ドンキの電動アシストクロスバイク、こだわり満載で「10万円」を実現できたワケ

ドン・キホーテがこの夏、店頭販売で力を入れている商品の1つが、情熱価格ブランドの「EVA PLUS CROSS」(エヴァ プラス クロス)だ。
見た目は普通のクロスバイクだが、実はフレームにバッテリーを内蔵した電動アシスト自転車。
価格は税別99,800円/税込109,780円と、
フレーム内蔵バッテリーの電動アシスト自転車としてはお手ごろな価格に収まっている。
【写真】EVA PLUS CROSSの前側。バッテリーはサドル下に備えたロック鍵と共通の鍵で取り外しできる
このEVA PLUS CROSS、ホームセンターや量販店を中心に低価格のタウンサイクルなどを販売しているサイモト自転車と共同開発した製品だ。
同社が製造する自転車はおおむね2万円~3万円台で、電動アシスト自転車でも7~8万円前後のものがメイン。同社にとっては約10万円の商品は、どちらかというと高価格帯にあたる。
一方、フレームインバッテリーのクロスバイクで10万円前後のものは少なく、
多くが10万円台半ばから、
国内の高級モデルでは30万円を超えるものもある。
ドン・キホーテとサイモト自転車が
約10万円の電動アシスト自転車、
EVA PLUS CROSSに詰め込んだこだわりについて、
ドン・キホーテで自転車関連商品を担当するPB企画開発 マーチャンダイザーの渡邊啓氏に話を聞いた。
――なぜ「クロスバイク型の電動アシスト自転車」を開発しようと思ったのでしょうか。
元々はE-BIKEというカテゴリー(実用車以外の電動アシスト自転車)が世界的に流行の兆しだというニュースを見て、
競合が多い(軽快車など)実用車の電動アシストを広げるよりも、
PPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)の若い購買層に受けそうなE-BIKEの開発を進めるべきでは、と考えたことが起点です。
社内の商品化会議では、一番の特長である「フレームインバッテリー」と、それでいながら10万円(税別)を切る価格を強くアピールしました。
そもそも情熱価格の電動アシスト自転車は、2020年11月に“ママチャリ”タイプの「EVA PLUS」から始まりまして、これが一定の評価を受けました。そこで2021年9月に折り畳みタイプの「EVA PLUS mini」を出したら、こちらも好評で。 続く製品では、競合他社が(この価格帯では)まだ発売していないクロスバイク(スポーツ)タイプを出そうと考えました。これはコロナ禍でクロスバイクの販売が伸び、PPIHでもスポーツタイプの自転車の需要があることがわかっていたのと、自転車の購買層はファミリー層より中高年の方が多かったので、スポーツタイプの需要があると踏んだためです
普通の電動アシスト自転車では話題性に欠けてしまう上、需要的にも頭打ちなのですが、スポーツ自転車は伸びしろがあり、その中でもスポーツ電動クロスバイクというカテゴリは一般的な量販店でもなかなかやっていないんですよね。当然、大手自転車メーカーさんはもちろん出していますが、価格が20万円を超えるものが一般的です。 電動アシストのクロスバイクで10万円を切る製品は他の量販店さんではなかったので、差別化を図る意味でも挑戦しました。実際にはクロスバイクタイプより先に、ユーザーの意見を投稿する「ダメ出しの殿堂」(現在はmajicaアプリ内「マジボイス」)の声をもとにしたEVA PLUSの改善版「EVA PLUS 2」が出ており(編注:2022年4月8日発表)、今回は満を持しての第4弾となります。
――10万円を切る価格を実現するために、盛り込みたかった機能と、省かなければいけなかった機能があると思うのですが、
まずどんな部分を盛り込みたかったのでしょうか。
一番の特徴はとにかく見た目です。中央のフレーム内にバッテリーが収まっている「フレームインパッテリー」で、非常に見た目がすっきりした形状になっています。
一般的な電動アシスト自転車は四角いバッテリーがサドルの下にあるなど、一見してすぐ“バッテリー”だということがわかる見た目ですが、
これは普通のスポーツ自転車と見た目がほぼ変わらない、
スマートなデザインに仕上げています。
サイモト自転車さんの努力のところですね。
サイモト自転車さんの最初の試作機は前輪にモーターを備えた前輪駆動式でした。
前輪駆動は引っ張られるような感覚で走れて、
登り坂に強い一方で、
ハンドルの取り回しは重くなります。
後輪駆動はハンドル操作がスムーズで、
後ろから押される感覚で走れますが、上り坂には弱い。
メリットとデメリットがそれぞれあります。
