材料噴射型3Dプリンターで鉄筋入りの柱を印刷、清水建設が建設工事に初導入
坂本 曜平日経クロステック

鉄筋入りの柱を印刷している様子。約3時間で高さ2.2mの柱を印刷した(写真:日経クロステック)
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事前に組み上げた鉄筋の周りをノズルが動き回り、材料を吹き付ける。噴射した材料は丸みを帯びた直方体の形状を維持しながら積み重なり、鉄筋入りの柱が出来上がった――。2024年10月25日、堺市にある建設現場で全国初となる、建設3Dプリンターを活用した鉄筋入りの構造部材の“印刷”が実現した。
現場は南海電気鉄道南海本線の石津川駅近くに立つ、日本製鉄(東京・千代田)の瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)だ。製鉄所の敷地内では、清水建設が製鉄設備建設工事を進めている。清水建設は3Dプリンターを活用して、コンクリートスラブを支える断面55cm×30cm、高さ2.2mの鉄筋入りの柱2本を印刷した。
鉄筋に材料を吹き付けて柱を構築している様子(動画:日経クロステック)
建設業界では近年、プリンター先端部のノズルから真下に吐出した材料を幾重にも積んで造形物を印刷する「材料押し出し型」のプリンターを活用して、コンクリート構造物の型枠などを印刷するケースが増えている。一方、清水建設が現場に導入したのは、「材料噴射型」のプリンターだ。鉄筋入りの構造物を直接印刷できるため、型枠製作やコンクリート打設作業を省略できるのが特徴だ。
材料押し出し型の建設3Dプリンターの例 。ノズルから吐出した材料を幾層にも積み上げて、構造物を印刷する(写真:清水建設)
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清水建設技術研究所の小倉大季主任研究員は、「材料噴射型は押し出し型と比べて、ノズルの角度や噴射距離、材料を噴射するための空気量といったパラメーター設定が複雑になる。計画通りに印刷できるかなどをシミュレーションで確認して工事に臨んだ」と話す。
印刷には、清水建設が独自開発した3Dプリンティング専用の繊維補強モルタルを用いた。セメントや砂、混和材の他、合成繊維や高性能減水剤などを混ぜたもので、印刷物の強度や耐久性を向上できる。小倉主任研究員は、「印刷した鉄筋入りの柱の強度は70N/mm2と一般的な鉄筋コンクリートの倍以上の強度を持つ」と話す
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