京都・相国寺隣の高級ホテル建設巡り住民が提訴、市による特例許可の取り消し請求

木下 順平

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

京都・相国寺隣の高級ホテル建設巡り住民が提訴、市による特例許可の取り消し請求 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

 

京都市上京区にある古刹・相国寺の隣接地に高級ホテルを建設する「京都相国寺門前町計画」によって、良好な住環境が害される恐れがある──。交通量の増加などを懸念する周辺住民ら33人は2024年12月10日、京都市を相手取り、市が建築基準法48条のただし書きに基づき下した特例許可の取り消しを求めて京都地方裁判所に提訴した。

 

 

 

2022年に「上質宿泊施設」の候補に選定された時点の「京都相国寺門前町計画」の完成イメージ。三菱地所が事業者として延べ面積約2万550m<sup>2</sup>、客室数135室の高級ホテルを建設する計画だ(出所:京都市)

2022年に「上質宿泊施設」の候補に選定された時点の「京都相国寺門前町計画」の完成イメージ。三菱地所が事業者として延べ面積約2万550m2、客室数135室の高級ホテルを建設する計画だ(出所:京都市)

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 訴状によると、京都相国寺門前町計画は、相国寺北側に隣接する学校跡地の約1万2200m2に、三菱地所が延べ面積約2万550m2、客室数135室の高級ホテルを建設する内容。ホテルはローズウッドホテルグループが運営する予定だ。

 

 

 

 一帯は第2種中高層住居専用地域で、建基法に基づき宿泊施設の建設は原則禁止されているが、良好な住居の環境を害する恐れがないか、公益上やむを得ないと特定行政庁が認めた場合に建設が可能となる。訴状によると、同計画は京都市の「上質宿泊施設誘致制度」に基づき建基法48条のただし書きの適用を受け、23年3月に特例許可を受けた。

 

 

 

 訴状によると、原告側は敷地周辺の道路状況を踏まえ、同計画が良好な住環境を害する恐れがあると主張している。敷地北側の下之町通の幅は4.1m、側溝を除くと3.87mで、ホテルのアプローチとしては狭く、付近の小中学校の通学時間帯は車両が通行禁止となる。さらに、敷地北側の居住地一帯は幅4~6mの狭小道路ばかりだが、抜け道として利用される懸念があるとし、計画が「交通上の支障をもたらすことは明白」と訴える。

 

 

 

 

予定地は相国寺北側の学校跡地。第2種中高層住居専用地域に当たり、周囲は幅4~6mの狭い道路がひしめく(出所:京都市)

予定地は相国寺北側の学校跡地。第2種中高層住居専用地域に当たり、周囲は幅4~6mの狭い道路がひしめく(出所:京都市)

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「京都相国寺門前町計画」の敷地を北側から見る。手前の道路が下之町通(写真:池谷 和浩)

「京都相国寺門前町計画」の敷地を北側から見る。手前の道路が下之町通(写真:池谷 和浩)

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 原告側は、特例許可に至るまでの手続きも問題視している。許可に先立って行われた建築審査会では、交通の支障の改善策として、相国寺の敷地内をホテルの関係車両が通れるようにする案が委員から上がったが、市は実現が難しいと説明した。

 

 

 

 審査会は建築計画での対応は困難と判断。共同物流により通行車両を減らすなどのソフト面での対策を事業者に求めた上で、市が履行状況を確認し、不十分な場合は指導や許可の取り消しを行うことなどを覚書として交わすことを条件に、特例許可に同意した。

 

 

 

 原告側は、建築計画上の問題をソフト面で補うという考え方はそもそも建基法の趣旨に反しており、審査会で考慮してはならないものであると指摘する。また、覚書の内容も明らかになっておらず、それを頼りに同意の結論を出したことは不合理な判断だと訴える。