CLTで囲む円形の万博「日本館」を初公開、バイオプラントの水盤や藻類のハローキティ

川又 英紀

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

CLTで囲む円形の万博「日本館」を初公開、バイオプラントの水盤や藻類のハローキティ | 日経クロステック(xTECH)

 

 

大阪・関西万博で開催国の日本政府(経済産業省)が出展するパビリオン「日本館」は、敷地面積が約1万3000m2と全パビリオンの中で最も大きい。2025年1月26日、日本館の内部が初めて報道陣に公開された。展示は意外性に満ちており、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」がいたかと思えば、「火星の石」も展示される。日本館は25年1月13日から観覧予約の抽選申し込み受付が始まっている。

藻類(そうるい)に扮(ふん)した「ハローキティ」の展示(写真:日経クロステック、サンリオ)

藻類(そうるい)に扮(ふん)した「ハローキティ」の展示(写真:日経クロステック、サンリオ)

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万博の目玉になりそうな世界最大級の「火星の石」。この石は火星を飛び出した後、数万年前に地球に到達した隕石と考えられている。大きさはラグビーボールほど。写真の石はダミーで、開幕時に本物を展示する(写真:日経クロステック)

万博の目玉になりそうな世界最大級の「火星の石」。この石は火星を飛び出した後、数万年前に地球に到達した隕石と考えられている。大きさはラグビーボールほど。写真の石はダミーで、開幕時に本物を展示する(写真:日経クロステック)

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 内部を見る前に、日本館のテーマである「循環」を表現したパビリオン建築を見学したい。最大の特徴は、円形に配置するCLT(直交集成板)パネルの内外壁だ。合計560枚のCLTパネルは耐力壁として機能する。CLTの使用量は全体で約1600m3

「日本館」の外観。外壁として、国産スギ材のCLT(直交集成板)パネルを円形に並べている。手前は日本館のアテンダントが着るユニホームで、リサイクルしやすい単一素材で着物のように仕立てた(写真:日経クロステック)

「日本館」の外観。外壁として、国産スギ材のCLT(直交集成板)パネルを円形に並べている。手前は日本館のアテンダントが着るユニホームで、リサイクルしやすい単一素材で着物のように仕立てた(写真:日経クロステック)

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 パビリオンの設計を手掛ける日建設計は、循環のテーマを円形の建物で示した。展示を見ながら円形の建物を巡ることで、来館者には体で循環のイメージを感じてもらう。

建物の外周にCLTを現しのまま並べた。砦(とりで)のようにも見える2階建てのパビリオンの高さは約13m。CLTの壁は2枚のパネルで鉄骨フレームを挟み込んでいる。パネルの足元に見える黄色いものは施工中の照明で、夜間はCLTを下から照らす(写真:日経クロステック)

建物の外周にCLTを現しのまま並べた。砦(とりで)のようにも見える2階建てのパビリオンの高さは約13m。CLTの壁は2枚のパネルで鉄骨フレームを挟み込んでいる。パネルの足元に見える黄色いものは施工中の照明で、夜間はCLTを下から照らす(写真:日経クロステック)

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日本館の完成イメージ。パビリオンの直径は約80m、円周は約250m(出所:経済産業省)

日本館の完成イメージ。パビリオンの直径は約80m、円周は約250m(出所:経済産業省)

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上空から見た日本館のイメージ。円形の平面で「循環」を表現した(出所:経済産業省)

上空から見た日本館のイメージ。円形の平面で「循環」を表現した(出所:経済産業省)

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 CLTを多用したのは、木がサステナブルな素材だからだ。万博のシンボルである大屋根(リング)も木造である。海外パビリオンにも木材を使う国・地域が多く見られる。大屋根の中心には本物の草木を植えた「静けさの森」ができる。

 25年4月13日の開幕まで70日を切り、会場のあちこちでパビリオンの姿を確認できるようになった。今回は人工島の夢洲(ゆめしま)で開催される海の万博であると同時に、「木の万博」でもあることに気付かされる。

自国のCLTとボヘミアンガラス全面採用、高難度の万博「チェコ館」は大末建設が施工

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2025/01/23

 国産スギ材で製作したCLTパネルは、再利用しやすい四角形をしている。2枚のパネルで鉄骨を挟んだものを「1ユニット」とし、それをずらしながら円形に配置した。ユニットとユニットの間にガラスをはめ込んでいるところもある。

円環状の屋外回廊を歩いて、中央部の建物に向かう。一番高い位置に見えるCLTのユニットは間にガラスをはめ込み、内外を見通せるようにした(写真:日経クロステック)

円環状の屋外回廊を歩いて、中央部の建物に向かう。一番高い位置に見えるCLTのユニットは間にガラスをはめ込み、内外を見通せるようにした(写真:日経クロステック)

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24年11月時点の日本館。閉幕後に再利用しやすいように四角形のCLTパネルを使い、パネルをずらしながら円形に配置しているのが分かる。施工は清水建設が担当(写真:日経クロステック)

24年11月時点の日本館。閉幕後に再利用しやすいように四角形のCLTパネルを使い、パネルをずらしながら円形に配置しているのが分かる。施工は清水建設が担当(写真:日経クロステック)

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 日本館には大きく3つのエリアがある。「Plant Area(プラントエリア)」「Farm Area(ファームエリア)」「Factory Area(ファクトリーエリア)」である。内覧会ではプラントエリアとファームエリアが先行公開された。

日本館の魅力を語る黒田紀幸館長。「Plant Area(プラントエリア)」「Farm Area(ファームエリア)」「Factory Area(ファクトリーエリア)」の3つを紹介(写真:日経クロステック)

日本館の魅力を語る黒田紀幸館長。「Plant Area(プラントエリア)」「Farm Area(ファームエリア)」「Factory Area(ファクトリーエリア)」の3つを紹介(写真:日経クロステック)

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 火星の石があるのはプラントエリアだ。石は宇宙規模での循環を象徴している。石が展示される部屋は、建物の中心に設ける円形の「水盤」がある屋外空間に面している。

 実はCLTに囲まれた円形の空間にたたずむ水盤こそ、日本館の真の目玉といえそうだ。木と水と石を用いた箱庭のような静かな場所である。円形の水盤(池)は迎賓館や静けさの森にもできる。大屋根や大催事場「シャインハット」の屋根も円形だ。円は大阪・関西万博のアイコンでもある。

建物の中心に設ける水盤。円形に建てたCLTの壁に囲まれた屋外空間の中央に、直径19mの水盤を配置する。水深は約10cm(写真:日経クロステック)

建物の中心に設ける水盤。円形に建てたCLTの壁に囲まれた屋外空間の中央に、直径19mの水盤を配置する。水深は約10cm(写真:日経クロステック)

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 注目すべきは、水盤に生ごみから取り出した水を使うことだ。内覧会ではまだ水が張られていなかったが、開幕すると水盤は「微生物が生ごみを分解し、プラントで浄化した水」で満たされる。「ごみから水へ」がプラントエリアのキーワードになっている。

水盤にはパビリオン内で微生物が生ごみを分解して生成する水を浄化して使う。水盤の中には入れない(写真:日経クロステック)

水盤にはパビリオン内で微生物が生ごみを分解して生成する水を浄化して使う。水盤の中には入れない(写真:日経クロステック