大手建設会社に好待遇化の波

筒井 爽人

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

 

大手建設会社に好待遇化の波 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

転勤を敬遠する社員の離職を食い止めるため、大手建設会社が手当を大幅に引き上げている。社員の意欲向上を狙った手当や制度を拡充する会社も増えており、人材をつかんで離さないよう魅力ある好待遇で求心力を強めている。

 大成建設は2025年度、社員の転勤に伴う手当類を大幅に引き上げる(資料1)。これまで会社が負担してきた引っ越し費用などに加え、一時金として最大100万円を支給する。さらに、勤務地の範囲の選択制度の導入や、定年年齢の引き上げなど人事制度を変更する。人材の獲得競争が激しい建設業界だけでなく、他業界を含めても高い水準の待遇といえる。

 

 

 

 

資料1■ 大成建設の人事制度改革

 

 

 

(出所:大成建設の資料を基に日経クロステックが作成、写真:日経クロステック)

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 規模の大きな建設会社では全国各地の現場への転勤は必須だが、近年では転勤を理由とした退職者が増えているという。

 

 

 

 大成建設は24年に策定した3カ年の中期経営計画に基づき、人的資本投資を大幅に拡充。人事制度改革として複数の施策を実施する。その1つとして新設したのが転勤手当だ。帯同する家族の有無などに応じて金額が決まる。

 

 

 

 単身赴任者への別居手当も手厚くする。これまで毎月、3万円に帰省費用2回分の金額を上乗せして支給していた。新制度では、5万円に帰省費用3回分の金額を上乗せするよう変更する。帰省費用に設けていた10万円の上限も撤廃する。

 

 

 勤務地域を選択できる制度も設ける。全国各地への転勤を伴う「全国型」か、全国を10に分けたブロック内で勤務する「エリア型」かを、入社してからでも変更可能にする。さらに、育児や介護などの事情がある場合、最大5年間転勤を回避できる制度を新設する。

 

 

 

 大成建設人事部人事制度改革プロジェクト室の三浦哲郎室長は「勤務する事業所は固定できないので、ある程度の転勤はやむを得ない。ただ、少しでも転勤の負担を軽減したいと考えた」と話す。

 

 

 

 同社はその他、初任給の引き上げや継続的な賃上げにも取り組んでいる。全国転勤を伴う総合職では、大卒初任給を25年4月に28万円から30万円に引き上げる。新しい給与制度や勤務地の選択制度は25年の定期昇給のタイミングなどに導入する予定だ