笘は鋭い読みで自軍の深い位置から駆け出していた。ジョアン・ペドロがポストプレーを決めたのはその直後。トップスピードに乗った三笘の鼻先に、差し出すようなパスを出した。
ハーフウェイラインをわずかに超えた地点からゴールまでの距離はおよそ50メートルだ。その長い道のりを単独で駆け抜け、約6秒後にGKと1対1になるや余裕でゴールを決めた。
最後の直線を鮮やかに差し切る競走馬のような、胸の透く爽快なアクションだった。ランニングフォームは意外にも大股で、グイグイと加速する。だが身体のバランスは乱れない。背後から相手のCBジェームズ・ブリーに首根っこを捕まれるも、フォームが安定しているので、ボールタッチに乱れはない。正確無比なボールコントロールは最後まで維持された。シュートがまたクールだった。ふわりとボールを浮かす余裕を残していた。
50メートルほどをトップスピードでドリブルしたうえで、あそこまで沈着冷静なシュートを打てる選手も珍しい。前節もすごかったが、今節もすごかった。前節のチェルシー戦のゴールは、日本人の欧州組がこれまで挙げた一番のゴールだった。とすれば、サウサンプトン戦で挙げたこのゴールは二番目に当たる。
ウインガー三笘はストライカー三笘に変身するのか。見たことのない世界へ向かっていることは間違いない。どこへ行く三笘、とは正直な感想である。
試合はブライトンが4-0で勝利。順位はひとつ上がり、チャンピオンズリーグ園内まで4ポイント差の9位となった
ショートハイライト|サウサンプトン v ブライトン 】プレミアリーグ24/25 第26節
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