東急不動産が渋谷の築古なマンションやホテルをオフィスに改修、「再生建築」を初適用
中東 壮史
日経クロステック/日経アーキテクチュア
東急不動産が渋谷の築古なマンションやホテルをオフィスに改修、「再生建築」を初適用 | 日経クロステック(xTECH)
東急不動産は本拠地である東京・渋谷を中心に、延べ⾯積が300~1000坪で基準階面積が30~100坪ほどの小規模ビルを開発する「COERU(コエル)シリーズ」に力を入れる。2024年度中には5棟のビルが竣工する予定だ。このうち「COERU渋谷道玄坂」と「COERU渋谷イースト」の2棟は、同社が初めて「再生建築」の手法を用いて改修したビルである。24年10月16日、東急不動産はこの2棟をメディアに公開した。
中央の弧を描く建物が「COERU渋谷道玄坂」。東京・渋谷の道玄坂とランブリングストリートなどが交差する五差路の交差点に面して立つ(写真:日経クロステック)
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中央に立つガラス張りの建物が「COERU渋谷イースト」(写真:日経クロステック)
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再生建築とは、建築設計事務所の再生建築研究所(東京・渋谷)が提唱する、老朽化したビルに対するソリューションを指す。既存ビルの状況に応じて耐震性の向上や設備の更新、用途変更などを検討し、環境配慮の取り組みをデザインに盛り込んで不動産価値を高める。東急不動産は22年に再生建築研究所と業務協定を結び、水面下で改修を進めてきた。
COERU渋谷道玄坂とCOERU渋谷イーストはどちらも、再生建築の手法で空調や照明などの設備機器を更新した。内外観も明るく開放的なデザインに刷新。オフィスフロアは内装家具付きのセットアップを基本にすることで、入居者の初期費用を抑える。
COERU渋谷道玄坂の外観イメージ。左が工事前で、右は工事後。開口部を大きくし、オフィスフロアの開放性を高めた(出所:東急不動産)
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左が工事前、右は工事後のCOERU渋谷イーストの外観イメージ。既存のバルコニーや外壁を撤去し、ガラスのファサードに変更(出所:東急不動産)
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賃料が高い都心部で、オフィス環境を新築と同等レベルに再整備したビルへリーズナブルに入居できる。人気の渋谷エリアはオフィスニーズが大きい。東急不動産都市事業ユニット開発企画本部開発第二部事業企画グループの萩原孝亮氏は、「COERU渋谷イーストの賃料は坪単価が3万円台後半。吹き抜けを設けた5階のオフィスだけ4万円台。内装家具付きなので少し高めに設定しているが、条件によっては敷金をなくしている。新築に比べれば近隣相場よりも安く抑えた」と語る。
東急不動産都市事業ユニット開発企画本部開発第二部事業企画グループの萩原孝亮氏(写真:日経クロステック)
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COERU渋谷イーストは地上6階建てで、延べ面積は約700m2。1階が店舗で、2~5階は内装家具付きオフィス。6階には入居者向けの共用ルーフバルコニーを設けた。設計は再生建築研究所で、施工はエフビーエス(東京・中央)が担当している。24年10月28日に竣工した。
もともとこのビルは1972年に竣工した共同住宅だ。2017年にスタートアップ向けオフィスにリニューアルされ、それを23年に東急不動産が取得した。
同社はこのビルを新耐震基準など現行法規に適合させながら、都市計画や用途地域の変更に伴って緩和された容積率を活用して前面道路側に増築。オフィスフロアの面積を増やして不動産価値を高めた。既存ビルを解体して新築する場合に比べて、二酸化炭素(CO2)排出量を66%削減。廃材量も89%削減した。
2階のオフィス内観。中央の柱より左側が増築部分(写真:日経クロステック)
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オフィスフロアに設けた会議室。共用部から直接アクセスできる(写真:日経クロステック)
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他にも、東急不動産が長野県茅野市に所有する管理森林の間伐材で家具を作ったり、既存ビルの解体時に出たコンクリート構造物の解体材(コンクリート解体ガラ)を植栽の囲いなどに再利用したりしている。
オフィスフロアに設けたフォンブースには、東急不動産の管理森林の間伐材を使った机を用意した(写真:日経クロステック)
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6階に新設した入居者向けのルーフバルコニー。コンクリート解体ガラを使って植栽を設ける予定(写真:日経クロステック