東京・下町の軟弱地盤に10階建て免震ビル、斜め柱のRC架構がオフィスの「顔」
中東 壮史
日経クロステック/日経アーキテクチュア
東京都台東区の下町に、このかいわいではひときわ背の高いガラス張りのビルが誕生した。鉄筋コンクリート(RC)の斜め柱が露出した外観の賃貸ビル「御徒町のオフィスビル」である。2024年12月末の竣工を目前に控えた同年12月6日と同月7日に、設計を手掛けたMMAAA(東京・世田谷)が内覧会を開いた。
MMAAAが設計した「御徒町のオフィスビル」(写真:日経クロステック)
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敷地は、東京メトロの仲御徒町駅と都営地下鉄大江戸線の新御徒町駅の中間に位置する。どちらの駅からも徒歩5分ほどで、下町の風情が残る住宅街の一角に立つ。
敷地面積は約460m2で、延べ面積は約1630m2。RC造に基礎免震構造を採用した地上10階建ての建物で、構造設計は金箱構造設計事務所(東京・品川)、施工はナカノフドー建設が担当した。事業者はデベロッパーのTPM(東京・中央)だ。
MMAAAを共同主宰する本橋良介氏は特徴的な外観について、「敷地は大通りから奥まった場所にある。事業者から賃貸オフィスビルとしての『顔』を街に見せたいという要望があった。そこで建物を高くし、RC架構を見せて外観にインパクトを与えた」と説明する。
用途地域は商業地域で、高度地区の指定はない。建物の高さは、北側の前面道路から受ける道路斜線制限を緩和するため、東西の隣地境界線から外壁面を5mずつセットバックして天空率を活用。建物のボリュームを幅約13m×奥行き約15m×高さ約44mの直方体とした。周囲の建物より高さが頭一つ抜けている。上部フロアから周囲の街並みを見渡せ、東京スカイツリーも見える。
ビルの模型。左右の隣地境界線から5mずつセットバックして建物を配置した(写真:日経クロステック)
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周囲の建物より高さが頭一つ抜けている(写真:日経クロステック)
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屋上からの眺め(写真:日経クロステック)
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地上2~10階がオフィスフロアで、コアは南側に集約した。北側の執務スペースはRCの斜め柱とワッフルスラブでスパンを飛ばし、幅約13m×奥行き約12mの無柱空間を確保している。建物を隣地からセットバックしたので、執務スペースの大半は延焼ラインにかからない。架構に合わせて大きな開口部を設けられた。
10階の内観。執務スペースは幅約13m×奥行き約12mの無柱空間。天井高は梁(はり)下3mを基本とし、6階が2.95m、10階が3.3mある(写真:日経クロステック)
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建設現場に実大モックアップをつくり、納まりを確認(写真:MMAAA)
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敷地周辺は地盤が悪く、掘るとすぐに水が出る。そこで基礎には免震装置を取り付けた。免震構造の採用で上部構造の躯体(くたい)を軽くでき、杭の長さも短くできた。事業者はテナントに対し、耐震性の高さを強く打ち出せる。賃料は非公開だが、内覧会の時点では全9フロアのうち既に5フロアの入居者が決まっていた。
基礎に設けた免震装置(写真:日経クロステック)
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一般図(出所:MMAAA