独自の世界戦略「KANDOトレードオン」とは?

トリドールが「うどん以外」の業態でも海外で人気店を作れる理由

 

 

 

4月に上海にオープンした「ラー麺ずんどう屋(寸屋拉面)

 

 

ワイキキ店のオープンから13年。この間に蓄積された実績や知見を元に、だんだんと海外展開の勝ち筋が見えてきました。現在はそれを戦略化した「KANDOトレードオン戦略」に従って、トリドールらしい海外進出を進めています。トリドールが追求する食の感動体験をグローバルで共有するために、あえて「感動」ではなく「KANDO」と表記しました。

「トレードオン」とは、何かを得ると別の何かを失う「トレードオフ」ではなく、相反するものをどちらも手に入れるという意味です。これまでに出てきた表現でいえば「二律両立」。この考え方が戦略の骨格になっています。

手間暇をかけ細部まで考え抜いた業態(Craft)を、スピーディーに効率よく展開する(System)。そこでしか味わえない体験(Only)を、世界中で享受できるようにしていく(Anywhere)。こうした相反する活動を両立し、拡大する推進力が唯一無二のトリドールの強みを生み出します。この一見不可能なことを可能にする鍵となるのが、ローカルバディなのです。
 

CraftとSystem、OnlyとAnywhereという2つの軸の中心にあるのは、トリドールで働くすべての人である「KANDOクリエイター」です。このKANDOクリエイターを起点として、食の感動体験や感動体験ができる飲食ブランド群「ダイバースブランド」が創出されます。

KANDOクリエイターの役割は、丸亀製麺で培った「感動体験から繁盛店を創造する」というノウハウを用いてダイバースブランドを「創造」し「進化」させることです。国内では長田本庄軒や肉のヤマ牛、天ぷらまきのといった新しい業態を創り、海外では既存の業態を進化させています。

たとえば、先述のボートヌードルでは、より世界で通用する人気ブランドにするためにKANDOクリエイターが考案した「ヌードルステーションを前面に移動する」という施策を実施したところ、売り上げが約150%に伸びたこともあります。KANDOクリエイターが世界展開を経験することで、より高いレベルで戦略が実行できるようになると考えています。

さらに、多様なブランド群、ローカルバディ、トリドールの本社機能が世界各地でネットワークとして機能すると、予測不能な進化が起こります。多数のブランドが多数の国・地域で同時多発的に広がり、特定の地域・業態での成功体験やアイデアが、地域・業態の垣根を超えて、還元されていくからです。これを、ノーボーダーネットワークと呼んでいます。

トリドールの持つ業態とローカルバディ、それぞれの国や地域が縦横無尽に駆け合わさることでシナジーが大きくなっていきます。一つの例が、日本で展開するトリドールの業態のうち、丸亀製麺以外の業態も海外進出が進んでいることです。天ぷらまきのはすでにシンガポールや香港など海外に8店舗を展開しており、他にも2023年から2024年にかけて海外進出する業態がいくつもあります。
 

自家製麺が自慢のぼっかけ焼きそば専門店・長田本庄軒は、2023年11月に台湾・台北市の大型ショッピングモールに出店。私もグランドオープンセレモニーに出席するため、台湾に足を運びました。日本式の焼きそばの文化はない台湾でゼロからのチャレンジとなりましたが、オープン初日から大繁盛で一安心しています。

2017年に子会社化した背脂系濃厚とんこつラーメンの「ラー麺ずんどう屋」は、2024年4月、中国の上海に1号店をオープンし、今後いくつかの国へ展開も計画しています。

ラーメンという業態は日本食の中でも人気が高く、世界各地に店があります。競争が激しい業態だと言えるでしょう。しかし、その地域を知り尽くしたローカルバディの目を通して「ずんどう屋なら勝てる」と言わしめたのです。M&Aの時から可能性のある業態だと感じていましたが、その底力が証明されました。

その他、肉のヤマ牛も2024年4月に香港に進出し、今後他の地域にも進出予定です

 

 

トリドールが「うどん以外」の業態でも海外で人気店を作れる理由 | クーリエ・ジャポン