広島市の陥没事故、シールド機がねじれて持ち上がる異常な挙動

夏目 貴之

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

広島市の陥没事故、シールド機がねじれて持ち上がる異常な挙動 | 日経クロステック(xTECH)

 

 

 

 

広島市で2024年9月、シールドトンネル工事中に起こった陥没事故について、市は原因究明に向けた事故調査委員会の初会合を24年11月30日に開催し、事故の詳しい状況を説明した。施工管理データから切り羽(掘削面)に作用する土圧が急降下した直後にシールド機がねじれながら持ち上がる異常な挙動があったことが分かった。シールド機自体に問題が生じた可能性も視野に調査を続ける。

 

 

シールド機内部の出水直後の状況。いずれも切り羽方向を撮影(出所:広島市)

シールド機内部の出水直後の状況。いずれも切り羽方向を撮影(出所:広島市)

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 陥没事故の発生は24年9月26日。清水建設・日本国土開発・広成建設の共同企業体(JV)が市の下水道局から受注したシールド工事で、午前8時45分にシールド機の前面から泥水が流入した。

 その3分後に、地上で運送会社の事務所が傾き始めた。施工者が地下水位を安定させるため午前9時36分に発進たて坑から注水を開始。正午ごろにはトンネルの天端まで水が満たされた。泥土圧シールド工法を採用し、砂れき層の掘削を進めていたところだった。

 

 

 

 

 

シールド工事で通常生じ得ない泥水流入、広島市が陥没の原因究明へ

 

 

 

 

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2024/10/24

 

 

 

 

 

 事故調査委員会の初回会合では、JVがシールド工事中に取得し続けていた施工管理データや追加の地質調査の結果、シールド機の点検状況といった資料を示した。それによると、排土量や切り羽土圧、掘進速度などは工事開始から事故直前までおおむね管理値以内に収まっており、異常値は出ていない。

 

切り羽土圧の急落から約2分で電源喪失

 

 

シールド機の概要(出所:広島市)

シールド機の概要(出所:広島市)

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 施工管理のデータに異変が生じるのは8時45分35秒のことだ。切り羽土圧が0.4メガパスカル(MPa)から0.1MPaほどに急落。ほぼ同じタイミングで、シールド機の仰角・伏角を示す「ピッチング」が0.1%ほど上昇した。シールド機の前方が持ち上がったと見られる。

 

 

 その30秒後から、土砂をトンネル外に排出するスクリューコンベヤーに設置した礫(れき)取り箱における土圧の計測値が上下しており、スクリューコンベヤー内の土砂の流れに変化が生じたもようだ