フレンズ」M・ペリーさん死亡で有罪認める、医師が薬物不正提供で

ロイター

 1990年代の米人気コメディー「フレンズ」でチャンドラー役を演じた俳優マシュー・ペリーさん(写真)が薬物過剰摂取で死亡した事件で、鎮静剤「ケタミン」の不正提供に関与した罪で起訴された医師1人が2日、有罪を認めた。ビバリーヒルズで2017年3月撮影(2024年 ロイター/Mario Anzuoni)

 

 

 

 

Lisa Richwine [ロサンゼルス 2日 ロイター] - 

 

1990年代の米人気コメディー「フレンズ」でチャンドラー役を演じた俳優マシュー・ペリーさんが薬物過剰摂取で死亡した事件で、鎮静剤「ケタミン」の不正提供に関与した罪で起訴された医師1人が2日、有罪を認めた。 ペリーさんは昨年10月28日、ロサンゼルスの自宅にあるジャグジーで死亡しているのが発見され、死因はケタミンの急性作用と判明した。その後、薬物の不正販売などに関与したなどとして、医師2人を含む5人が起訴された。 2日にロサンゼルスの連邦地方裁判所で有罪を認めたのはマーク・チャベス被告で、他の患者の処方箋で不正にケタミンを入手したことなどを認めた。最高で10年の禁錮刑を受ける可能性がある。 一方、起訴されたもう1人の医師や薬物を供給したとされる被告は無罪を主張している

 

 

「フレンズ」M・ペリーさん死亡で有罪認める、医師が薬物不正提供で(ロイター) 

 

 

 

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ケタミン:確立されているが過小評価されることの多い薬物

 

ケタミン:確立されているが過小評価されることの多い薬物 - Anesthesia Patient Safety Foundation (apsf.org)

基礎科学

ケタミンのもつNMDA受容体に対する拮抗作用が、健忘、麻酔、解離作用の主たる原因であると考えられている。4 NMDA受容体遮断は、げっ歯類において記憶形成を遮断することが示されている。5 さらに、脊髄NMDA受容体は痛みの中枢性感作に密接に関係しているため、繰り返されるNMDA受容体活性化により痛覚過敏を引き起こす可能性がある。NO合成酵素、GABA、およびアセチルコリンに対する作用も、ケタミンで見られる独特かつ複雑な作用や副作用に寄与している可能性がある。6

ケタミンの代謝は主に肝臓でなされ、ケタミンはノルケタミンに代謝される。ノルケタミンは強力な麻酔特性も持つ活性代謝産物である。ノルケタミンの作用に加えて、ケタミンの親油性が、その標準的な導入量である1-2 mg/kgの経静脈的投与後の10〜15分という長い分布半減期の原因である可能性がある。他の麻酔導入に使用する薬剤とは異なり、ケタミンを大量に投与された患者は、眼振、瞳孔散大を起こし、薬剤投与量が全身麻酔レベルに達しても閉眼できない状態が見られることがある。表1はケタミンの一般的な利点と副作用をまとめたものである。

表 1.ケタミンの潜在的な利点と副作用

利点
呼吸ドライブの維持
最小限の心血管抑制
周術期オピオイド誘発痛覚過敏の減衰
急性/慢性疼痛症候群の補助的治療
抗自殺および抗うつ特性
副作用
気道分泌物の増加、気道反射減衰は最小
心拍数、血圧、SVRの上昇、重度CADのある患者における心筋虚血
幻覚、混乱、鮮明な夢、せん妄
肝機能障害患者における作用時間の延長
複視、目のかすみ

