シャボン玉」のような軽さを
目指す
万博スイス館、
異なる素材の膜を使い分け
奥山 晃平
日経クロステック/日経アーキテクチュア
過去に開催されたほぼ全ての国際博覧会に出展してきたスイスは、大阪・関西万博で同国が建設してきたパビリオンの中で「最も軽い建物」を目指している。会場には、「シャボン玉」のような透明な球体が建物にはめ込まれたパビリオンが姿を現し始めた。参加する国・地域が独自に整備する「タイプA」の中で建設が順調に進む海外パビリオンの1つだ。今後は建物手前の地上部にも、シャボン玉のような球体を4つ設置する。
建設中の海外パビリオン「スイス・パビリオン」。オフィスがある4階に透明な球体が見える(写真:日経クロステック)
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敷地面積は877m2、延べ面積は899m2。構造は鉄骨造。4階建てのオフィスと平屋の展示エリアから成る。球体はオフィスエリアに1つ、展示エリアに合計4つ設ける。最も大きい球体は直径12mほどだ。球体の中に入ることができる。
パビリオンの基本設計はスイス・バーゼルを拠点とする建築設計事務所マニュエル・ヘルツ・アーキテクツが、実施設計(展示)はスイス・チューリヒの展示デザイン会社ベルプラット・アソシエイツが手掛ける。他にランドスケープデザインを、同じくチューリヒで活躍するランドスケープアーキテクトのロビン・ウィノグロンドが担当する。設計チームは自国のメンバーで固めた。
万博パビリオンを数多く手掛けてきたスイスの建設会社NUSSLI(ニュスリ)が総合建設を請け負い、パビリオン建設を統括する。さらに日本の建設パートナーとして、鉄建建設が施工を担当している。2024年3月に着工し、25年3月31日の竣工を予定している。
スイス・パビリオンの完成イメージ。地上に5つの球体があるように見えるが、実際は全部で4つ。2つを重ねて1つの球体と見なしているものがある(出所:FDFA, Presence Switzerland)
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「緑に覆われた、できるだけ軽い建物をつくることで、自然とイノベーションの融合を目指した」。NUSSLI Japan Branchシニアプロジェクトマネージャーのフランツ・シャウヴェルビュー氏は、建物のコンセプトについてこう語る。
米国の建築家であるバックミンスター・フラーはかつて英国の建築家ノーマン・フォスターに、「あなたの建物の重さはどれくらいか」と問いかけた。「スイス・パビリオンはフラーの問いにインスパイアされた」とシャウヴェルビュー氏は話す。材料が軽いほど、輸送燃料は少なくて済む。スイス・パビリオンは必要最小限の資材で建物をつくるという、環境配慮が反映されている。
NUSSLI Japan Branchシニアプロジェクトマネージャーのフランツ・シャウヴェルビュー氏(写真:日経クロステック