既存住宅「省エネ部位ラベル」の運用開始、販売・賃貸事業者に表示の努力義務
星野 拓美
日経クロステック/日経アーキテクチュア
2024年11月1日、既存住宅の省エネ性能を表示する「省エネ部位ラベル」の運用が始まる。エネルギー消費性能を星の数で表したり、断熱性能を7段階評価で示したりする「省エネ性能ラベル」の作成が困難な既存住宅についても、定められたラベルを使って表示する必要がある。ラベルの発行対象や作成方法などを徹底解説する。
24年4月に改正建築物省エネ法に基づく「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が施行された。建築物の販売・賃貸において、省エネ性能を表示することが販売・賃貸事業者の努力義務となっている。
省エネ部位ラベルの表示例。窓と給湯器について表示する必須項目と外壁や玄関ドア、節湯水栓などについて表示する任意項目から成る(出所:国土交通省)
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省エネ部位ラベルは不動産広告や住宅ポータルサイトに表示される。ラベルの運用開始に先立ち、不動産情報サイトを運営するリクルートとアットホーム(東京・大田)、LIFULLの3社と国土交通省は24年10月28日、記者説明会を開いた。
国交省住宅局参事官(建築企画担当)付の井波まどか課長補佐は、「ラベル表示によって、消費者が省エネ性能に比重を置いて住宅を選ぶような市場をつくりたい」と述べた。
省エネ部位ラベルの運用開始に先立って開かれた記者説明会。写真の右が国土交通省住宅局参事官(建築企画担当)付の井波まどか課長補佐(写真:日経クロステック)
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対象となる建築物は?
省エネ部位ラベルの対象となる建築物は、24年3月31日以前に確認申請をした戸建て住宅や賃貸住宅、マンション、買い取り再販住宅など。窓と給湯器のいずれか1つ以上が表示の要件を満たしているが、住宅全体の省エネ性能を把握するのは困難な場合だ。
24年4月1日以降に確認申請をした住宅は、省エネ性能ラベルの対象となるため、省エネ部位ラベルの対象外となる。この他、販売・賃貸用途ではない住宅、窓と給湯器のいずれも表示要件を満たしていない場合も対象外となる。
24年3月31日以前に確認申請をした住宅が対象。24年4月1日以降に確認申請をした新築建築物については省エネ性能ラベルを表示する(出所:国土交通省)
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省エネ部位ラベルの窓の要件は、リビング・ダイニングの全ての窓について、サッシがアルミ製、アルミ樹脂製、樹脂製、木製のいずれか、ガラスが2重複層、3重複層、真空のいずれかに該当すること。給湯器の要件は、エコジョーズ、エコフィール、エネファーム、電気ヒートポンプ給湯器、ハイブリッド給湯器のいずれかに該当することである。
省エネ部位ラベルでは窓と給湯器に関する表示が必須。窓と給湯器のいずれも表示の要件を満たしていない場合はラベルの対象外(出所:国土交通省)
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国交省は、既存住宅であっても既存の設計図面などから省エネ性能を比較的容易に把握できる場合、省エネ部位ラベルではなく省エネ性能ラベルを表示することを推奨している。また、過去に省エネ部位ラベルを取得した既存住宅を大規模リノベーションして省エネ性能を把握した場合も、省エネ性能ラベルの発行を推奨している。
優良誤認などの不当表示や消費者の混乱を防止するため、故障して動かない設備を表示したり、省エネ部位ラベルと省エネ性能ラベルの両方を表示したりすることはできない。
過去に省エネ部位ラベルを取得した既存住宅を改修して再販売・再賃貸するケース。大規模なリノベーションをして省エネ性能を把握した場合、国交省は省エネ性能ラベルの発行を推奨している(出所:国土交通省