SVR;全身血管抵抗、CAD;冠動脈疾患

ケタミンに関連する生理学的および向精神作用は、初の人体での研究以来よく触れられている(表1)。血圧、心拍数、心収縮力、および全身の血管抵抗の上昇から、ケタミンの交感神経刺激作用がまず示された。2 ここで観察された交感神経緊張の増加は、ケタミンによって副腎カテコラミン放出が引き起こされることによる二次性のものであることが現在知られている。興味深いことに、ケタミン自体には直接的な陰性変力作用があるが、ここで示した交感神経性サージによって目立たなくなっている。高交感神経緊張のある患者(例として外傷患者)をケタミンで麻酔導入する場合は、すでにストレス下にある副腎から放出されているカテコラミンの作用をケタミンの心筋抑制作用が上回る可能性があるため、注意を要する。重度の冠動脈疾患の患者へのケタミン投与に関しても、心筋の酸素需要がケタミン投与による酸素供給の増加に比して不釣り合いに大きいため、慎重を期すべきである。

静脈内ケタミンの2用量、50mg/mlおよび10mg/ml。出典:Wikipedia. https://creativecommons.org/share-your-work/licensing-considerations/compatible-licenses

静脈内ケタミンの2用量、50mg/mlおよび10mg/ml。出典:Wikipedia. https://creativecommons.org/share-your-work/licensing-considerations/compatible-licenses

ケタミンは、呼吸様式への影響が最小限である数少ない静脈麻酔薬の1つである。さらに、その気管支拡張作用は喘息患者に特に有益である可能性がある。7 大規模な無作為化対照試験がほとんどなく、投与レジメンが定まっていないため、気管支拡張に関して最適な用量は定まっていない。気道分泌物の増加などの呼吸器への悪影響は、唾液分泌抑制薬を使用することで軽減できる。

ケタミン用量を増加していくと、ガンマバーストパターン(スローデルタ振動によって遮断されたガンマ振動)を生じ、その後に安定したベータ/ガンマパターンが発生するという、特徴的な脳波(Electroencephalogram, EEG)パターンが見られる。8 このEEGの変化は、ケタミンによって誘発される無意識状態への移行に続いて起こる。このようにケタミン使用下では平坦脳波が認められないため、麻酔深度をEEGパターンに合わせて調整することは推奨されない。

以前の報告では、ケタミンが頭蓋内圧(Intracranial Pressure, ICP)を増加させるとしている。9,10 脳血流(Cerebral Blood Flow, CBF)と脳の酸素消費量の増加がこのICP増加につながったと仮定された。そのために古典的な考え方では、神経学的処置においてケタミンの使用は避けられていた。しかしながら、これらの研究にはケタミンによる麻酔導入後 、患者に自発呼吸をさせている例も含んでいるものがあり、高二酸化炭素血症に伴う血管拡張によるICP上昇を見ている可能性がある。11 この定説にも数々の疑義が示されてきている。現在の研究では、人工呼吸器を装着した患者で他の鎮静薬と併用すると、ICPが増加しないことが示唆されている。12–14 ICPに対する麻酔量以下の投与量でのケタミンの効果に関するデータはないが、そのような鎮静用量を下回るような少量の投与量の場合、ICPへの影響は最小限となるのではないだろうか。

臨床麻酔における現在の使用

ケタミンが1970年に米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration; FDA)によって承認された後、初めて広く使用されたのはベトナム戦争において戦場での麻酔薬としてであった。3 1985年に世界保健機関はケタミンを「必須医薬品」に分類し、現在では世界で最も一般的に使用されている麻酔薬であると考えられている。15

集中治療室や救急治療室などの急性期医療現場では、ケタミンによる処置時の鎮静がずっと安全に使用されてきた。16 「オピオイドの蔓延 」の発生に伴い、術中の使用が再び注目されている。ケタミンは麻酔量以下の投与量を投与すると、オピオイドへの耐性形成を減少させ、手術後のオピオイド誘発痛覚過敏を減少させる可能性がある。17 脊椎手術を受ける慢性疼痛のある患者にケタミンを投与すると、術後のさまざまな時点で疼痛スコアが低下し、オピオイドの使用量が減少することが示されている。18 オピオイドを投与されたことがない患者においても、痛みを伴う手術処置を受ける場合にケタミンは術後鎮痛に有益である可能性がある。19 表2は、ケタミンの一般的に使用される投与量をまとめたものである