大林組は万博施設に「ホタテ貝殻」入りシーリング材を採用、セメダインと開発
奥山 晃平
日経クロステック/日経アーキテクチュア
大林組は万博施設に「ホタテ貝殻」入りシーリング材を採用、セメダインと開発 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
大林組とセメダイン(東京・品川)は、炭酸カルシウムを主成分とするホタテの貝殻を配合するシーリング材「スキャロップシール」を開発した。難燃性で分解されにくく、焼却処分が難しいホタテ貝殻を再利用し、廃棄物を削減する。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)で大林組が施工を手掛ける展示施設「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」(以下、ウーマンズ パビリオン)で適用した。
大林組とセメダインが開発したシーリング材「スキャロップシール」を缶に充填している様子(写真:セメダイン)
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大阪・関西万博の会場に建てられる展示施設「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」(出所:Cartier)
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大林組とセメダインは、既存の2成分形の変成シリコーン系シーリング材を基に、スキャロップシールを開発した。従来のシーリング材で使っていた炭酸カルシウムの原料は石灰石だ。スキャロップシールでは、炭酸カルシウムの約30%を、粉砕したホタテ貝殻で代替する。
数多くある貝殻の中から、なぜホタテを選んだのか。主な理由は3つ。1つ目は、貝殻を粉砕した後の粒径だ。ホタテの貝殻はカキやアワビと比べて小さい粒径に粉砕できる。塗料やシーリング材に用いるには、粒径の小さい方が適している。
2つ目は、貝殻に入っている成分。例えばカキ貝殻は、主成分が炭酸カルシウムであるものの、アルミニウムやケイ素なども含まれている。ホタテ貝殻には炭酸カルシウム以外の成分がほとんど入っていない。
3つ目は、炭酸カルシウムの結晶構造の種類だ。ホタテ貝殻は、複数種類ある結晶構造の中で、化学的に安定している「カルサイト」の占める割合が大きい。
「ホタテは生産量が多く、貝殻を安定して調達できるメリットもある」と、大林組技術本部技術研究所生産技術研究部の奥田章子課長は説明する。
スキャロップシールの製造過程(出所:大林組