南麻布に天井高3mの9階建て賃貸マンション、凹凸生かして全15戸異なるプラン

中東 壮史

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

2024年11月の竣工を目前に控えた同年10月26日、伊藤博之建築設計事務所(東京・新宿)が設計・監理を手掛けた地上9階建ての賃貸マンション「hanaqumoi(花雲居)」の内覧会が開かれた。東京メトロ南北線麻布十番駅から徒歩15分ほどの場所に位置し、南麻布にある住宅街の一角に立つ。直方体の四隅を斜めに切り欠いて大開口を設けた。建物には凹凸があり、たくさんの窓が目に付く。

2024年11月にも竣工を予定している東京・南麻布の賃貸マンション「hanaqumoi(花雲居)」(写真:日経クロステック)

2024年11月にも竣工を予定している東京・南麻布の賃貸マンション「hanaqumoi(花雲居)」(写真:日経クロステック)

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中央の白く背の高い建物がhanaqumoi。よくある直方体の建物が立ち並ぶ中、四隅を斜めに切り欠いて大きな開口を設けたマンションは存在感がある(写真:日経クロステック)

中央の白く背の高い建物がhanaqumoi。よくある直方体の建物が立ち並ぶ中、四隅を斜めに切り欠いて大きな開口を設けたマンションは存在感がある(写真:日経クロステック)

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 敷地面積は約360m2で、延べ面積は約1310m2。構造は鉄筋コンクリートの純ラーメン構造。1階にはテナント、2~9階には15戸の賃貸住戸が入る。施工は青木工務店(東京・目黒)が担当した。発注者は土地を所有する個人のオーナーだ。

 特徴的な建物のボリュームについて、伊藤博之建築設計事務所主宰の伊藤博之氏は、「ワンルームの賃貸住戸が多い南麻布に開放感があるマンションをつくりたいというのが発注者の希望だった。そこで全住戸の天井高を3m確保すると決め、天空率を適用して容積率いっぱいのボリュームを検討した」と説明する。用途地域は準工業地域で、絶対高さの制限は35mだ。

 住戸の平面プランなども加味し、最終的には約13m角の平面をした直方体から四隅を切り欠いたボリュームとした。その中に天井高が3mある15戸を収めた。

今回の敷地に建てられるマンションのボリュームを検討するための模型。左下に見える単純な直方体からスタディーを始め、天空率を適用して最適なボリュームを探した(写真:日経クロステック)

今回の敷地に建てられるマンションのボリュームを検討するための模型。左下に見える単純な直方体からスタディーを始め、天空率を適用して最適なボリュームを探した(写真:日経クロステック)

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 隅切りしたボリュームに合わせて、梁(はり)は井桁状に組んだ。外周部の梁は逆梁にし、住戸の採光を確保している。柱は梁の交点からずらして千鳥状に配置し、平面プランの自由度を高めた。天井が高く対角線上に視線が抜けるため、実際の面積よりも広く感じられる。

左が完成イメージ、右が構造イメージ(写真:日経クロステック)

左が完成イメージ、右が構造イメージ(写真:日経クロステック)

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7階はワンフロアに1戸だけの配置にした。天井の仕上げは直天井で、井桁状に組んだ梁がそのまま見えている。柱を梁の交点からずらして配置したことで、対角線上に視線が抜ける(写真:日経クロステック)

7階はワンフロアに1戸だけの配置にした。天井の仕上げは直天井で、井桁状に組んだ梁がそのまま見えている。柱を梁の交点からずらして配置したことで、対角線上に視線が抜ける(写真:日経クロステック)

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 建物の外装材には、東邦レオ(大阪市)の外断熱工法「エコサーム」を採用した。断熱材と左官仕上げが一体になった工法だ。斜めに弧を描くようなこて跡を付けて、外壁面の陰影が太陽の動きにつれて変化するようにしている。

外装は左官仕上げ。斜めに弧を描くようなこて跡を付けた(写真:日経クロステック)

外装は左官仕上げ。斜めに弧を描くようなこて跡を付けた(写真:日経クロステック)

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 この敷地にはもともと、戸建て住宅が立っていた。オーナーである発注者が相続し、土地活用としてマンションへの建て替えを検討していた。22年5月ごろにコンサルティングなどを手掛けるサーチアンドスペックス(東京・品川)から伊藤氏を紹介され、設計を依頼した。伊藤氏はマンションの建築設計に定評がある。

 

 

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曲線連なる馬蹄形マンション

 入り口の細い通路を抜けると、高さ約30mの曲面壁に囲まれた中庭に出る。中庭の上にはブリッジや植栽、バルコニーが立体的に配置されている。ビル密集地に立つ迷宮のような集合住宅で、採光や通風を確保した。

2023/10/26