ロシア・ウクライナの天然ガス通過契約が今月末に失効か 

 

欧州と世界で価格上昇の恐れ

 
 
 

 

産経新聞
 
 
 
 
 

ロシアから欧州への天然ガスパイプライン

 

 

 

 

ロシアがウクライナ経由で天然ガスを欧州に輸出するための両国間の通過契約が今月末、失効期限を迎える。現時点で両国が延長交渉をしているとの情報はなく、契約は失効する公算が大きい。契約が失効してこのルートでの輸送がなくなると、欧州でのガス価格が上昇し、ひいては世界のガス市場にも影響する可能性がある。

 

 

 

 

  【写真】ウクライナとの国境地帯のロシア西部クルスク州スジャ周辺にある欧州向けガスパイプライン 

 

 

 

■侵略開始後も続いてきた通過料の支払い

 

 ロシアは長年、旧ソ連時代から存在するウクライナ経由のパイプラインを通じて欧州にガスを輸出。輸出に際して両国はガス通過に関する契約を結んできた。 両国は2019年末、難航した協議の末に5年間の契約延長で合意。供給量は年平均450億立方メートルで、露紙ベドモスチによると、ロシアはウクライナに年約12億5千万ドル(約1880億円)を支払うとされた。この支払いはロシアがウクライナ侵略を開始した22年2月以降も続いていた。 ただ、ウクライナは今月末の契約期限切れに先立ち、「契約延長には応じない」と表明。契約が失効すればウクライナは貴重な外貨獲得源の一つを失う形となるが、ロシアの戦費に転じるガス輸出収益を減らすことを優先したとの見方が強い。 

 

 

一方、プーチン露大統領は今年秋以降、

「ロシアは契約延長を拒否しない」としつつ

「ウクライナが延長を望んでいない」と指摘。

 

契約失効で

欧州向け露産ガス供給が減少するとした上で

「それは彼ら(ウクライナと欧州)の選択だ」と述べた。

 

 

 

プーチン氏は、

 

 

ウクライナ経由とは別のトルコ経由のパイプライン「トルコストリーム」などを通じて欧州への供給継続は可能だとの考えも示している。 

 

 

 

■トルコ経由増やしても全体量は減少か 

 

ロシアと欧州の間には複数のガスパイプラインが存在するが、現在も稼働中のものは限られている。バルト海底経由でロシアとドイツを結ぶ「ノルドストリーム」と「ノルドストリーム2」は22年9月に何者かの爆破工作を受け、計4本のパイプラインのうち3本が破損。残る1本もドイツが稼働を認めていない。

 

 

ポーランド経由のパイプラインに関しても、

ウクライナ侵略後にポーランドがロシアとの契約を解除した。 

 

 

仮にロシアとウクライナの契約が失効し、

 

トルコ経由での露産ガスの供給が増えた場合でも、

 

全体的なガス供給量の減少や輸送ルートの長距離化などによりガス価格の上昇は避けられないとの観測が強い。

 

実際、既に欧州市場では契約失効を見越し、

ガス価格の上昇が続いている

 

 

欧州向けガス輸出の決済を担ってきた露国営ガスプロム銀行を米国が先月に金融制裁対象に加えたことも市場に緊張感をもたらしている。制裁が発効する今月21日以降、ウクライナやトルコ経由で露産ガスを購入してきた中東欧諸国の決済が滞り、ロシアがガス供給を停止する可能性がある。

 

 

 

 

欧州連合(EU)は

 

ウクライナ侵略後、

 

一時は

 

需要の40%以上を依存していた露産ガスの輸入を

減らしているが、

 

 

現在も10%以上をロシアに依存している。

 

欧州でガス不足が起きれば

世界にも余波が広がりそうだ。

 

(小野田雄一

 

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