複合災害」初会合で定義、国土交通省検討会が25年3月までに対策まとめ
佐藤 斗夢
日経クロステック/日経コンストラクション
「複合災害」初会合で定義、国土交通省検討会が25年3月までに対策まとめ | 日経クロステック(xTECH)
国土交通省は、石川県能登半島で2024年に地震と豪雨で甚大な被害が生じたことを教訓に「複合災害」の対策強化に向けた検討を始めた。有識者による検討会の初会合を25年1月14日に開き、複合災害の発生シナリオの共有や検討する際の論点を整理した。25年3月までに対策の方向性をまとめ、同省の施策に反映する方針だ。
能登半島地震後の豪雨によって、石川県珠洲市大谷地区で生じた土砂災害。地震で緩んだ箇所が再崩壊したと見られる(写真:門寺建設)
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検討会の正式名称は、「能登半島での地震・大雨を踏まえた水害・土砂災害対策検討会」。複合災害について、「先発の自然災害の影響が残っている状態で、後発の自然災害が発生することで、単発の災害に比べて被害が拡大する」現象と定義した。 南海トラフ巨大地震などの発生が想定される中、気候変動による水害・土砂災害の発生頻度が高まり、複合災害の発生が増えると見込まれる。国交省はその被害を減らすために検討会を立ち上げた。
初会合では、24年に能登半島で発生した複合災害での被害状況などを踏まえ、後発の災害に備えた発災後の対応や、土砂・流木対策の強化に向け、検討すべきことを提示。事務局が作成した複合災害の発生シナリオも参考にしながら、有識者委員らが意見を交わした。
塚田川は優先度低く未対策
複合災害の発生シナリオとしては、地震による斜面崩壊で河道に堆積したり斜面に残ったりした土砂や流木が、後発の大雨によって流下し、橋などの構造物でせき止められて水があふれ出るといった想定がまとめられた。シナリオでは後発の大雨による被害拡大につながる恐れがあるため、地震による河道閉塞の有無や下流の河床勾配などを留意すべきポイントとして挙げた。
能登半島では、こうした想定に近い被害が生じた。例えば、輪島市を流れる塚田川流域の山間部では地震による斜面崩壊が多数発生し、河道内に流木や土砂が堆積していた。これらが大雨によって大量に流出。河道が土砂で埋まったり、流木が橋にせき止められたりしたことで流路に変化が生じ、家屋消失などを招いた。
塚田川流域で土砂が堆積していた箇所。河道が埋まった結果、ショートカットするように主流路が形成された(写真:日経クロステック)
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塚田川流域の被災状況。家屋が消失していた(写真:日経クロステック)
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国交省砂防部の担当者によると、塚田川流域では河道閉塞(土砂ダム)による湛水(たんすい)池が形成されていなかったことに加え、土砂移動域の面積率が他の一部河川の流域よりも低く、優先して対処すべき箇所とは見なしていなかったという。そのため、地震後から大雨に至るまで、応急対策工事は実施されていなかった