杭未達」で商業施設が14cm沈下、建て主は大和ハウス工業に賠償請求など検討
木下 順平
日経クロステック/日経アーキテクチュア
大和ハウス工業が設計・施工して2023年5月に開業した静岡県掛川市内の商業施設が最大14cm沈下し、24年11月7日から施設の使用停止を余儀なくされている。同社の調査では、これまでに5本の基礎杭が支持地盤に到達していないことが明らかになった。今後の調査でさらに増える恐れがある。建て主のフジ都市開発(静岡市)は調査後の建物解体や建て替え、大和ハウス工業への賠償請求を検討している。
杭の未達が判明した「ミソラタウン掛川」のA棟。
入居していたテナント3者は休業・閉店を
余儀なくされた
(写真:日経クロステック)
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施工不良が判明したのは
「ミソラタウン掛川」のA棟だ。
フジ都市開発が総事業費約30億円を投じ、
23年5月に開業した。
ミソラタウン掛川はA~Dの4棟から成り、
総延べ面積は約8950m2。
このうちA棟は鉄骨造の2階建てで、
延べ面積約5540m2を占める。
A棟の基礎杭は7~12mで計72本ある。
大和ハウス工業は24年11月までに9本を調査。
このうち、
建物南東側の5本が支持層に2~8m到達していないことが判明した。
未達だった杭の地表部では、
建物が最大14cm沈下している。
同社は、
未達が判明した杭の周囲にある5本も支持層に到達していない恐れがあると見ている。
異常がなかったB~D棟では通常通り営業を続けるが、
A棟に入居していたスーパーや
ドラッグストアなどの
テナント3者は休業・
閉店を余儀なくされた。
フジ都市開発とテナントとして入居する遠鉄ストア(浜松市)は、
大和ハウス工業に対する損害賠償請求を検討している。
杭の未達により、A棟の南東側では最大14cmの沈下が発生した(出所:大和ハウス工業)
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大和ハウス工業が調査した9本の杭のうち、建物南東側の5本が支持層に到達していなかった。同社は、これらの杭の周囲にある5本も同様に未達の恐れがあると見ている(出所:大和ハウス工業)
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施工不良が判明した経緯は以下の通りだ。
大和ハウス工業が開業から1年後の24年5月に建物検査をした際、
A棟南側の搬入口付近の外構が沈んでいるのを確認した。
その調査過程で同年6月、
建物の庇(ひさし)が傾いているのを見つけた。
これを受けて調査範囲を建物にも広げたところ、
レベル測定やボーリング調査によって基礎杭の未達が判明した。
外構の沈下と杭の未達との因果関係は判明していないという。
同社は杭の調査を25年1月ごろまでに終える予定。
記者会見や報道発表などは未定としている