後輪が押してくれる感覚で走れるのがこだわりというか、EVA PLUS CROSSは街乗りが前提なので運転のしやすさを重視したことと、
2段式駐輪場で持ち上げた時にぶつける可能性があり、
そうすると
モーター部分が壊れてしまうので、
後輪駆動に変更した、
という経緯があります。
実はフレームは新設計していて、
金型を新たに起こしています。
フレーム素材はアルミで
できるだけ耐久性を持たせつつ
軽量化も図り、
重さを約19.8kgに抑えました
あと盛り込みたかったのはハンドル部のスイッチパネルですね。
低価格の電動アシスト自転車では画面なしで
操作ボタンのみの場合もありますが、
EVA PLUS CROSSでは液晶パネルにして、
バッテリー残量や走行距離がちゃんとデジタル表示されます。
あとは走行時に安定感を出すため27.5×1.95の太目のタイヤを載せたとか、
雨の日は水が背中まで跳ねるのでドロヨケを付けたとか、
細かいところはいろいろあります。
一般的なクロスバイクに
ドロヨケは付いてないですが、
これはやっぱり電動アシスト自転車なのであったほうがいいかと。
――価格のために泣く泣く省いた機能もあると思います。
入れられなかった機能はどんな部分でしょうか。
そこはいろいろありますが、
1つは内装ギアです。
大手メーカーさんが出している高級モデルでは内装ギアを採用していますが、
やっぱり内装ギアはコストが高いので、
今回は外装式の7段ギアを取り入れて
コストダウンを図っています。
内装ギアは
変速機構が車輪の内部にある構造で、
外からは見えません。
雨風に当たらないので錆びにくかったり、
止まっているときでも変速できたりすることがメリットですが、
結構高いんですよ。
あと盛り込みたかった部分はカゴです。
普段使いする自転車としてカゴが付いていると利便性が高いのですが、
付けられるカゴが少なかったのと、
価格が上がってしまうこと、
見た目的にカゴがあると若い方に「ダサい」と
思われる可能性があるため断念しました。
一般的なクロスバイクもカゴ付きはほとんどないですし、
あえて付けなくてもいいんじゃないかと。
取り寄せにはなりますが、
5,000円ほどで別売のカゴを用意しているので、
後付けが可能です。
バッテリーの容量も割り切りました。
一般的に24V×10Ah以上のものが多い
大手メーカーと比べると
比較的小さめなのですが、
価格の部分で36V×6.0Ahに抑えています。
それでもECOモードで走れば60kmは走行でき、
バッテリーは容量が大きくなるとコストもかかってくる部分なので
これ以上大容量にせず、
ほかのポイントや価格にこだわる方向で進めました。
サイモト自転車さんとしては、鍵の部分を割り切ったといいます。
本当は後輪直付けの輪っかタイプにしたかったけれど、
バッテリーの鍵と共通化する関係でコスト増につながるため、
サドルの軸に装着するワイヤー鍵に変更しました
また、ブレーキも本当はディスクブレーキを付けたかったのですが、結構コスト高いんですよ。ディスクブレーキは制動力が高く、ほとんど消耗しないのがいいところですが、今回はコスト的にメリットのあるVブレーキを採用しました。 Vブレーキも制動力は高いですが、タイヤと接触する部分が削れるので消耗品なんですよね。交換頻度はそう高くないですが、本当に毎日何十キロと乗っている人だと半年しないうちに交換したほうがいいと思います。ここは本当はいいブレーキ使いたかったんですけど……。価格と需要のバランスを取りました。
――10万円クラスの自転車だと何年も大事に乗り続けたい購入者は多いと思いますが、修理・保守点検の体制はどうなっているのか、教えてください。 まず1年保証が付いているので、1年以内かつ通常利用の範囲内での故障であれば無償修理が可能です。それ以降も有料ではありますが修理は承っています。対応は自転車整備士がいる店舗ならば店頭で修理し、自転車整備士がいない店舗では自転車をいったん預かって、製造元のサイモト自転車さんに修理をお願いしています。ちょっと日数はかかっちゃいますが、どちらにしてもアフターサポートには対応します。 ただ、自転車整備士がいる店舗は多くはないです。自転車を販売するドン・キホーテ自体がだいたい350店舗ですが、そのうち自転車整備士がいるのは30店舗くらい。1割に満たない少ない現状ではあって、ユーザーさんの多くはサイモト自転車さんの対応になるかと思います。ただ、部品は特別なものを使っているわけではないので、修理は“いつまで”という期限なく、お客様が乗り続ける限りずっと対応する予定です。
――ありがとうございました。
村田奏子
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