押し寄せる観光客に悲鳴 渋滞や家賃高騰で住民反発 欧州
サグラダ・ファミリア教会の前を行き交う観光客=2024年7月、スペイン・バルセロナ(AFP時事)
【ロンドン時事】
欧州各地の観光都市が旅行者急増によるオーバーツーリズム(観光公害)に悲鳴を上げている。
【写真】オーバーツーリズム(観光公害)への抗議デモに参加する人々
コロナ禍明けの旺盛な旅行需要を背景に、
格安航空会社(LCC)や
大型クルーズ船の利用客が押し寄せ、
街の混雑や
交通渋滞、
物価高などが
深刻化。
日々の暮らしを脅かされた地元住民の反発は大きい。
「観光客は帰れ!」。
世界遺産のサグラダ・ファミリア教会で知られるスペイン北東部のバルセロナでは昨夏、住民による「反観光」デモが相次いだ。
数千人の参加者はシュプレヒコールを上げながら
街中を行進し、
旅行者に向けて水鉄砲を撃つなどした。
怒りの最大の要因は住宅費高騰だ。
観光客向けの短期賃貸物件が増えたことで住宅需給が逼迫(ひっぱく)し、
家賃は過去10年で7割近く上昇。
市は2029年までに観光客への短期貸し出しを禁じ、
約1万戸の住宅を確保する計画だが
、即効性のある対策を打ち出せていない。
イタリア北部の「水の都」ベネチアは24年4月、
日帰り観光客に5ユーロ(約810円)の「入場料」を課す試みを始めた。
25年は適用日数を前年の29日から54日に拡大する方針。
団体客を25人以下に制限する措置も導入しており
、観光公害などによる世界遺産の「危機リスト」入りを回避しようと
躍起になっている。
オランダの首都アムステルダムは
コロナ禍後、
観光客数の上限を年2000万人に設定。
観光税引き上げや
クルーズ船の受け入れ制限、
ホテルの新規建設禁止と
いった対策を講じたものの、
観光客の流入は止まらない。
酒や
大麻で
高揚した若いグループ客の
迷惑行為も、
住民の怒りの火に油を注ぐ。
ただ、観光業は各都市にとって
投資や
雇用を生み出す経済の柱だ。
欧州各国の観光当局で構成する欧州旅行委員会(ETC)によると、
24年の観光業による
経済効果は
欧州全体で2兆4000億ユーロ(約389兆円)に上る見通し。
経済面の恩恵を受けつつ、
住民生活を守るため、
ETCは
「オフシーズンの旅行や、
あまり知られていない観光地への訪問」を
促す施策が必要だとしている
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