隈研吾氏デザインのホテル「バンヤンツリー・東山 京都」開業、竹林との境に能舞台
川又 英紀
日経クロステック
京都市にまた1つ、外資系の超高級ホテルが誕生した。ウェルス・マネジメントグループがシンガポールのバンヤン・グループと組んで開発したホテル「バンヤンツリー・東山 京都」が2024年8月20日に開業した。場所は京都を代表する観光名所である清水寺と高台寺のほぼ中間に位置する、東山の山麓だ。天然温泉と能舞台を有する、これまで市内のどこにもなかったホテルである。
ホテル「バンヤンツリー・東山 京都」を上空から見た様子。背後に深い森が広がる(写真:バンヤン・グループ)
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ホテルの正門。急な坂道を上った場所にある(写真:日経クロステック)
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ホテルの位置図。清水寺と高台寺の中間、京都市東山区の高台にある。以前「ホテルりょうぜん」があった場所だ。東山の霊山エリアは古来、京都の街と山の境目で、自然と人工物、現世と来世を隔てる結界のような場所とされてきた。近隣には今も数多くの神社仏閣や墓地がある(出所:ウェルス・マネジメント、ワールド・ブランズ・コレクション ホテルズ&リゾーツ)
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車寄せから見たホテル(写真:日経クロステック)
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ホテルのシンボルとなる正面玄関から延びる大ひさし(写真:日経クロステック)
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軒先にルーバーのような木材を使った(写真:日経クロステック)
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清水寺と同様、ホテルにアクセスするには急な坂道を上る必要がある。その分、見晴らしは抜群だ。市街地を一望できるロケーションが自慢である。そして背後には霊山エリアの斜面林が広がる。
ここは19年まで「ホテルりょうぜん」があった場所で、市内では珍しい天然温泉の源泉がある。ウェルス・マネジメントグループが敷地を取得し、バンヤン・グループの旗艦ホテルブランドであるバンヤンツリーを日本に初めて誘致した。
両社は日本の「旅館と温泉」という固有の文化を国際ブランドの高級ホテルに持ち込み、次代に継承していくことにした。日本の伝統的な建築様式や雰囲気を取り込んだホテルを開発するに当たり、
両社はデザインアーキテクトに
隈研吾建築都市設計事務所(東京・港)の隈研吾氏を起用した。
「デザインアーキテクト」として建築デザインを監修した隈研吾氏(写真:日経クロステック)
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開業日の式典であいさつした隈氏は、「豊かな森がある東山の敷地の屋外に、屋根も壁もない能舞台を設置した。山や空と一体化した建築物をホテルの象徴に据えた」と説明する。木ルーバー状の柱や垂木で能舞台を覆い、背後の竹林や頭上の空が抜けて見えるようにした。隈氏の独創的な能舞台である。
荒れ果てていた竹林を再整備し、そのすぐ手前に市内のホテルでは唯一の能舞台(Noh Stage)を設置した。建物には屋根や壁がなく、能舞台が背後の竹林や空と一体になるように設計している(写真:日経クロステック)
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能舞台が水盤の上に立つのは珍しい。山中の水面に能舞台が浮いているような幻想的な雰囲気を醸し出している。写真左手は能舞台の一部である「橋掛かり」(写真:日経クロステック)
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この地は霊山の名の通り、古来、自然と街、あの世とこの世の境界に当たる場所とされてきた。「能の物語には幽霊が登場することが多く、この場所にふさわしい」と隈氏は話す。霊山エリアには、今も神社仏閣やお墓が密集している。
オープニング式典では能舞台で雅楽が披露された。背後に竹林が見える(写真:日経クロステック)
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ホテルの敷地は斜面地で約12mの高低差がある。屋外にある能舞台は敷地の3階レベルに位置する(写真:日経クロステック)
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能舞台を間近に望む客室も用意した(写真:日経クロステック)
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能舞台を眺めながら食事ができるダイニング。宿泊者の目線が市街地側ではなく、山側を向くようにした典型的な場所と言える(写真:日経クロステック)
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敷地面積は約5850m2、延べ面積は約7100m2。階数は地下1階・地上4階建てで、客室数は52室。宿泊料金は、広さが48m2の客室で1泊約20万円から。インバウンド(訪日外国人)の富裕層を意識したホテル価格だ。
設計は
東洋設計事務所(京都市)と
入江三宅設計事務所(東京・港)、
施工は
清水建設。
インテリアデザインは
DWP International、
客室デザインは
橋本夕紀夫デザインスタジオ(東京・渋谷)、
ランドスケープデザインは
プレイスメディア(東京都小平市)
がそれぞれ手掛けた。
プロジェクトマネジメントは
山下PMC(東京・中央)だ。
ホテルの運営は
ウェルス・マネジメントグループの子会社
ワールド・ブランズ・コレクション ホテルズ&リゾーツ(京都市)
が担当する
隈研吾氏デザインのホテル「バンヤンツリー・東山 京都」開業、竹林との境に能舞台 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)